第2章: 第4部
それまでの会話が、ルチアーノにその疑問を抱かせたのだった。
それに、女性は異邦人への対応にもかなり慣れているようだった。
「もちろんよ!」
傷跡のある女性は、まるでごく当たり前のことを話すかのように、あっさりと答えた。
一方、ルチアーノは呆然としていた。
自分だけではないと分かり、心にのしかかっていた重荷が少し軽くなった。
記憶を失ったまま、この世界にいるのは自分だけではないのだ。
これまでの会話で答えは分かっていた。それでも、彼女の口から直接聞くのとでは、やはり違った。
自分だけじゃなくてよかった。
そう考えた直後、ルチアーノは少しだけ自分を恥じた。
本当は、誰にも自分と同じ目に遭ってほしくなどなかったのだから。
「異邦人って、たくさんいるんですか?」
「近くにもいるんですか?」
次々と質問が飛び出す。
ルチアーノは答えを必要としていた。
しかも、一刻も早く。
「えっと……」
女性は少し身を引き、ルチアーノとの距離を広げた。
自分が何をしたのか気づいたルチアーノは、慌てて姿勢を正した。だが、彼の反応を責めることはできないだろう。
自分だけではないと分かったら、誰だって興奮するはずだ。
「実際、異邦人はかなりいるわよ。それどころか、ちょうど昨日、新しい異邦人たちがやって来たばかりなの。あの人たちが全員だと思っていたのに、今度はあなたが見つかったってわけ」
女性は天井を見上げ、長いため息をついた。
「こんなことが起きたのは初めてよ。本来なら、全員が同じタイミングで現れて、一定の周期ごとに新しい一団がやって来るはずなのに……どうして今回はこんなことになったのかしら?」
女性の顔には、困惑がありありと浮かんでいた。
だが、今聞いた情報をいったん脇に置けば、ルチアーノは喜んでいた。
少し前、期待していた答えを得られずに落胆していたときと比べれば、少なくとも今は喜べることがあった。
「その人たちに会えますか?」
ルチアーノは興味津々に尋ねたが、表情にはほとんど変化がなかった。
傷跡のある女性は椅子から立ち上がった。
「おそらくね。あなたは仲間たちより一日遅れて現れたことになるけれど、同じ世代と言ってもいいでしょう?」
知らないよ。あなたが教えてくれ。
ルチアーノはそう答えたかった。
だが、口には出さず、心の中で思うだけにとどめた。
一方、ミカは答えるべきかどうか迷っているようだった。
「はい……おそらく、そうだと思います」
結局、そう答えた。
どうやら、彼女自身も同じ疑問を抱いていたらしい。
二人の女性は扉へと向かった。
部屋を出る直前、傷跡のある女性は足を止め、ルチアーノを振り返った。
「これで第一段階は終わりよ。次は着替えてもらわなくちゃね。そのあと、私の執務室で本題について話しましょう」
本題?
これが本題じゃなかったのか?
ルチアーノの好奇心は、ますます膨らんだ。
これで話は終わったのだと思っていたのに。
しかし、二人が扉をくぐろうとしたまさにそのとき、ルチアーノはあることに気づいた。
あの威圧感のある女性の名前を知らない。
ずいぶん長いあいだ話していたのに、二人は一度も自己紹介をしていなかった。
「あの!」
傷跡のある女性は数歩引き返し、再び彼を見た。
「どうかした?」
「ええと……」
ルチアーノは一瞬、言葉に詰まった。
「あなたの名前を知らないんです」
女性は片手を頭に当てた。
一方のミカは、ただため息をつき、首を横に振った。
少しがっかりしているようだった。
「ごめんなさい、すっかり忘れていたわ」
女性は頭に手を置いたまま、話を続けた。
「あなたは一人で、しかも一日遅れて現れた異邦人でしょう? そのせいで、私たちはずっと対応に追われていたの。新しい異邦人なのかどうかを確かめることに夢中で、いちばん基本的なことを忘れてしまったわ」
その女性と数分話しただけで、ルチアーノは最初の印象がどれほど間違っていたのか、信じられない気持ちになった。
見た目とは裏腹に、かなり親しみやすい人だった。
もっと荒っぽい人物を想像していたのに、驚いたことに、実際は正反対だった。
それでも……。
彼女は強い。
その存在感は、相変わらず圧倒的だった。
もし、いつか彼女と敵対することになったら、とんでもない目に遭うだろう。ルチアーノはそんな気がしていた。
彼女には、そう思わせる何かがあった。
「そういえば、何にも興味がなさそうな顔をしているわりに、ずいぶん細かいところまで気がつくのね」
ルチアーノには、それが褒め言葉なのか、皮肉なのか分からなかった。
「もう……あなたって、時々、言い方があまりにも率直すぎますよ」
ミカが、またも呆れた様子で口を挟んだ。
「ちょっと、今のは余計だったわよ。新しい異邦人の前で、私の印象を悪くしないでちょうだい」
「私が何もしなくても、ご自分で勝手に印象を悪くしているじゃありませんか」
ミカはいつも、尊大で、どこか偉そうな口調で話していた。
動作の一つ一つにまで、何事も完璧にこなそうとするかのような雰囲気が漂っていた。
傷跡のある女性は、あからさまに不機嫌そうな目でミカを見た。
ルチアーノからすると、二人は昔からの親友のように見えた。
思わず笑いそうになることもあった。
だが、会話に割って入れるほど親しいわけではない。
ましてや、ミカが彼女をからかっているように見える状況では、なおさらだった。
ルチアーノは、軽率に動く前に、まず状況を観察し、判断することを好む人間だった。
……今の状況と、それが何の関係があるのか?
もちろん、何の関係もない。
だが、そういう人間なのだ。
ミカとの言い合いに疲れたらしい傷跡のある女性は、くるりと背を向けた。
それから一歩前に進み、満面の笑みを浮かべて、再びルチアーノを見た。
「自己紹介が遅れてごめんなさい……」
彼女は両腕を左右に広げた。
「……私の名前はイルサ。異邦人ギルドのギルド長よ」
ルチアーノはわずかに目を見開いた。
「異邦人たちの代表として、そしてこの街の最高権力者の一人として、あなたをウルブス辺境の町へ歓迎するわ」
そう言うと、彼女は腕を下ろした。
「さて……あなたの名前を教えてもらえるかしら?」
傷跡のある女性――いや、イルサは、期待に満ちた目で彼を見つめていた。
すごい……。今のは見事だった。
イルサの自己紹介にすっかり圧倒されていたルチアーノは、彼女の質問に答えるまで、数秒かかってしまった。
「本当に自分の名前なのか、まだ分からないんですけど……ルチアーノといいます」
その瞬間、イルサの表情が変わった。
わずかに真剣さを帯びた笑みが、その顔に浮かんだ。
「ようこそ、広大で混沌としたムエルガルの地へ、ルチアーノ!」




