第4章: 第4部
「こんにちは。装備をいくつか買いたいんですが」
男はカウンターの向こう側に座り、剣の刃に砥石を当てていた。
何のためにやっているんだろう?
ルチアーノにはさっぱり分からなかった。
武器について詳しいわけではなかったが、剣の手入れに関係することなのだろうと思った。
店主は顔を上げた。
すると、すぐに立ち上がり、まばゆいばかりの笑顔を浮かべながら近づいてきた。
美男子だった。
それは否定しようがなかった。
背も高い。
ルチアーノの見立てでは、自分より頭一つ分ほど高かった。
きっと女性たちの間で人気があるんだろうな。
そんな考えが浮かび、彼は少しだけ嫉妬を覚えた。
店主は目の前に並べられた武器を指し示した。
「うちの品揃えを気に入ってくれたようで嬉しいよ。それで、何をお探しだい?」
その男は褐色の肌をしており、短い金髪は少し不揃いで、ところどころ緩やかに波打っていた。さらに、少し無造作に伸びた髭が、気取らない雰囲気を醸し出していた。
「ちょっと気になっているものがあって……」
ルチアーノが話し始めたばかりのところで、男が先に口を開いた。
「君、新人だろう?」
ルチアーノは、その笑顔に少しばかり苛立ちを覚えずにはいられなかった。
あまりにも甘ったるい笑顔に思えたのだ。
まあ……店員なんだからな。
あの笑顔も仕事の一部なんだろう。
「えっと……はい。分かりますか?」
「正直に言うと、うん。すぐに分かるよ」
店主は小さく笑った。
「さっきから君がうちの武器を見て回っているのを見かけてね。まだクラスを決めかねているんだろうと思ったんだ」
ルチアーノは呆気に取られた。
店主は自分のことなど、まったく気に留めていないと思っていたのだ。
まさか、そうではなかったとは。
ああ……恥ずかしい。
ずっと見られていたのか。
きっと、馬鹿な奴だと思われているに違いない。
自分が剣を手に取り、何をしているのかも分からないまま振り回していたことを思い出し、恥ずかしさが蘇った。
「はい……そのとおりです」
ルチアーノは片手を頭に当てた。
すると、ある考えが浮かんだ。
恥ずかしくはあったものの、幸い、顔には出ていないようだった。
「どのクラスにするか決められなくて。それで……剣を使ってみたんですけど、重すぎて。自分には向いていないと思います」
店主は顎に手を当てた。
「うーん……」
そして、ルチアーノの正面に立った。
その表情がわずかに変化した。
何かを考えているようだった。
やがて、顔を近づけ、彼をじっくりと観察し始めた。
ルチアーノは、その視線が頭の先から足元まで自分をなぞっていくように感じた。
何をしているんだ?
それに、近すぎる。
「ちょっと……」
ルチアーノは、もう少し離れてほしいと頼もうとした。
だが、言い終える前に、
店主が彼の腕をつかみ、じっくりと観察し始めた。
え?
この人、何なんだ?
ルチアーノは恥ずかしさと困惑が入り混じった感情を覚えた。
男が何をしているのか、まったく分からなかった。
おまけに、周囲にいた何人かがこちらを見始めたことにも気づいた。
「手を離してもらえますか?」
あまり気分のいいものではなかったが、彼はできるだけ穏やかな口調を保とうとした。
店主はそこでようやく我に返ったようだった。
「え?」
自分の手を見た。
それからルチアーノを見る。
最後に彼の腕を離し、二、三歩後ろへ下がった。
「ああ、ごめんごめん。武器のことになると、つい夢中になっちゃってね……それで、こういうことをしてしまうんだ」
男は笑った。
「ははは!」
「そ、そうですか……」
ルチアーノは明らかに戸惑いながら答えた。
それから、自分の腕に目を向けた。
「ところで……何をしようとしていたんですか?」
「君の筋肉や体格なんかを見ていたんだよ」
ルチアーノは黙り込んだ。
何なんだ、その説明は?
一瞬、彼はこの男がとんでもない変態なのではないかと思わずにはいられなかった。
しかし、何かを言う前に、店主が続けた。
「クラスを決められないと言っていたからね。少し力になれるんじゃないかと思ったんだ」
男は微笑んだ。
ルチアーノには、いまひとつ理解できなかった。
武器について詳しいわけではないが、ただ腕に触れただけで、その人がどのクラスを選ぶべきか判断できるとは思えなかった。
俺が無知すぎるのか?
そうかもしれない。
それでも、やはりやりすぎに思えた。
「魔法適性はどんな感じだい? それと、何か能力は持っているのかな?」
突然、そんな質問が飛んできた。
何のためにそんなことを聞くんだ?
ルチアーノはすぐには答えられなかった。
しかし、そこでイルサから教えてもらったことを思い出した。
大半の異邦人は、自分の持つ魔法適性や能力を基準にクラスを選ぶのだという。
もしかして、それが理由なのか?
店主に対して、まだいくつか疑問は残っていた。
それでも、彼の話に乗ってみることにした。
何しろ、この世界について知らないことは山ほどある。
そして、もしかすると、この男は本当に分かっているのかもしれない。
自分のクラス選びを手伝ってくれるというのなら、その助けを断る理由はなかった。
「実は、魔法適性がまったくないんです……」
少し間を置いた。
「能力もありません」
誰かに話すこと自体が嫌だったわけではない。
それでも、どこか恥ずかしさを感じていた。
どうしようもないことだと分かっていても、そう感じずにはいられなかった。
ルチアーノは店主の返事を待った。
しかし、何も返ってこなかった。
男は黙ったままだった。
「何かありましたか?」
「ああ、ごめん」
店主の表情がわずかに変わった。
「ちょっと驚いてしまってね」
その笑顔は消えていた。
「魔法が使えず、能力も持っていない人の話を聞くのは初めてなんだ」
一瞬、無造作な髭を生やした男は、完全に笑顔を失った。
「すまない……」
男はそれだけ言った。
ルチアーノは彼を見つめた。
「ああ、気にしないでください。もう受け入れていますから」
彼は笑おうとした。
「どうしようもありませんし」
それを聞くと、店主は再び笑顔を浮かべた。
だが、それは先ほどとは違う笑顔だった。
ルチアーノには、その表情を読み取ることができなかった。
嬉しそうな笑顔というわけでもなかった。
俺のことを哀れんでいるのか?
もしそうなら……。
それは不快だった。
何かを言う前に、男は再び態度を変えた。
そして、そこにはまた、あの笑顔があった。
商売人の笑顔だ。
「君には、暗殺者クラスに専念するのが一番だと思うよ」
ルチアーノはわずかに眉を上げた。
「魔法よりも技術や習得に重点を置くクラスだからね。それに、少し訓練すれば、ほかの人よりもずっと柔軟な動きができるようになって、暗殺者としてもうまくやっていけると思うよ」
ルチアーノは完全に驚いた。
本当に?
信じられなかった。
この男は、イルサとまったく同じ結論にたどり着いたのだ。
最初はギルド長。
そして今度は、この店主。
二人とも同じクラスを勧めてきた。
これって、彼がかなり有能だって証拠じゃないか?
少なくとも、ルチアーノにとってはそうだった。




