第4章: 第5部
「君も同じ結論にたどり着いたんだな」
それがルチアーノの考えだった。
いや、少なくとも、そう思っていた。
自分でも気づかないうちに、その言葉をかなり考え込んだような口調で、声に出してしまっていた。
「君も? どういうことだい?」
店主が尋ねた。
「あっ……声に出していましたね」
ルチアーノ自身も、それは頭の中だけで考えていたつもりだった。だが、困惑したことに、実際にはそうではなかった。
「ああ……またやってしまった」
彼は額に手を当てた。
すると突然、金髪の男が笑い始めた。
ただ笑っただけではなかった。
しまいには、笑いすぎて涙まで流し始めた。
「え?」
店主が大笑いする姿を、ルチアーノは信じられないといった様子で見つめた。
この状況、誰かに似ている気がするな。
彼は考え込んだ。記憶のどこかに答えがないか、探そうとした。
「それで、私と同じ結論にたどり着いたっていうのは誰なんだい?」
店主は涙を拭った。
あっ! 数時間前、イルサにからかわれたときに似ているんだ。
どうしてこの男からもイルサと同じような印象を受けるんだろう?
ルチアーノからすれば、この男はギルド長と同じくらい厄介な人物になり得た。
しかし、イルサと同じように、少なくとも今のところは、悪い人間には思えなかった。
とはいえ、大笑いしながら自分をからかうという癖は、あまり好きになれなかった。
「ギルド長です」
ルチアーノは、店全体を凍りつかせてしまいそうなほど冷たい口調で答えた。
明らかに機嫌を損ねていた。
おまけに、真剣そのものの表情も、その不機嫌さを隠すどころか、ますます際立たせていた。
「おいおい! ごめんって。怒らせるつもりはなかったんだ。ただ……君が考えていることを声に出していたり、そのときに見せていた表情があまりにも面白くてね。つい笑ってしまったんだよ」
ルチアーノの顔には、はっきりとこう書いてあるようだった。
本気で言っているのか?
そんなことで笑える人間がいるのか?
この場所にいる人たちは、みんな同じような笑いのセンスを持っているのか?
ルチアーノは腹を立てているというより、むしろ驚いていた。
自分にユーモアのセンスがないのか、それともムエルガルの住人たちが、自分には理解できない奇妙な笑いの感覚を共有しているのか、もう分からなくなっていた。
理解できなかった。
「許してくれるかい?」
店主は、あまりにも無邪気な表情を浮かべた。その姿が、なぜかルチアーノには小さなラブラドールを思い起こさせた。
ラブラドール?
それって何だ?
たぶん、犬だろう。
「えっと……分かりました」
ルチアーノは少し迷いながら答えた。
実際のところ、謝罪を受け入れたからといって、特に機嫌がよくなったわけではなかった。
「ああ……どうしてそんなに迷うんだい? こういうときは迷わず許してくれるものだろう? それは意地悪ってものだよ」
金髪の男は、いかにもわざとらしい悲しげな表情を浮かべた。
「だって……もう謝罪は受け入れましたよ。それ以上、何を望んでいるんですか?」
「へえ。君は話しかけにくい人だと思っていたけど、なかなか面白いじゃないか」
店主はルチアーノの肩を何度も叩いた。
痛い……痛いって。
面白いことと、親しみやすいことの違いが分かっていないんじゃないか?
「それにしても、イルサが勧めた相手なら、良い人間であることは当然だね」
店主の表情がわずかに変わった。
一瞬、その顔にはどこか物悲しげな雰囲気が浮かんだ。
彼女のことを話していたとき、俺はイルサの名前を口にしただろうか?
ルチアーノは困惑したが、すぐに首を横に振った。
覚えていなかった。
もっとも、イルサはギルド長なのだから、おそらくかなり知られた人物なのだろう。誰かが彼女の名前を知っていても、不思議ではなかった。
きっと普通のことなんだろう。
少なくとも、ルチアーノはそう考えていた。
「ところで、もっと気楽に話してくれていいんだよ。何しろ、俺たちは仲間なんだから。それに、俺も君と同じ異邦人だ」
「これが普段の話し方なんです」
もっと砕けた話し方をしているつもりだったけど……これ以上どう話せばいいのか分からない。
これが俺の話し方だ。たぶん。
しかし、店主が最後に口にした言葉を思い出した瞬間、ルチアーノはあまりの驚きに、垂れ気味だった目を大きく見開いた。
それまで、ルチアーノはこの男のことを、買い物を済ませたら立ち去るだけの相手だと思っていた。
だが今、初めて彼に本当の興味を抱いた。
「えっ!? 本当ですか!?」
その質問には、驚くほど勢いがあった。疲れ切っていた彼の声にさえ、活気が戻ったようだった。
店主が何かを言おうとしたところを、遮ってしまうほどだった。
「えっと……どうしてそんなに嬉しそうなんだい?」
男は小さく笑ってから、話を続けた。
「実は、ちょっとした事情があってね。冒険者をやめて、武器を売る仕事をすることにしたんだ」
ルチアーノは、男の話し方に何か違和感を覚えた。
店主は再び物悲しそうな表情を浮かべていた。
その目はルチアーノを見ているようでありながら、同時に、どこか遠くを見つめているようでもあった。
いや、正確には……。
自分自身の記憶を見つめているようだった。
その様子を見て、ルチアーノの興奮はかなり落ち着いていった。
ある意味では、そのほうがよかったのかもしれない。
自分でも奇妙なくらい興奮していた。
まるで、いつもの自分ではないようだった。
彼は少しずつ落ち着きを取り戻した。
「あなたにも、記憶の空白や曖昧な記憶があるんですか?」
同じ異邦人であるミカにも、同じ質問をすることはできた。彼女の経験についても知りたかったからだ。
だが、実際には、そのことをすっかり忘れていた。
魔法を使う能力も、固有能力も持っていないと知ったことによる落ち込みと、イルサやミカから教えられた大量の情報。そのせいで、単純に頭から抜け落ちてしまっていたのだ。
店主の返事は、悲しげな一言だった。
「そうだよ」
彼は、時間が経つにつれて、異邦人たちがいくつかのことを思い出すようになるのは普通だと説明してくれた。
それは、人であることもあれば、
場所であることもあった。
言葉や概念であることさえあった。
しかし、それが誰なのか、何を意味しているのかをどれだけ調べようとしても、結局、決して分からないまま終わることも多かった。
最も厄介なのは、どこかに答えがあると分かっているのに、どれだけ思い出そうとしても、それにたどり着けないという感覚だった。
また、頭痛がしたり、突然記憶が蘇ったりしても、あまり心配する必要はないとも教えてくれた。
どうやら、異邦人の間では日常的に起こることらしい。
数分前と比べると、ルチアーノはずっと真剣に話を聞いていた。
「その記憶が何なのか疑問に思う人は多いけど、実際のところ、誰にも分からないんだ」
店主は一度言葉を切った。
それから、両腕を左右に広げ、まるでこう言っているかのような表情を浮かべた。
まあ、そういうことさ。
ポップコーンと何か飲み物でもあれば、今がちょうどいいタイミングなのに。
ポップコーン?
ルチアーノはわずかに眉をひそめた。
飲み物?
どちらの概念にも聞き覚えがなかった。
ただ、なぜか唇を舐めてしまい、突然、空腹と喉の渇きを同時に感じていた。
ルチアーノは店主を見つめた。
なぜか、その光景は誰かに冒険譚を語る典型的な老人を思い起こさせた。
もっとも、今話している内容とはまったく関係のない連想だったが。
「その記憶は、別の世界で死ぬ前の、以前の人生のものだと言う人もいる。ムエルガルに来る前の記憶にすぎないと考える人もいる。中には、この世界で過ごした過去の記憶だと思っている人までいるんだ」
店主は肩をすくめた。
「でも、実際のところは誰にも分からない。それぞれが自分なりの考えを持っているんだよ。例えば……」
話があまりにも興味深くなっていたせいで、ルチアーノは自分がこの店に来た本来の目的さえ忘れてしまっていた。
「俺は、この世界が俺たちのいた世界とは違う場所で、俺たちが見ている記憶は、あちらで過ごした人生のものだと考えている人間の一人さ」
ルチアーノは動きを止めた。
まったく同じことを考えていた。
自分も、ここが元いた世界ではないと思っていた。
それどころか……。
今になって考えてみれば、自分の記憶や知っている言葉のいくつかは、本当に別の場所から来たのだとすれば、ずっと筋が通る。
例えば、貨幣制度。
ムエルガルのものと比べると、まったく異なっていた。
それに、頭の中に浮かんだあの言葉もある。
テレビゲーム。
ほかにも、いろいろなものがあった。
どこで覚えたのか分からないのに、意味だけは知っている概念。
さらに、あの奇妙な感覚もあった。
故郷から遠く離れているという感覚。
説明することのできない、物悲しさ。
ムエルガルに来てから初めて、ルチアーノは一つの答えを見つけた。
いや、少なくとも、筋の通った答えを。
最も奇妙だったのは、その可能性がずっと目の前にあったということだ。
それなのに、彼は気づいていなかった。
俺は、異世界から来たんだ!
驚きと喜びが入り混じった気持ちで、彼はそう考えた。
今なら分かる。
彼の表情は驚きで大きく引きつり、目は大きく見開かれていた。
そのとき感じた満足感は、圧倒的なものだった。
それに、これまで疑問を抱かせてきた多くの考えとは違い、その可能性に恐怖は感じなかった。
違う。
むしろ、安心できた。
正しい道を進んでいるような感覚だった。
まるで、ずっと探し続けていた何かの欠片を、ようやく見つけたかのように。
そうだ。
これなら納得できる。
しかし、まだ一つ、頭から離れない疑問があった。
どうやって、この世界に来たんだ?
そう考えたとき、真っ先に頭に浮かんだのは、この世界で目を開けるよりも前に聞いた、あの声だった。
どうして、どのようにしてムエルガルに来ることになったのかは分からない。
だが、一つだけ確信していることがあった。
自分に起きているすべての出来事の原因となった存在……いや、すべてとは限らないが、少なくとも自分がこの世界に来たことには、ムエルガルで目覚めた直後に聞いた、あの女性の声が関係しているに違いなかった。
問題は、その声の主について何も知らないことだった。
数時間前、あの声についてイルサとミカに話したとき、二人とも何のことなのか分からないと答えていた。
どうやら、異邦人が古代都市の遺跡で目覚めたとき、あの声を聞くのは珍しいことではないらしい。
つまり、何も分かっていなかった。
そのあとも、二人は長い間話し続けた。
しかし、その後に交わした会話には、特に重要なものはなかった。
最終的に、ルチアーノは短剣を二本と、軽量の革装備を一式購入した。
大したものではなかったが、値段を考えれば悪くない買い物だった。
少なくとも、店主はそう言っていた。
この時点で、ルチアーノは彼を信頼していた。
自分の命を預けられるほどではなかったが、落ち着いて会話をし、その言葉を信じられる程度には。
ちょうど立ち去ろうとしたとき、褐色の肌に金髪の異邦人が、手のひらを開いて片腕を差し出した。
「俺の名前はスルク……異邦人のスルクだ。君は?」
ルチアーノは迷わなかった。
彼の手を握り返した。
「俺は異邦人のルチアーノだ!」
彼は嬉しそうに答えた。
「なんだ、君だってちゃんと笑えるじゃないか」
スルクは笑いながら言った。
ルチアーノは自分では気づいていなかった。
だが、彼は笑っていた。
どうして分かったんだ?
驚いて、彼はそっと口元に触れた。
そして、そこにあった。
笑顔だった。
あんなふうに笑ったのがいつ以来なのか、彼には思い出せなかった。
突然、スルクがまっすぐ彼を見つめた。
その表情が一変した。
商売人の笑顔は消えていた。
「ムエルガルを甘く見るなよ。異邦人の多くは、ここに来てから一か月も経たないうちに命を落とす。それが普通なんだ」
彼は短く間を置いた。
「だから、生き延びろ……」
その目は、ルチアーノを見つめ続けていた。
「必ず生きるんだ」
彼の顔に再び笑顔が戻った。
だが、今度は違っていた。
もっと荒々しく、挑発するような笑顔だった。
「次に会ったとき、まだ生きていたら、うちの商品をいくつか特別価格で売ってやるよ」
ルチアーノは思わず小さく笑った。
「最後まで商売人なんですね、スルク」
「将来有望な客を失いたくないからね」
スルクは最後にウインクをした。




