↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
67/170

【第28話 アルフィード編:海底の神殿】《28-1リヴァイアサン》

 扉を開けるとそこは、光のまったくない真っ暗な空間だった。


 冷たい湿った空気が漂うだけで、広さがまったく想像できない。


 しかし、ここで躊躇(ためら)っていてはいけない。


 今までの神殿のように、ここでも明かりが点くのではないかという期待が、背中を押す。


 しかし入口のタイルを踏むとほぼ同時に、闇の中から、微(かす)かな息遣いを感じた。


「危ない!」

 大きな声で叫び「暗闇」に剣を突き刺す。


 確かに手ごたえを感じると同時に、耳をつんざく大きな泣き声が、空間を震わせた。


 マクベスが素早くカンテラを取り出し、呪文を叫ぶ。


「ルークス・ステッラエ!」


 ガラスの筒の中の円盤に仕込まれた星の欠片から、光が飛び出して、部屋の方々に散っていく。


 散っていった光が、何もついていない燭台(しょくだい)の上に収まり、青い巨大な竜の姿を見せた。


「……リヴァイアサン。一体、誰がこんなものを…………!?」

 セレフィナの声が、恐怖の色を帯びている。


 不思議な事に、明かりが灯(とも)ったのにも関わらず、部屋の全体像がはっきりしない。


 ただただ何も無い闇が、ひたすら広がっていて、空間の果てであるはずの壁が見えないのだ。


 ゴーフルが頭上のアウレオラを投げたが、リヴァイアサンの鱗(うろこ)に当たると、高い金属音を立てて落ちた。


「うっそお……今度はちっちゃい傷すらつかねえじゃん」


 ぼやきながら地面に落ちてむなしく回る、自らのチャクラムを、ゴーフルは見下ろした。


 剣の刃がまだ赤いことから、マクベスの魔法の効果は、まだ剣に残っている。


 小さなダメージでも与えられれば、さっきのように、傷口から炎を体内にぶち込むこともできるのに。


(傷がダメなら)


 もともと開いている体への入り口、つまり狙うべきは目や口。


 マクベスもそう思ったのか、高く飛び上がり、口に向かって火球を投げる。


「イグナイテッド・ウィスプ!」


 リヴァイアサンの爪は、火球ごとマクベスを薙(な)ぎ払おうとした。


 間一髪で、彼は伏せて転がり、避けた……ように見えた。


 攻撃を逃れたはずのマクベスは、左肩を手で押さえて、小さく呻(うめ)いていた。


「マクベス!」


 駆け寄ると、彼の顔から色が失せ、息は荒い。


「毒に、やられたのね……」

 セレフィナが彼の肩の、小さな傷を診て言う。


 かすっただけでも、大ダメージというわけだ。


 道中の魔物達にやったことを、今やり返されている形になる。


 ゴーフルに目配せすると、彼は頷いた。


 二人でリヴァイアサンの前に走って行った。


 露骨に口を集中して狙う。


 怪物も弱点と把握(はあく)している様で、ガードが固い。


 だがそれでいい。


「最良の医女神(エイル)」


 セレフィナの詠唱が聞こえた。


 怪物が振り向かないように、剣の振りを激しくする。


 リヴァイアサンの注意を離さずに徐々に移動し、セレフィナとマクベスの反対側に向かせることに成功した。


「エイトル(毒)・クレンズ(浄化)」


 充分に離れたところで、セレフィナが残りの詠唱をして、毒抜きの処置を本格的が始まる。


 ゴーフルのチャクラムが分裂し、下の方からリヴァイアサンの体表をかすめる。


 鱗を剥(は)がされた痛みと、そこに喰い込むチャクラムに宿っている炎で、竜は声を上げた。


 その隙を突いて、口の中に刃を突き立てると、断末魔を腹の奥から吐き出し、リヴァイアサンは絶命した。


 大量の返り血で、視界が塞がれる。


「アル、大丈夫?」


 血まみれの俺を、セレフィナが心配してくれる。


「俺の血じゃあ、ないよ」


 そう言って、血を拭う。リヴァイアサンの背後には、扉があった。


「このリヴァイアサンは、ずっとここに住んでたのかな?」


 ふと思ったことが、口から出た。


 神殿を守るキメラを殺した時と同じ、後味の悪さが胸の中に滲むようにじわじわ浸透する。


「このバケモン、どうやってこの部屋に入ったんだろうね?」

 ゴーフルの疑問に対しても、真剣に考えてしまった。


 ここのドアはおろか、神殿の出入り口だって、リヴァイアサンより明らかに小さいのだ。実は子供の頃は、出入り口を通れるほどに小さかったのか。


「それかこの部屋に入ると、無限に召喚されるのかしら?」

 セレフィナが言う。


 ここを守っていた者は、見たところもう、いないのに。


 石扉の取っ手に手を掛けようと近寄るが、やっぱりおかしい。


 扉の周囲には、壁がない。


 見たままを説明すると、何もない空間に扉の形をした板が立っている格好になる。


「巨大なリヴァイアサンを飼うために、宇宙のような異空間の部屋でも造ったんでしょうかね?」


 こちら側に戻りながら、マクベスはさらっと凄いことをに言うと、扉に手を掛けた。


 扉は渋(しぶ)るように、鈍く開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。