エンカウント/アルフィード《21-3ミスティの躊躇と、悪魔の甘言》
「やめろ、やめてくれ!」
バンおじさんが半狂乱になって格子を握ったり、叩いたりして暴れていた。
「いやぁーっ!!」
リエルの悲鳴が響き渡り、彼女の母親の白い顔が、更に色素を失っていく。
「あ……あなた」
リエルの母親の声は、あまりにか細く、悲壮である。
「ごめんね、リエル。なるべく苦しまないように、努力するわ」
銃をしまったミスティは、剣を片手にリエルに近寄っていく。
しかし彼女が見ているのは、今手に掛けようとしているリエル本人ではなく、檻の中のバンおじさんだ。
「……やめて、ミスティちゃん」
「……っ」
一瞬ミスティの手が止まり、躊躇しているのが見て取れた。
(よし!)
だがシュットガイストの奴も、それを見抜いたらしい。
「躊躇うなら俺がやろうか? そいつは悪人でもなければ、恨みもないんだろう。そんな人間を殺したらまた、クリシュナにいた時みたいに、体調不良になるんじゃないのか?」
せっかくの引き返すチャンスを、奴は潰しにかかってきた。
(余計なことを!)
「俺は剣は得意でないが、手で首をちぎるくらいならできる」
もう聴いていられない!
たまらなくなり剣を抜いた状態のまま、シュットガイストの奴の前に飛び出した。
しかしあろうことか、俺の剣が当たったのは悪魔なんかじゃなく、ミスティの剣だった。
リエルの「……アル」とすすり泣く声が聞こえる。
「……ベリオット、ありがとう。でも、ミイラを飲まされるのは、あれきりでいいわ」
ミスティの呼んだ「ベリオット」は、奴のファーストネームか。
そう認識した時、とんでもない怒りと悲しみがあふれ出た。
「ミスティ……君がこんなこと、しちゃダメだ。こんなんじゃあ……セドナおばさんだって、浮かばれないよ」
ミスティの後ろから、マクベスとセレフィナ、ゴーフルが取り押さえようとした。
しかし三人とも、見えない壁に勢いよく当たりでもしたかのように、後ろに跳ね飛ばされた。
「後ろから来てたぞ」
シュットガイストのこの口ぶりで、彼らを跳ねのけたのは奴だと悟る。
手も触れないところから、例の魔法「万物の王」だろうか。
ミスティは申し訳なさそうに、奴に言う。
[……なんかゴメン、いろいろ中途半端で」
「身も心も、魔族になった方がよかったんじゃないのか?」
冗談じゃない!
「村長……お願いです、本当の事を言いましょう!!」
檻の中から、役人達の泣き叫ぶ声が訴えた。
村長は答えない。
すると塔に拘束された人質達からも、口々に悲鳴が上がる。
「村長! あなたと……そして役人達は、彼女に一体何をしたんですか!?」
「助けて!」
村長は先ほどの嘘の告白よりもっと、信じられない内容の絶叫をした。
「許してくれ! 一〇年前の事件、魔物達が村を襲った原因と、セドナは関係ない!! 生贄を承諾させるために、罪を被せたんじゃ!」
※pixiv版完結済み。pixivは総括アカウントにつき「サラダゴリラのシーザー」名義になっております。
【第21~23話:《三大神王の神器》】
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pixiv版の表紙は私の描いたオリジナルイラストです。キャラのビジュアルを知りたくない方、素人の絵は見たくないという方は、閲覧をお控えください。
ガドル・サピール世界事典 本作の為だけの辞書(ネタバレを含みます)
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