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【第21話 エンカウント/アルフィード編:剥(む)き出しの牢獄】《21-1磔刑(たっけい)による通信》

21~23話はエンカウント編。番号もミスティ視点と重複します。

ほぼ同一の場面になりますので、好きな方の主人公視点を選ぶ形になります。

まずはアルフィード視点。ゲームで言うところの中ボス戦ですが、今回は彼の行方不明だった幼馴染であり、妹分のミスティ=ヴィリアンズになります。

 神仕院(しんじいん)の鐘楼(しょうろう)から、重く、しかしけたたましい音が鳴り響く。


「な……なんだ?」

 鐘つき屋が替(か)わったんじゃないかと思うような、聞きなれない下手くそな音色。


「そうだ、テレグラフ塔……」


 下半身だけ寝間着(パジャマ)という滑稽な姿で、テレグラフ塔の腕木を見る為の、双眼鏡を探す。


「そうか。家じゃないから、ないんだ……」


 村と無関係の人が泊まる前提の宿屋に、そんなものがあるわけはなかったと……、着替えながら窓の外を確認する。


「初耳だよ。各家庭に双眼鏡があるって」


 歯磨き用の獣毛ブラシを口から出して、ゴーフルも窓の外を覗く。


「……あれ?」

 遠くに見える腕木は「集合」の合図を送っているが、その光景に違和感があった。


 動いている腕木の位置は、塔の上の足場から結構な距離がある。


 ……にも関わらず、その位置に人影があるように見えた。


 もちろんはしごなどを使って、整備や点検の為に登ることもある。


 しかし動いているのに整備や点検なんておかしいし、第一、そこにいる人影のようなものは、腕木と同じ動きをしているのだ。


 嫌な予感がしてきた。


「あれ、……棒に人がはりつけられてない?」


 ゴーフルの言葉で、見えている光景が嘘ではないと確信すると、俺は剣を手にテラスへ出た。


 下に人がいないかだけ確認し、すぐさま飛び降りて塔へ走る。


「ねえアル、あれは村長さんよね!?」


 走っている最中に話しかけてきたのは、クルタナを手に持った、セレフィナだった。


「なんだって!?」


 改めて前を見ると、塔には目と鼻の先まで近付いていた。


 そして腕木に磔(はりつけ)にされているのは、間違いなく村長だ。


 塔の下には、村の人々が集まっている。


「どうして、村長が!?」


 人だかりをかけ分けて進むと、更に衝撃的な光景に出くわす。


 塔の外壁には何人かの人が、鎖で犬のように拘束されていた。


 そしてその傍(かたわ)らには、赤い色の檻(おり)も。


「いったい誰が、こんなことを!? 鎖や枷(かせ)なんて、昨日までなかったのに」


 塔には腕木を動かす装置と、番人が過ごすための設備があるだけで、拘束具なんてなかったはずだ。


「誰だか知らないけど、悪趣味な輩がいたものだね。わざわざこんなものを、見せ付けようだなんて」


 マクベスの小声が耳に入る。


 赤い檻の中には、何人も閉じ込められている。


「いったい……何のために?」


 セレフィナが辺りを見渡す。


 一緒に怪しい人物がいないか探るが、それらしき者はいなかった。


 赤い檻をしげしげ眺めたり、触ったりしていたゴーフルは、赤い物体の正体についてこう言った。


「これ、珊瑚(さんご)でできてるよ!? なんでこんなもん……」


「珊瑚の檻?」


 珊瑚から、海が連想される。


(……いや、まさかな)


 その先を考えようにも、理性がそれを拒(こば)んでいる。


 それよりも、カヴキテスタ鋼などの金属でないのだったら、なんとかできるかもしれない。


 そう思い、剣を抜いた。


「今、出します! 下がって」


「……ダメなんだ。俺達が逃げたら、殺されちまう…………!!」 


 閉じ込められている役人のおじさんが、慌てて止めた。


「……ダメなんだ。俺達が逃げたら、殺されちまう!」 


「……え!?」


 檻の中にいる他の人達もみな、青ざめた顔で首を振っている。


 繋がれている人達は、老若男女さまざまだった。


 しかし檻の方はみんな村役人達だと気付くと、意味が理解できた。


 拘束されているのは、役人達の親や妻や子……家族だ。


「どういう事……ですか? どうして」


「詳しい説明をお願いしますよ。村長」


 塔の上からした声は、最悪な予感が的中していると告げた。


「み……スティ?」


 塔の上から出た顔を見て、頭の中身がかき回されるような錯覚になる。


 陰口を言っていた連中ならまだしも、どうして育ての親である村長を、彼女が磔にしているのか。


 人々の手足に絡みついた枷も、血のような色の檻も、彼女が用意したものなのか。


 そしてやはりというか、隣にはあの魔族男の姿もあった。


 俺と目が合うと村長は、消え入る声で訴えた。


「助けて……くれ。ミスティは、この村を…………」


 セレフィナが困惑して、村長とミスティ、そして俺を見比べた。


「どういうことなの? 彼女はお母さんを殺した魔物を、討ち取りに来たんじゃあ……」


「……俺だって、分からないよ」


 セレフィナの言葉で思いついたように、ゴーフルは推測を口にした。


「もしかして、お母ちゃんを殺したのは魔物だけど『村の連中は助けてくれなかった』って恨んでる、とか?」


 そう言われると逆恨みではあるが、動機として説明がつく。


「ミスティ!」


 大声で呼びかけるものの、彼女は返事をしない。


 両肩をそっと掴まれたかと思うと、マクベスが言う。


「残念ながらもう、『あれ』は、あなたの愛した幼なじみさんじゃあない。あなたが呼んだ時、彼女は一瞬だけこちらを見ました。この喧噪(けんそう)でかき消されたのではなく、あえて無視をしたとみて、よさそうだよ」


 冷たい声の中に、同情が含まれているのを感じて、余計に悲しくなった。


「お前、こんなことをして、許されると思っているのか!?」


 檻の中から怒声を飛ばしたのは、バンおじさんだった。泣く母親の隣で、リエルが「パパ!」と叫び声を上げた。


 ミスティはバンおじさんを汚物でも見るように一瞥し、こう吐き捨てる。


「別に、あなたに許してもらう必要ないけど?」


 そして磔の村長を見上げて、こう告げた。


「さてと……村長、四人までなら、あなたの力で助けられるわ」

※pixiv版完結済み。pixivは総括アカウントにつき「サラダゴリラのシーザー」名義になっております。

【第21~23話:《三大神王の神器(レガリア)》】

→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9280521

pixiv版の表紙は私の描いたオリジナルイラストです。キャラのビジュアルを知りたくない方、素人の絵は見たくないという方は、閲覧をお控えください。

ガドル・サピール世界事典 本作の為だけの辞書(ネタバレを含みます)

→https://www.pixiv.net/novel/series/9180178

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