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【第16話 アルフィード編:次は『山脈の国クリシュナ』】《16-1及第点》

「持ってきたよ」

 スリザスの家に戻り、大地神王の神殿から持ち帰った神器のメビウスをテーブルの上に置く。


 眼前のそれを彼はルーペを翳したり、ひっくり返したりなど品定めをする。


 やや緊張しながらその光景を見る俺達の間をアミーが行き来して、お茶を出していった。


「偽物ではないようだな」


 鑑定を終えたスリザスから、微笑交じりにこう告げられる。


「あそこから生きて帰って来るとは、なかなかやるじゃあないか。神器を目当てに訪れたほぼ全員が、仕掛けを発見する前に床下の空洞を見つけて、無限に召喚されるトロールの餌食になってしまうそうだから、心配していたよ」


 いくつかの新聞が、そこで差し出される。


 あの場所での神隠しが、時折起こっているという内容の記事だが。


「サラバールの住民が言うには、あからさまな遺跡荒らしやトレジャーハンターを見つけても、誰も咎(とが)めはしないのだと。お前達では仕掛けどころか、床下の空洞にすら気付かず、むざむざと引き返すんじゃないかと思っていたが。ハハハ、えらいえらい」


 軽い胃のむかつきを覚えつつも、仕掛けを見破っていないことを白状した。


「俺達も例に漏れず、床下の空洞に引っかかってトロールに襲われたよ。床板はこの彼がぶち壊した」

 と、マクベスに目配せする。


「さあて、次の行き先は『天使の(デーヴァドゥータ・)塔(ステューパ)』。『浄土(ピュアランド・)崖(クリフ)』とも呼ばれている」


 地図を広げてスリザスが指すのは、山脈の国クリシュナにあるノルブリンカ山地。


「この世で最も天界に近いと言われていて、神や天使などの天界人は、ここからの人間界へ出入りする……と言われている。ここで探すべき神器は、『天空王の剣』だ」


「じゃあ、ゴーフルちゃんはそこから来たのね」


 セレフィナの言葉に、ゴーフルは首を振った。


「ううん。オルカントリードの泉通ってきた」


「あのエメラルド色の泉か。『化け物が出る』とか『神隠しに遭う』とか、いろいろ言われてたけど」

 あの森ばかりの地域には、入ってはいけないと言い伝えられている……いわば禁足地のような扱いの場所がいくつかある。


 その中のひとつが、人里離れた森の奥の泉だ。子供の頃一度だけ、決まりを破って男子数名で探検したことがあった。もちろん後でばれて、こっぴどく叱られた。


 あの時の俺達は、くだらない迷信か、何らかの事情で人を近付けたくない大人達の、ホラ話だと馬鹿にしていた。


「天界と繋がっているとは、知らなかったよ」


「ぶっちゃけ天界に通じる場所なんて、地上にいくらでもあるんだよ。だけどノルブリンカ山地なんて、あぶなくて通れたもんじゃないね。大天使が会議とか通信とか、パーティなんかやるのに使ってんだもん。ん? ちょっと待って。スリザスのおっちゃん、今度は教えてくれんだね」


 遠慮して口に出さなかったのに、ゴーフルが言ってしまった。


「『自分で探せ』とは言ったが、『教えてやらない』とは言ってない」


(いやいやいや、言ってるも同然だよ、オジサン)


 喉まで出かかった台詞をかろうじて飲み込んでいると、セレフィナが言った。


「大地神王の神器については『試験の為の試験』だったという事ですか?」


「どういうこと?」

 神器を探し出すことが、スリザスの提示する試験じゃないのか。


「『三つの神器を探し出せる』ことが、スリザスさんの考える、『私達が魔王アンジェに挑める最低限の資格』よね?」


「うん」


「まず一番近場にある『大地神王の神器』を探させる。もしその時点で立ち往生してしまうようなら、試すに値しないと追い返す。私達がメビウスを持って来ることができたら次の情報を与えて、『本番試験』がスタートする。違いますか?」


 数秒の沈黙の後、スリザスは答える。


「その通りだ」

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