↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
113/178

《40-3届け物の返礼に》

 仕事を終えると私は裏路地へ行き、誰もいないのを確認して、ポケットの中の指輪に念を送る。



 移動した先は市街地。


 もしかしたらと思い、試しに「アルのところへ」とやってみたが、やっぱりうまくはいかなかった。


 やはり具体的な場所、かつ知っている場所でなければ行けないようだ。


 荷物のお礼と、昨日のベリオットから聞いた戦争の話。


 そのことを知らせねばと思った。


 だけど都は広いから、捜しようがない。


 うろついている可能性もあるかもしれないし、少し捜してだめだったら諦めよう。


 武器や防具店の揃(そろ)う場所へ足を運ぶ。


 撮影館を通り過ぎ、武器・防具店の近くまで来ると、武道とは無縁そうな女の子達が大勢うろついていた。


 剣士目当てのファンであることは、想像できた。


「さっき、アルフィード=エースペード見ちゃった。近くで見ると、すっごく可愛かった」


 こんな会話を小耳にはさんだ。


 思った通り、装備を整(ととの)えに来たようである。


 遠くには行っていないと、足を速める。


 アルのことだ。


 きっと声を掛けてくる女の子達を無下にできず、足止めを食っていたに違いない。


 しかし、反則負けとはっきり断定されているのに、この扱い。


 さすがだ。行く先々へのモテ具合は健在である。


「人気者はつらいね」


 子供が友達を冷やかすような声がしたかと思うと、そこに、疲れた顔で返しているアルを見つけた。


 声の主は、あの連れの小天使だ。


「アルって、あたしらのことキライなの?」


「別に。イルゼはイルゼ、セレフィナはセレフィナじゃないか」


「つまり『お前らは女じゃない』と。なんて酷い」


 他の仲間と、イルゼもいた。


 声を掛けようと近寄ると、アルと目が合った。


「ミスティ!?」


「アル」


 手を前に出して、彼が近づいて来ることを制した。


 もし見られていたら、まずいからだ。


「ミスティじゃん。あの後大丈夫だったの?」


 昨日の事をイルゼに言及される。


「今のとこ無罪だって。なにかしらの処罰はあるって思ってたから、ちょっと不気味」


 ベリオットが言うには残酷好きらしい王や王女が、手放しで私を無罪放免にしていると聴くと、やはり信用しきれない。


「悪い事は言わないから。早く手を引いて逃げて」


 つい声に出してしまった。


 指輪に「今私が考えていることを、アルに伝えて」と念を送る。


 アルの頭に直接語りかけるイメージで、メッセージを頭の中に作り出す。


(ルートヴィグ王は、戦争を起こそうとしてる。邪魔な帝国を片付けてから、次は全世界を自分の支配下に置くつもりよ)


 私の「テレパシー」は成功したようだ。


 アルの目と口が、驚いたように開かれたのを確認した。


 ギャラクスさんとアルの対立自体には、興味はない。


 そもそも彼の手に負える話だと思っていない。


 だが相手は、レオパルテの国王に近い権力者だ。


 トリフィラートの王女が一行に加わっていたって、田舎から出てきた一般人を消すのに、指一本、いや唇を上下させるだけの作業だろう。


 伝えることだけささっと伝えると、私は逃げるようにそこから走る。


「荷物届けてくれて、ありがとう」


 声に出してお礼を言い、そのまま走った。


 後ろから「待って!」と聞こえた気がしたが、角を曲がるとすぐに、指輪に「宿屋の裏まで送って」と、念じて宿屋の裏の道へ飛んだ。


 部屋に戻ると、そのままベッドに倒れ込んだ。


(大丈夫だったかな? さっきのテレパシー)


 通行人で……たとえば落とし物をした人に「落としましたよ」と告げて、リアクションを見るという実験を、事前にしてある。


 とはいえ、まだ使え慣れているとは言えない状態だ。


 伝わっていると思ったら、実は伝わっていないとか、声が漏れているとかいうパターンの失敗もありうる。


 実はテレパシー用の監視システムが存在していた、とかあったら、それこそ終わりである。


 国民への告知前に戦争の話を漏らしたことと、おそらく海神王の指輪を隠していたことがバレたら、今度こそ牢屋行きになりかねない。


「でも私だって、手放せないもんね」


 知っている魔法であれば、素人でも使えるというこの指輪。


 使いこなすには、ある程度の勉強はいるが、私には充分すぎる拠(よ)り所である。


 先ほどアル達へのテレパシーと瞬間移動に使ったのもだが、次の休日に都を出る予定なので、その移動と荷物運びにも使う予定だ。


 都を出るとはいっても住居費の節約と、心情的に王城からは距離を置きたいのもあり、郊外の宿に移るだけだけど。


 研究熱心な魔導師や時の権力者……それこそ王様達や、アルと一緒にいる魔導師やセレフィナ王女の手にでも渡れば、指輪ももっと、華やかに活躍できただろう。


(あとは、スリザスさんとかアミーが研究したら)


 もし万が一この指輪を持て余すことになったら、レガリアに行って二人に相談してみるか。


 そういえば、鞄(かばん)の中にスリザスさんからの手紙らしきものが入っていた。


 鞄を開けて、封筒の中身を読んでみる。


「え……アミーが!?」


 書かれていたのは、私がいなくなったのと同時に、アミーが死んだこと。


 おそらく、私が近くの海岸で歌ったのが原因だということ。


 私の……というより人魚の歌声は、この世にとどまった霊魂を癒し、成仏させる作用があると判明していること。


 そしてもし、レガリアに来る機会があったら、アミーと、彼女のモデルとなった「リュドミラ」という王女の墓を家の裏に建てたので、寄ってほしいということ。


(……私のこと、恨んでないの?)


 もし本当にアミー達の墓参りに行ったとして、後ろから刺されやしないだろうか。


 彼の言葉を疑うというよりも、そうされて文句は言えない……ということだ。


 確かに彼らはアミーの死ぬ方法を探しに、レオパルテに来るはずだった。


 しかし唯一の家族も同然であった彼女をいきなり失って、気持ちの整理なんてつかないだろうに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。