↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
112/178

《40-2和解の兆し》

「ところで何の用?」


 盗賊団の引き渡しも終わり、店の中も落ち着いたにも関わらず、ルベオルスが席に着く気配はない(この店は、客が勝手に好きな席に着く)。


「それが客に対する言い草か? せっかく届けに来てやったのに」


 ルベオルスから、見覚えのある革の鞄(かばん)が差し出される。


「……え、この鞄」


 レガリアに置き去りにしたものが、まさかレオパルテに届いているなんて夢にも思わない。

 受け取ると手は、反射的に鞄を開けて、「あれ」を探し当てた。


「あった」


 輝封石(シール・シャイン)のネックレスは、無事にその中にあった。


 もう一つの方も。


「ありがとう! お兄様、愛してるぅ!!」


 思わぬ幸運に興奮して、ルビーの首に抱き着いた。


「べたつくな。なんならあの芋にでもしてやれ。たぶん喜ぶぞ」


 心底嫌そうな顔で、ルベオルスは自分の体から乱暴に私を引きはがす。


「芋? 芋って誰?」


 私の知り合いに、芋と呼ばれる人はいないし、それっぽい人もいない。


「田舎の芋剣士。エースペードだ。あいつが持ってきた。お前の兄さんは、あいつなんだろ?」


「一応血が繋がってるのは、アンタでしょ。で、アルが? なんで!?」


「スリザス……とかいう魔導師から、預かったって言ってた」 


 スリザスさん。


 あの晩海賊の網にかかっていなければ、彼とアミーでここに来ていたのだ。


 二つの石を再び鞄にしまうと、底の方に何か、四角いもの入っているのがが見えた。


 封筒だった。差出人に「スリザス」と書かれている。


 そういえば、浜辺に残っているのは私の服だけで、荷物はスリザスさんの家に置いたままだった。


 勝手にいなくなった私の荷物を処分せずに、取っておいてくれたのは感謝しかない。


(いずれ休暇を取って、お礼しに行こう)


「ここでなんか飲んでく? お腹減ってない? お礼に奢(おご)るよ」


「いや、いい。奴と話した時に、もう別のカフェで茶を飲んできた」


「てことは、アルには会ってるのよね!? 状態、どうだった?」


「気になるなら自分で会いに行ったらどうだ? 三日後に王城へ招かれてるから、それまでは都にいるぞ」


 そう言って、ルベオルスは出口へ歩いていく。


 少なくともアルは、死んではいないらしい。


 あの重傷から、出掛けられるくらいに回復するなんて、闘技場のドクターと、セレフィナ王女と神器には感謝しかない。


「あ、そうだ。もう一つ」


 呼び止めるとうるさそうに、彼は振り向いた。


「なんだ?」


「場所案内するから、今度母さんと父さんのお墓参り行こうよ。トリフィラートとレガリアだから、ちょっと日数いるかもだけど」


 父親の方は厳密にはお墓ではないし、ついでに死んでいるかと言われれば微妙な状態だが、私の顔が認識できたくらいだから、ルベオルス……ルビーの顔を見せる価値はあるだろう。


 ついでに、村の墓地の隅に埋められている母さんの骨も、彼の所に運んであげたい。


「……考えておく」


 考えておいてね、と彼の後ろ姿をを見送った。


「ねえ、今のルベオルスじゃない!?」  


 ほぼ入れ違いに帰ってきたローラが、片手に野菜の入った袋、もう片手に小麦粉袋を持ったまま、慌てた様子で言ってきた。


「うん。私のなくしものを、届けに来てくれたみたい」


「もしかして、お母さんの形見が入ってたっていう……」


 私がローラに頷くと、オリヴィエが油の樽(たる)を床に置く。


「お前ら、仲悪そうだったよな? 闘技場で見た感じ」


「本当に生き別れで、それまで会った事もなかったの。やられてた方……アルフィード=エースペードの方は、私の年上の幼馴染だったんだけど、実質は彼が兄さんみたいなものだったのよ。だからあの時は、彼が殺されないように、ただ必死だった。この荷物も、彼がレオパルテに持って来てくれて、ルベオルスが預かったんだって」


「エースペード……って、結局無実だったのよね。あの後、大丈夫だったのかしら?」


「今日、カフェでルベオルスとお茶してたって」


「回復早すぎじゃない!? 出血もすごかったでしょ」


「仲間に凄腕の治癒師(ヒーラー)がいるんだって」


「……うっひゃー、医者が失業しちゃうね。そっかー、良かったね。ところでお兄さんのルベオルスといい、幼馴染のエースペードといい、ミスティってイケメンとか美少年の知り合い多くない? 今度カッコいい人、紹介してよ」


 ローラは入口の方を向いているので、厨房の方に油樽を持って向かうオリヴィエが、彼女の方に振り返っているのは見えない。


(あーあ、またしても進展は、なかったみたいね)


「いいよ。そのかわりに、今度の休業日の前日、遊びに行くから付き合って」


「やった!」


 ローラとの約束を取り付けたので、次はオリヴィエが一人になった時に、彼の予定を確認しよう。


「いらっしゃいませー」


 再びお客さんが来始めたので、オーダーを取りにテーブルへ向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。