カイシノフエガナル
保健室のドタバタから一転、体育館の重い鉄の扉を開けた瞬間。バッシュがコートを擦る「キュッ!」という高い音と、激しい声の掛け合いが鼓膜を震わせた。そこは、さっきまでの平和な学校生活とは完全に別の、戦場だった。
俺の横では、元・最強が息を吐いていた。
「スーッ、ハーッ」
行くぞ、今井!」さっきまでバカみたいに1ヶ月前のパンを配っていた男の目は、たった今コートの床を踏んだ瞬間に、あの1年前の俺を絶望させた「怪物の目」へと切り替わっていた。
その目に俺は、まだ希望を感じている。きっと、コイツなら俺のライバルになってくれると。そう、信じていたいのかもしれないが...それでももう一度コイツと...古谷と本気のホンキで殺り合いたい‼︎その気持ちが頭から離れなかった。
「すみません、先輩方。少し、コートをお借りします」
古谷は、少し驚いたような顔をしたから俺は一言付け足してやった。
「多分、俺も今お前と同じ気持ちだわ」
先輩方は、やっぱり優しい。いいチームだ。久しぶりにそう思えた。
どれもこれも俺が周りの人の温かさに気づけたのも、それに返せるようになったのも全ては、あの試合の後...いや、コイツがコッチ来てからだ。だからこそ俺は負けない。負ける気もない。ただ目の前の勝利にくらいつく。
「じゃあ、1on1でいいね?」
先輩のその呼びかけに俺たちはシンクロするかのようにこう答えた。
「はい!」
「はい!」
重なった声に鼓動が高まるのは、きっと俺だけじゃない。この試合前の息が合う感覚はいままで感じてこなかった。それは、きっとコイツ(古谷)とだから感じていられることであって他の人に務まるモノではない。俺は、
「......俺を倒すのはお前だけでいい。」
そう、心の中でつぶやいた。
♢♢♢
「負けないよ......」
いつになく真剣な声の古谷はきっと俺に勝つことしか考えていない。
俺は、すこし意味もなく足元を眺め息を整えた。
「スーッ、ハーッ」
ペチン!ペチン!
頬を強く2回叩いて、俺も気合いを入れる。
ピーッ
今日もまた–−–笛が鳴る–––
ー第8話に続くー
【作者からのお願い】最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!雪也のキレッキレな煽りと、それに感情を剥き出しにして食らいつく春芽――。二人のバチバチな関係性を「おもしろい!」「続きが気になる!」と思ってくださった方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです!ページの一番下にある、・【ブックマークに追加】・【評価の星(★★★★★)】をポチッと押して応援していただけると、執筆のめちゃくちゃ大きなエネルギーになります!特に評価の星は、この作品がより多くの読者様に届くための最大の力になります。「おもしろかった!」の代わりに、ぜひ星を最大まで光らせていただけると励みになります!(登校タロウ)




