64話 休憩
「じゃあそろそろ行くか」
ルナが見つけた隠し部屋で数時間休憩した後、日持ちする食料をもてるだけ持ってクロウド達は隠し部屋を出発した。部屋には治療薬もあり、クロウドの傷はかなり治った。だがイバンは未だ魔術を使えない状態だ。
「まずオレたちはここの上層を目指す」
「上層?」
「まあこれを見てくれ」
クロウドはカバンから紙を取り出して広げる。それは写された壁画の地図。しかしそれは3枚あった。その3枚は見たところ繋がっている訳でもなく、それぞれが独立していた。
「どうして3枚?」
「実はこの13層は3階建てになってたんだ」
「この層自体が三つに分かれておるということか?」
「そうだな。一つの層が何階かに分かれているってのは上にも前提がある。まあそんなこともある」
「ややこしいなぁ」
クロウドは地図を並べて説明を始める。まず並べた3枚の真ん中の地図を指差した。
「オレたちが今いるのがここ。一番上を3階として、3階と1階の間、2階の中心だな。ここから端にある階段まで歩いて、12層への階段がある3階を目指す」
上の層である12層への階段は3階にあるので地上を目指すのであれば必然3階を目指すこととなる。13層はどの階も迷路の如く入り組んでおり通常であれば散々彷徨うこととなるだろう。
しかし今のクロウド達には地図がある。地図さえあれば迷うことなく最短ルートを通ることができるので、13層の突破は容易だろう。
だがそれは迷路を突破することが容易であるだけに過ぎない。
「道が分かったのはいいがこの層にはどんなトラップが潜んでいるか分からない。マネキン達ともまた接敵するか分からない。気を引き締めていこう」
「おう!」
そう、13層に関しては未だ分からないことばかりだ。常に死と隣り合わせのダンジョンにおいて未解明の未知というものは闇のようなものだ。その闇の先で天使が微笑むか死神が笑うかは進まないことには分からない。
3人は気を引き締めて先を進み始めた。
「疲れたー!休憩しようよ!」
出発してから数時間、クロウド達は地図にしたがって進み続けた。道中にはトラップもいくつかあったがクロウドがそれらを全て看破。マネキンと遭遇することもなく、道のりは危険のない安全なものであったと言えよう。
だがそれでも数時間も歩けば疲弊する。クタクタになったルナが最初に限界の声を上げたのだ。
「そうだな。オレも疲れたし、3階までもう一息だが一旦休憩にしよう」
こうしてルナの要望で3人は休憩を始めたわけだが、実はこの休憩で一番助かったのはイバンだった。イバンは震える足を休め、ホッと一息ついた。
(正直疲労で限界だったが自分から言うのはプライドが許さんかったからな。助かったぞルナ)
今の体のイバンの体力は一般的な人間と同じぐらいだ。ゆえにクロウドとルナについていけばすぐに疲労する。なのでそろそろ限界が近かったのだ。
「そういえば前からクロウド君に聞きたかったんだけどさ、」
「何だ?」
「クロウド君はどうして冒険者になったの?」
「......なんでそんなことを?」
「私も多少冒険したから分かるけどさ、ダンジョンってすごい危ないよね。なのに何でわざわざ冒険者になったんだろうって気になったの。それに仲間のことはよく知っておいたほうがいいでしょ?」
ルナはそう言って薄くはにかんだ。クロウドはその顔を見てため息をする。自分が冒険者になった理由を語るならば自分の過去を語らなければいけないからだ。
クロウドの過去はそう明るいものでもない。なのでクロウド自身自分の過去を語るのはあまり得意ではなかった。
「イバンだって気になるでしょ」
「まあ退屈凌ぎにはなるかも知れぬな。話して良いぞ。許可する」
「何だよそれ」
「あ、でも話したくないなら別に......」
そう言うルナの顔には気になって仕方がないと書かれていた。それを見たクロウドは観念して話すことを決めた。別に秘密にしている訳ではない。ただ誰かれ構わず話すようなことではないと思っていただけなのだ。クロウドにとってイバンは癪だがルナは話すに値する仲になっていた。
「じゃあ休憩がてら話してやるが、別に面白くもないからな」
そうしてクロウドは小さく口を開き、己の記憶に焼きついた過去を反芻しはじめた。
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