54話 閑話-4
「2層もか......」
一層を進み2層に辿り着いたカナン達一向だったが、2層でも一層と同じくスカイアリゲターが大量発生していた。
「でも今回はわざわざ駆除してから行くこともない。進むのに邪魔分だけ倒せばいいさ」
ユークの発言は的を得ている。一層は非戦闘者が大量に居たのでそれらを守るためにカナン達はスカイアリゲターの駆除に勤しむしか無かったが、2層にいるのは自分で戦える冒険者だけなので邪魔な分だけ倒して進めばいいのだ。
「それもそうね」
そうして3層を目指して進み始めた。
2層は巨大な城とその庭で構成されている。まずは庭を渡りきり、城の奥にある3層への階段を目指すのだ。ここは一層ほどではないがモンスターの数が少なく、ルートも解明されきっているので簡単に踏破することが出来る。
事実、カナン達はスカイアリゲターを討伐しながらもすぐに城の中の階段の近くまで来ることができた。
しかし......
「何あいつら」
城に奥。階段へ続く大扉の前を3匹の大きな犬のようなモンスターが彷徨いていた。
「あいつらはブラックドッグ。犬型のモンスターで死んでも心臓が無事なら再生するモンスターやな。ただおかしいのが......」
ブラッグドッグは本来5層に生息する魔物。間違っても2層にいるはずはないのだ。
「スカイアリゲターと同じように現れたんか?まあええか」
ブラッグドッグ達は物陰から覗くカナン達に気がつかない。
「どうする。気づいてないし居なくなるまで待ってもいいけど......」
「いや、時間がない。俺がやるわ」
ダルトがそう言う。2層に入ってから実はここまでの道中スカイアリゲター退治はカナンに任せっきりだった。カナンの撃退が早すぎて出る幕がなかったのだ。ユークは6層で仕事があるのでこのままでは自分だけが何もできないのじゃないかとダルトは危惧していた。
「じゃあよろしくね」
「おう!」
ダルトは物陰に隠れたままポケットから魔獣の毛は取り出して撒く。そして撒いた毛に魔力を纏わせて魔術を発動させた。
「犬には犬や。来い、霊犬ハチ」
毛はドンドンと膨れ上がり、犬のような形になる。そして毛は青い炎を纏った犬となった。これは魔獣やモンスターの毛や牙から空想の使い魔を作り召喚する、召喚魔術である。
召喚された霊犬ハチはキョロキョロと周りを見回し、ダルトの姿を見つけれるやいなや、飛びかかった。
「うわっ」
ハチはダルトの上に乗り、ペロペロと顔を舐める。そう、戯れついているのである。
「やめろじゃれつくな!ハチは召喚するたびこれやからな」
ダルトは必死にハチを引き剥がす。ハチは引き離されても相変わらず尻尾を振っている。ダルトは心なしか嬉しそうだ。
「......遊んでる場合じゃないと思うんだけど」
カナンの冷たい視線がダルトに突き刺さる。ダルトは焦ったように弁解する。。
「いやコイツも強いんやで⁉︎ほら行け!あそこの黒い犬や!」
ダルトがそう言って指を指す。するとハチはワンと吠えてブラッグドッグの方へ走りはじめた。
「そうそう!がんばれ!」
3人はハチの動向を応援しながら見守る。カナンとユークはあの小さな可愛らしい犬がブラッグドッグに立ち向かって大丈夫なのかと心配していた。
ハチはブラックドッグ達の前に立ちはだかる。ブラッグドッグ達はそれを敵と判断して一斉に噛みつきに飛びかかった。
ハチをその攻撃をヒラリとかわす。一斉に飛びかかったブラッグドッグ達は互いに頭をぶつけた。
ブラッグドッグ達が痛みに悶える。その隙にハチは体の炎を膨らませ、それらに対して放った。青い炎は1匹を包み、心臓ごと焼き払った。
「すごい!」
カナンとユークは感動して声を漏らす。ダルトはどこか得意げな顔をしていた。
残るブラッグドッグは2匹。2匹とも先程の炎を警戒してか慎重になっていた。ハチはそれならばこちらから行くぞと言わんばかりに勇猛果敢に攻める。
ハチは炎を振るいたたせ、片方のブラッグドッグに突進する。その身軽な突進をブラッグドッグは避けきれずにまともにぶつかる。体当たり自体の威力は大したことはない。問題がその炎だ。炎はブラックドッグの毛に燃え移り広がる。ここに消す手段はない。広がる炎はその内体をも焼き始め、ブラックドッグは悶え苦しみながら心臓を焼かれて死んだ。
残るは1匹。だがこの1匹が曲者だった。このブラッグドッグはハチが突進してできた隙をついてうなじに噛みついたのだ。当然炎は燃え移りブラッグドッグは焼ける。
だがハチが死ねばこの炎は消える。ブラッグドッグは野生的な感でそれを予測して決死の覚悟でハチに噛みついたのだ。
「ぎゃあううん!」
ハチが痛みに叫びを上げる。その痛々しい叫ぶを聞いたカナンは一緒に叫んでしまった。
「きゃあ!あの犬死ぬわよ!どうにかなんないの⁉︎」
ダルトの服を掴んでゆする。だがダルトは心配などしていなかった。何故なら......
「大丈夫や。ハチには必殺技が残っとるからな」
「必殺技......?」
「今からやるで?ハチ、自爆や!」
ダルトがハチに向かってそう言うとハチは
「アン!」
と元気よく鳴いて自爆した。
「は?」
ハチが自爆し、ブラックドッグの肉片が飛び散る。焼け焦げた心臓のカケラがカナンの頬についた。
「は?」
かなとユークは無言でダルトの方を見る。肝心のダルトはいい笑顔をしていた。
「いやーハチの大勝利やな!」
「え?ちょっと待ってあの技なに?」
ユークの質問にダルトはキョトンした顔で答える。
「何って自爆やけど......ああ!このパーティで使ったのは初めてやったな!弱い召喚獣でも強いモンスター殺せるから便利なんやで」
一瞬シンと辺りが静まり返り、ユークとカナンはダルトに掴み掛かった。
「お前人の心とかねえのかよ!」
「そうよ!普通あんな躊躇いなく自爆させる⁉︎」
ダルトはどうして自分が責められているのか理解できていなかった。
「いやいや、自爆つってももう一回召喚すれば生き返るんやぞ?まあ多少の痛みはともなうけど人間相手にやらせてるわけやないしな」
「えぇ......これ私たちがおかしいの?」
「そんなことないだろ......」
「まあそんなことはいいから先ごうや。クロウドが待っとるぞ」
ダルトはそう言って立ち上がり歩き始めた。
「思い返してみたらアイツこういうとこあったな。モンスター生きたまま解剖しようとしたり」
ユークもそう言ってダルトの後に続く。
カナンは頬についた心臓のカケラを拭ってボソリと呟き、二人の後に続いた。
「ワンちゃん撫でたかったのにな」
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