表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/78

53話 閑話-3

 カナリヤ地下迷宮。通称ダンジョン。その地下第一層は混乱に包まれていた。


「モンスターだ!モンスターが出たぞ!」


「逃げろ逃げろ!急いで逃げろ!」


「なんで一層にモンスターが⁉︎」


「光から現れたらしい!」


 一層に集う商人や駆け出し冒険者達が逃げ惑い、入り口の階段へ駆ける。そしてその集団をスカイアリゲター達が追い、攻撃する。その状況はまさに混沌。地獄絵図とまではいかないがかなりの大騒ぎだ。


 そしてその逃げる集団の最後尾。一人の少年が同じく逃げるため走っていた。その少年にスカイアリゲターの集団が追いつき、食いかかる。


「はあ、はあ、はあ!」


 少年は冒険者になったばかりの新米。年は若く、戦闘能力は一般人と変わらないようなもの。スカイアリゲターはかなり弱いモンスターとは言え集団で来られたらなす術もなく殺されるだろう。


 前をゆく人間達は冒険者とは名ばかりの商人や観光客ばかり。助けてはもらえない。かと言って交戦できる戦闘力はない。


「うわあああああ!」


 少年は逃げるのを諦めしゃがんで目を閉じる。ただ死を恐れるその心情は祈りにも似ている。だがこのダンジョンという地は常に非情。本来であれば祈りなど強大な生命を前に踏み躙られる。


 しかし今回はその祈りが届いたのか、それとも偶然か。救いの手は差し伸べられた。「......?」


 数秒待ってもスカイアリゲターが自分を襲った様子はない。少年は訝しんで目を開いた。


 そこには赤い長髪の剣士と、鮮やかや切り口で斬り殺された十数匹のスカイアリゲターの姿があった。


「へ?へえ?」


 少年は理解ができない。いや、理解はしている。ただその事実を認めることを脳が拒んでいるのだ。自分が諦めて目を閉じてから10秒も経っていない。その間に十数匹のスカイアリゲターを殺す。それも鮮やかにどれも一撃で。単純だがまさに神業。そんなことができる人間を少年は知らなかった。


「怪我はない?」


 赤髪の剣士は少年に手を差し伸べる。少年はその手をとり立ち上がる。


「大丈夫なら出口に急いで。出口の方のモンスターは全部倒してきたから」


 赤髪の剣士はそう言って出口の方を指差した。その顔は端正で少年はつい見惚れてしまった。


「あ、ありがとうございました!」


 正気を取り戻した少年はそう言って出口の方へ再び駆け出す。その顔は少し赤らんでいた。そして赤髪の剣士はその後ろ姿を一瞥し、前へ振り返った。


「全く......冒険者なんだから勝てなくとも抵抗ぐらいするべきだと思うんだけど」


 赤髪の剣士、カナンは静かにそう呟いた。


「まあ駆け出しくんだったんやろ。誰だって始めのうちは怖いもんだ」


 その独り言を聞いたダルトがカナンを嗜める。


「ダルト......そっちは終わったの?」


「ああ、目についたスカイアリゲターは片っ端から倒してようやく方がついた。怪我人は多少いるが死者は0。まあ上出来や」


 カナン、ダルト、ユークの3人は唐突に現れたスカイアリゲターから一層の人間を守るためバラバラに別れて戦っていた。本来であれば一層にはモンスターはいないので冒険者ライセンスを取得した商人や観光客が多く集まる。そういう輩は戦えないのでカナン達も放っておくわけにはいかずクロウドの救出に向かう前に戦っていたというわけだ。


「おーい二人ととも!僕も終わったぞ」


 ユークが二人の元に駆けつけてくる。ユークももちろん戦っていた。そして今さっき周囲のスカイアリゲター達を駆逐し終わったのだ。


「そっちも終わったか」

「ああ」


 こうして3人は再び集結した。スカイアリゲター達を倒すのにダンジョンに入ってからおおよそ1時間かかった。


「まだ探せばいないわけじゃ無さそうだけど......それは他の冒険者に任せましょう。私達は急がないと」

「そうやな」

「うん」


 こうして3人は再び歩き始める。とりあえずの目標は2層へ着くこと。1層は本来モンスターはいないのでそこまではとりあえず安全に行ける。


「しかし今回のなんだったの?1層にモンスター現れるって聞いたことないんだけど」


「どうやら僕たちが入ってくる直前、急に光が現れてその中から大量のスカイアリゲターが現れたらしい」


「ふーん。まあもう関係ないか」


「いや、それがおおいに関係ありそうだ」


 え?という顔でダルトとカナンはユークの方を見る。ユークは人差し指をピンと立てて説明を始めた。


「さっき聞いた話だけど2層でも同じことが起こったらしい。それだけじゃなくてそのもっと下の階層でも起きてるんはないかって。この先を進もうと思ったら大量のモンスターを相手取る必要がありそうだ」


「なにが起こってこんなことになっとんや」


「分からない。ダンジョンそのものの意思だとか隣国による破壊工作だとか色々噂はあるがどれも噂の域をでない」


「ううむ」


 ダルトは頭を悩ませる。彼の職業はモンスターに関して研究する学者。彼なりに何か考察を出したいのであろう。


 そんなダルトを横目にカナンは口を開いた。

「関係ない。雑魚はいくら出てこようと私達の敵じゃない。私達はただ突き進めばいい」


 そのカナンの言葉にユークとダルトはニッと笑みを浮かべてうなづいた。


 だがカナンの心情は勇敢な言葉とは裏腹に焦燥に駆られていた。


 この騒動が下の階層でも起きているのならクロウドも襲われているのではないか。もしかしたらそのせいで......


 カナンはそこまで考えて頭を振る。きっとクロウドなら上手くやる。大丈夫だ。だから彼が耐えている内に必ず救い出す。カナンはそう思い再び決心を固め、第二層へと歩いた。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字や評価、感想などありましたら書いていただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ