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50話 ゆうじょう

 物語は少し遡り、クロウドがトランと本格的に戦い始めたその時。ルナとイバンは光から現れたスカイアリゲターと戦っていた。


 ルナはスカイアリゲターの1匹の尻尾を掴みそれを振り回して他のスカイアリゲター達を蹴散らす。イバンは自前の牙で噛み付いて攻撃する。


「この姿でもこんな低級魔物どもに引けは取らぬわ!」


 最初に出てきたスカイアリゲター達の数は膨大だったが戦う内に減り、必死に戦っていた二人に余裕が出てきた。


「これいつまで戦うの⁉︎」

「そろそろ一旦離脱してもいいのではないか?」


 ルナとイバンでは透明化しているトランと戦うことが出来ないと思いクロウドはここに残るように言ったが、逃げれるようになったのなら戦う意味はない。


「そうだね!クロウド君もどっか行っちゃったし!」


 その頃のクロウドはトランを倒すため家まで誘導していた。


「クロウド君達が行った方向に私達も撤退して......うわ!」


 ルナは唐突に飛んできた火球を間一髪で避ける。飛んできた方向を見ると人間の姿をしたモンスター、マジックデッドが何匹も立っていた。


「まずいぞ!奴ら戦いに惹きつけられて来たのだ!」


 急いで周囲を見渡す。すでに二人は集まったマジックデッドの群れに囲まれていた。マジックデッド達は次々に魔術の攻撃を出して二人を攻撃する。


「ひいっ!」

「むうっ!」


 炎氷風水電気。多種多様な魔術の攻撃に二人は避けることしかできない。目下の目的はこの場からの離脱。イバンは翼を広げてなんとか飛び上がった。


「掴まれ小娘!脱出するぞ!」


 先刻のようにイバンの翼で脱出をはかる。


 (ワニは減っているうえニンゲンモドキも先刻よりも少ない。これならばそのまま飛んで包囲を抜けられそうだな)


「あ!待ってイバン!」

「なんだ⁉︎早くしろ!」


 ルナがマジックデッドの方を指差す。その指の先にいるマジックデッドは腰から瓶のようなものをぶら下げていた。中には透明な液体が入っている。


「あれって特効薬じゃないかな!クロウド君が言っていた特徴と一致してる!あれを回収しよう!」


「なにっ!」


 イバンは急いでルナの指の先のソレを確認する。それは確かにクロウドの証言と完全に一致しているとイバンは思った。だがそれと同時に今はそれどころではないだろうとも思った。


「それは分かったが今はここから逃げるのが先決ではないか⁉︎」


「でもどうせまたあの特効薬を探しに戻ってくることになる。それに今クロウド君魔術を使えないから苦戦してると思うの!お願い!協力して!」


 実際にルナもイバンも確証はとれていながその瓶の中身は特効薬である。ルナの言葉は真実を突いていた。


「......」


 正直言ってイバンは本気で嫌だった。現状は敵に取り囲まれた紛れもないピンチだ。離脱する手段があるなら離脱するのに越したことはない。


 (だが、小娘の言うことにも一理ある。もういちど特効薬を探しにくるのは骨が折れる。それに......)


 イバンは以前ルナに庇われたことを重い借りだと思っていた。もっともルナとしては治療してもらった時点でその点の貸し借りはイーブンになったと思っていたが。


「......分かった。ただし取れたらすぐに離脱するぞ!」


「ありがとう!」


 ルナは覚悟を決めて特効薬を持ったマジックデッドの方へ走る。その後ろにイバンも続く。そのマジックデッドは奥の方にいるので倒そうと思ったらその前に立ちはだかる他のマジックデッド達もたおしながら行かなければならない。


 そして当然マジックデッド達は場に留まるルナ達に魔術を浴びせるように飛ばす。それをルナは近場のスカイアリゲターの死体を盾にして突破する。イバンはそんなルナの影に隠れてついていく。


 特効薬を持ったマジックデッドに辿り着くまでに倒さなければいけないマジックデッドは3体。それらはルナの眼前で魔術を発動させようと魔力を操る。


 だが遅い。「力」により強化されたルナの脚力は強力な瞬発力を生み出す。その瞬発力でルナが瞬時にしてマジックデッド達と距離を詰める。発動に時間がかかる魔術とただ殴打するだけのルナ(魔術を発動させるのにかかる時間は術者の熟練度による。簡単な魔術なら初心者であれば10秒ほど、クロウドレベルになればほぼノータイムで発動できる)両者の攻撃のタイムラグの差が戦闘力の差に直結した。


 ルナはまず足で1匹蹴り飛ばし、2匹目を掴んで3匹目ごと吹き飛ばした。


 残るは1匹。ここまでの戦闘はほとんど一瞬と言っても差し支えがないほどの迅速さだった。素早く終わらせないとマジックデッド達の猛攻で余裕がなくなり倒されてしまうためルナは出来るだけ早く済ませようとした結果である。


「とった!」


 マジックデッドの顔を殴り飛ばして腰の瓶を奪う。こうしてルナは目的のものを入手したわけだが周囲はさらに集まって来たマジックデッド達で溢れていた。今にも大量の魔術が飛んでくる。さらなるピンチだ。


 (でも大丈夫!イバンに飛んでもらえば......)


「イバン!瓶奪えたよ!」


 ルナはイバンを見る。すぐさまここから脱出しなければならない。しかしイバンは心あらずで何か考え事をしていた。そしてすぐにハッと我に帰る。


「まずいぞ小娘!早く離れなければ......」


 その瞬間、魔術がイバンを襲った。イバンは自身の魔力感知にかかった「ソレ」に気を取られて無警戒。避けることはできない。そしてそのことをイバンは瞬時に理解した。グッと目を閉じる。


 (もはやここまでか......)


 だが魔術が当たったようなダメージは来ない。むしろ何かに包まれているような感覚がイバンは感じ取った。


「まさか......!」


 イバンは目を開ける。その視界には自信を包むようにして庇うルナの姿が写った。


「また......なぜ」


 愚問。その答えはすでに本人の口から聞いている。


 ルナは気絶の魔術に当たっている。ダメージこそないが意識はない。意識がないのであればイバンでは運べない。このままでは二人揃ってマジックデッドに群がられて死ぬ。もちろんルナを見捨てればイバンは逃げ切ることができるだろう。命を大切にするならそれが一番賢い選択だ。そう、それが一番賢いはずなのだが......


「まさか2度も庇われるとはな......龍帝である我に対してそれはもはや不敬の域であるぞ」


 イバンは何かを覚悟したかのような瞳で遥か先を見る。そこでは土煙が上がり巨大なソレが近づいて来ている。


 イバンが先程感じとったソレ。イバンが敗北をきした、この層の主にして死神。事実上の最強の一個体。


 クイーンスパイダーがこの騒ぎを感じとり近づいて来ていた。


 イバンはふと眠るルナの顔を見る。イバンの胸にどうしようもない表現のできない感情が沸く。それは恋愛ではない。もちろん家族愛ではない。強さは違えど、立場は違えど、それでも対等でいたいと思う何よりも無垢は感情。イバンはその感情はなんという名か知っていたが目を逸らした。


 イバンは思い返す。以前同じように自分を庇った後のルナの言葉を。ルナは自分と対等で入れて嬉しかったのだ。その感情に関してはルナの方がイバンよりも先輩だった。


「我らは同盟。互いに利用するだけの関係ではあるが......」


 イバンはその感情の名からはどうしようもないプライドと臆病心で目を逸らす。ただ今逃げるわけにはいかないということだけは分かっていた。


「小娘。いや、ルナ。貴様は少々利用されすぎだな......!」


 その小さな龍の影は膨大な魔力を含んで膨れ上がる。その姿はかつて龍からも人からも恐れられた孤高の王。


 ただ一時限り、龍帝の復活である。

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