5話 私は誰?
休日の午前11時のような気怠い気分で目が覚めた。
「うーん、いたっ!」
唸りながら寝返しを打つと何かが体に刺さった。その痛みで目が冴える。
体を起こして自分の寝ていた場所を見てみるとなんかガラスの破片みたいなのが転がっている。
なんだろうこれ。ていうか私なんでこんな場所で寝てたんだろう。
そこはベッドでも布団でもなく、石の床の上に土が積もっているようなところだった。ここで寝てたとか流石に不衛生が過ぎる気がする。
「えと...」
横から男の声が聞こえた。周りには誰もいないと思っていたのでビクってなった後、声の方を向いた。
その男は見た感じ結構背が高くて、ちょい癖のある金髪だった。少し怖い。
「君は一体何者なんだ。どうしてこんなところにいる」
金髪の男が聞いてくる。その声は少し強張った感じがした。
しかし、何者なんだとはなかなかに抽象的な質問だな。どう答えればいいのだろう。どうしてこんな場所にいるのかは私が知りたいし。私は緊張して、んと...えっと...みたいな返事とも言えない声を出す。
「...オレの名前はクロウド。プラチナランクの冒険者だ。訳あってこの建物に来て君を見つけた」
「はい...」
金髪の男...クロウドさんはまともに喋らない私を見かねたのか自己紹介をしてくれた。これもどう返せばいいのか分からず「はい」って言った。なんだ「はい」って。
というか今冒険者って言った?プラチナランク?何を言っているのか分からない。。
「敵意はないんだ。取り敢えず名前くらいは教えてくれないか」
困惑する私を置いてクロウドさんは話を進める。名前を教えてほしいそうだ。
まあ人と話すのが苦手な私も流石に自己紹介くらいはできる。それにクロウドさんの正体がイマイチ分からないが名前くらいは教えて大丈夫だろう。
自己紹介をするため息をスッと吸う。名前、名前、私の名前...。
ここで私は衝撃的なことに気がついてしまった。
「あの...私、何も覚えて無いみたいです」
どうやら私は自己紹介も満足に出来ないらしい。
「なんで水上歩行の魔術を使える人が1人もいないんですか⁉︎」
カナンはバンっと受付の机を叩いた。周りの冒険者達がそれに反応してカナンの方を見る。
「あ、ごめんなさい...」
カナンは先程の自分の行いを反省してギルドの受付に謝罪した。
しかしそんなふうにカナンが冷静さを欠くのも仕方ないと言える。
クロウドを置いてきてしまった地下八層へ到達するにはどんなに急いでも1週間以上はかかる。クロウドは食料を持っていないうえ、モンスターもウヨウヨいる。一刻も早く救助に向かわなければならない状況なのだ。
「ごめんなさい...。水上歩行を持っている冒険者の方はみんな出てしまっていて...」
受付嬢が申し訳なさそうに肩をすくめる。
「いや、それなら仕方ないわよね。本当にごめんなさい」
カナンが再び謝罪したところに病院に行っていたユークとダルトスがカナンのところへ帰ってきた。
「ユーク!足は大丈夫?」
すぐさまカナンは2人の元へ駆け寄った。ユークの足を見てみると包帯でグルグル巻きにされている。
「うん、見た目ほど酷くは無いよ。毒も浄化してもらったし治癒の魔術もかけてもらった。もう普通に動ける」
それならよかったとカナンは少し胸を撫で下ろした。
「そっちはどうだった。やはり見つからなかったか」
「ええ...使える人は全員ではらってるみたい」
「...仕方ない、とりあえず何か食べながら話そう。僕に一つ考えがあるんだ」
ルークがそう言った瞬間、カナンの腹がぐうと鳴った。
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