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48話 VS透明人間 3/3

「俺を倒せる作戦だぁ〜?馬鹿も休み休み言うことだな!」


 トランはそう言うと速攻でクロウドに斬りかかる。トランは自分の弱点を理解していた。


 (俺の「弱点」にヤツが気付いたのか......?ならば速攻で殺す!)


 既にクロウドは脇腹を斬られる重症を負っている。おまけに自分は透明。多少に雑でも変なことをされる前に殺しておきたいというのがトランの考えだった。


 そしてトランが迫ってきているのを感じとったクロウドは発炎刀を床に突き刺す。「作戦」を実行するのだ。


 トランの足跡がクロウドの直前まで迫る。次の瞬間にはクロウドにその刃が振るわれているだろう。クロウドはこの瞬間を待っていた。


「出力を最大だ!燃えろ!」


 前々話でもチラリとやっていたが発炎刀の火力は自分のイメージで調整出来る。例えば込められている魔力の10%分だけを出力したりすることで炎の強さを調節出来るのだ。


 そして今、クロウドはクイーンスパイダーの針を受けてから今までずっと込めてきた魔力を100%解放した。それによって炎は一気に燃え上がり空気に伝播、小規模な爆発を起こした。


「くっ!」


「なんだ⁉︎」


 クロウドとトランが互いに吹き飛ぶ。だがそれは致命傷になるようなダメージではなく。二人とも問題なく着地する。


 だがトランは着地してから気づく。

 (この爆発の目的はダメージを与えることではない!)


 トランは気がついた。先程の爆発で起きた煙や粉塵によって自分の姿が型どられていることに。


 (これはマズイぞ......!)


 トランの透明化の弱点とは、外部の要因によって間接的に自分の姿が認識されることだ。例えば剣に血がつけばそれを通じて剣が認識されるようになるし、自分が水を被ればその水を通じて自身の姿が認識されるようになる。


 だからトランは剣はすぐに血が落ちる構造の特注のものを使っているし何かが自分の体につけばそれごと透明化するようにしている。トランは自分が触れているものを透明化させることができるのだ。


 だが今回クロウドが起こした粉塵はマズイ。周囲に満遍なく漂う粉塵の中に不自然な人型の「粉塵がない空間」が浮かび上がる。そう、トランの姿が粉塵の中に型どられてしまうのだ。かと言って周囲全ての粉塵を透明化させることなど不可能。


 つまり現在のトランの姿は周囲を漂う粉塵に型どられてクロウドから認識されてしまうようになったのだ。


 (これで俺は完全に認識されるようになってしまった......!)


 舞う粉塵の中からクロウドがトランに襲いかかる。その発炎刀の太刀筋をトランは辛うじて受け止めた。

 

 だがそれも束の間、2撃3撃とクロウドの攻撃は激しさを増し、トランは徐々に着いていけなくなる。透明化のアドバンテージがなくなった今、形勢は完全に逆転していた。トランは考える。


 (戦闘技術がヤツの方が上なのは分かる。だがヤツは既に満身創痍。今にも死にかねない体だ。なのに......!それなのに......!)


 なぜクロウドはトランを押しているのか。それは単純だ。クロウドは今疲労困憊で脇腹に重傷を負っているが、それを加味した上でもクロウドの方が圧倒的の強いのだ。


 トランは必死に剣を振るう。それは攻撃ではなく抵抗。狼に狩られる子羊の精一杯の抵抗だ。クロウドはその抵抗の斬撃を全て予測し捻じ伏せる。姿が捉えられるようになった今、トランはクロウドの敵ではない。


 冒険者にはランクというものがある。下から銅クラス、銀クラス、黄金クラス、白金クラス。このクラスは冒険者としての実績や能力じよって推移するのだが、その内訳は銅クラスが約50%、銀クラスが約40%、、黄金クラスが約9%、最上位クラスの白金クラスに至っては1%にも満たない数、5人しかいないのだ。


 そしてクロウドはその白金クラスに属している。つまりクロウドは冒険者としての能力は1000人を超える冒険者の中の上位5人に入るというわけだ。


 ここまでの冒険では足手纏いがいたり規格外の存在が相手だったりとその強さが際立つことはなかったが、いかに満身創痍であろうとも透明化の魔術が意味をなくしたトランが真正面から勝てる相手ではない。


 このままではただ命を散らすだけ、しかし打開できる策はない。一方的な攻防に考える余裕すらない。そんな極限状態の中、トランの脳裏にはいわゆる走馬灯というやつが映っていた。

 


 トランには戦闘の才がなかった。平たく言うと「凡人」だった。どれだけ技術を身につけて、どれだけ知識を学んで、それが功を奏したとしても結局は同じく才のない「凡人」にしか勝てない。もしくは「努力のできない天才」ぐらいには勝てるかもしれない。


 だがそれでは駄目なのだ。それでは「努力のできる天才」には勝てない。それでは望む地位にはつけない。「努力のできる天才」など「組織」にはいくらでも居る。


 ならばただ強いだけの魔術を学んでも駄目だ。天才達と同じステージに立てる自分だけの個性的なアプローチが必要だとトランは考えた。


 そんな中、トランは実家の書庫を漁っていたらある魔術に関しての記述を見つけた。それは先祖が記した「光学魔術を利用した完全透明化」に関する魔術書だった。トランはこれだと思った。


 内容は姿を消す「透明化」と音を消す「サイレント」、そして魔力を隠す「魔力隠蔽」の三つの習得方法。そして並行して使用することにより誰にも認識されないようになる情報だった。


 それからトランは必死にこの魔術書の内容を習得しようと努力を重ねた。簡単な道ではない。三つの魔術を並行使用するのはかなりの高度技術だ。魔術書の指南があるとはいえそれでも難度は高い。だがトランはこの技術はそこまでする価値はあると考えてひたすらに努力した。


 そして魔術書を見つけた15歳の時から9年。トランは魔術書にするされた「完全なる透明化」の技術を完璧にものにしていた。そしてそれからその技術を用いて功績を積み重ね、遂にそのステルス能力を評価されて「組織」の幹部である「冥芒星」の席につくことができた。


 トランは確信した。この「完璧なる透明化」があれば上位席の化け物共は別として、少なくとも地上のゴキブリ共に負けることなどあり得ない。俺の地位は完全に確立されたのだと......

 


 だが一瞬の走馬灯を終え目の前にある現実は、圧倒的な窮地。着実に迫る敗北。すぐ先にある死。


「クソクソクソクソ!なんでこの俺がこんなに追い詰められているんだ!」


 フラッシュバックするのは「完全なる透明化」を身につける前のトランが重ねた敗北と屈辱の半生。それらが精神を刺激し怒りと焦りを増幅させる。


 クロウドはそれとは対照的な冷静だった。それも当然。魔術を使えなくとも体術の差が圧倒的。勝利は当然にして目前。あとは自分が失血死する前に片をつけるため攻撃を続ける作業のようなものだ。それをトランは察してさらに激昂する。


 それを察したクロウドは早く決着をつけるため挑発をする。実は失血で意識がなくなるまで余裕がない。冷静ではあるが呑気にしていられる状況ではないのだ。


「おい、今謝れば楽に殺してやるぞ」


 無論先程のトランの言葉を意識した挑発である。

 クロウドのその言葉にトランは気が狂いそうになる。本来トランはプライドが高く挑発には乗りやすい。この不利で限界な状況での挑発は劇薬となりトランの理性を吹き飛ばす。


「調子に乗るなよゴキブリがぁ!俺がテメエなんかに負けるかよぉ!」


 もはや冷静さなどカケラもない。トランは防御も保身もかなぐり捨てクロウドを差し違える覚悟で殺しにいく。


 (このまま殺されてたまるか!俺の命を捨ててでもヤツは道連れだ。もしこのまま殺せなくとも俺が絶命した瞬間事前に自分に仕込んでおいた自爆魔術が作動してヤツを殺せる。つまりヤツの死は既に確定しているのだ——!)


 トランはそういった思惑の元、隙だらけの姿勢でクロウドに斬りかかった。


「殺せるもんなら殺してみろやあ!」


 トランがそう言った瞬間、その顎をクロウドのアッパーが全力で殴打した。


「があ......!殺、すつもりじゃ......」


 トランの脳が揺れて意識が遠くなる。もはや気を失うのは避けられない。そんな中トランが聞いたのはクロウドの声だった。


「ああ、さっきの冗談だ」


 クロウドがそう言い、トランは気を失った。

読んでいただきありがとうございます。もしよければブックマークしていただけると嬉しいです

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