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44話 寄り道

 クロウド達3人はルナとイバンが来た道を引き返し辿る。


「そういえばルナ、崩壊地帯通ってきたらしいけどどういう風に歩けばあそこ通ることになるんだ。地図渡してたよな」

「ぎく」


「一回クイーンスパイダーから逃げてから6層を目指したわけだし普通に行くより遠回りになるのは分かるんだが、よっぽど離れないと通らないような場所だったと思うんだ。でもお前はクイーンスパイダーに追いかけられなかったのにそんなに離れたのか?」


「あ、あれですよ!途中でモンスターに追いかけ回されて!」


 本当は地図が読めなくて散々迷ったからだ。でもそんなこと正直に言えるほどルナは恥知らずではない。イバンのジッとした目線がルナの眉間に突き刺さった。


「そうか。そういや地図も古いヤツだったな。悪い悪い」


 クロウドはそう言ってタハハとルナに謝った。それを見て無事誤魔化せたらしいとルナはホッと息をついた。


「おい、少し寄りたいところがあるのだが」


 イバンが藪から棒に言う。こんな空間の何処に寄りたいのだろうかとルナは疑問を抱いた。


「寄り道なんてしてる余裕ないって少し考えりゃ分かると思うが」


「必要だから言っておるのだ。気が短いヤツは生きにくそうで哀れだな」


「あ?」

「ああん?」


 クロウドとイバンが睨み合う。今更取っ組み合いの喧嘩になるような心配はないだろうが空気は最悪だ。ルナがすかさず仲裁に入る。


「じゃ、じゃあとりあえず寄っていこうよ!イバンも今言い出したってことはそう遠くはないんでしょ?」


「うむ」

「ちっ、仕方ねえな」


 二人は睨み合うのをやめる。協力しあうと言った手間ルナに仲裁に入られると素直にいがみ合うのをやめるしかないのだ。


「じゃあ早速レッツゴー!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 それからしばらく道なりに進んで後、建物に影を掻き分けて小さな小屋の前へ3人は来た。


「崩壊地帯のすぐ近くじゃねえか」


「この小さな建物に何かあるの?」


「うむ、実はマジックデッドから逃げるのに夢中でスルーしておったがここに転送魔術の魔力反応があったのだ。せっかく引き返すなら確認しておこうと思ってな」


「なに!」


 クロウドが大袈裟に驚いて反応する。


「お前それじゃあワンチャン帰れるじゃねえか!そういうことは早く言えよ!」

「生憎だがその可能性はないと思うぞ」


 イバンはそう言って小屋のドアを押し開けた。ギイと軋んだ音が鳴り内部の様子がドアの隙間から露わになる。


「なにあれ」


 部屋は狭く人一人が過ごせるスペースもなく、床には一つの魔法陣が敷いてあった。


「これは転送魔術の魔法陣だな。魔力を込めれば魔法陣の中にいる生物が誰でも設定された場所まで飛ぶことが出来るって代物で、転送魔術が使えて魔法陣の知識がある人間にしか作れない高等魔術の類だ。だがこれは......」


 クロウドはそう言って魔法陣をなぞり、間近で確認する。そしてクロウドは何かを確信したかのように唾を飲んだ。


「だがこれは一方通行だ。一度使えばもう後戻りはできない。その上......」

「行き先は分からぬの」


 クロウドの言葉を奪うかのようにイバンが被せる。自分が考案して来た場所なのにクロウドに全てを解説されるのは気に食わなかったのだ。


 だがクロウドはそれを特に気にすることもなく解説を続ける。いや、気にしていないのではなくここで素直にイバンに突っかかるのが癪に思えたからあえてスルーしたのだ。


「そうだ。これは上の階層に繋がってるかも知れなければ更に下の階層に繋がっている可能性もある」


「じゃあリスクが高すぎる......ってこと⁉︎」


「その通り。これを使うのはどうしても賭けになるな。そもそも今は誰も使えないと思うぞ」


「どういうこと?」


 魔力を込めるだけでいいんじゃなかったのかとルナは疑問にを覚える。


「これを動かすとなるとただ魔力を込めればいいんじゃなくてそれなりのコントロールが必要になるんだ。オレは今の状態じゃそこまでのコントロールは出来ない。この発炎刀に魔力を流すので精一杯だ。ルナはできるか?」


 一応聞いたがクロウドは返答をすでに予測していた。


「できません。ていうか魔力を込めるだとか流すだとかっていうのもよく分からないし」


 そしてクロウドが予測した通りの返事が返ってきた。まあそれはクロウドにとって織り込み済みである。ルナは魔力を扱えなくとも「力」がある


「......ドラゴンは?」


 クロウドが聞く。イバンは不愉快そうに答えた。


「これは人間用に作られたものだ。人間の魔力でないと、我の魔力では起動できん」


「そういうことだ。まあ使えたとしてもリスクがデカすぎて使わないがな」


「残念ですね」


「ああ、残念ながら無駄足だったなドラゴン」


「あぁ?」

「はあ?」


「二人共それやめてってば!」

 ルナはこれで何度目かも分からない仲裁に入った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここが崩壊地帯......」

「一回通ったんだろ?」


 3人は小屋を後にして瓦礫で溢れる崩壊地帯に辿り着いた。ルナとイバンが魔術を使ってくるリビングデッド、マジックデッドに襲われた場所だ。


「しかしここはなにがあってこうなったのだ?戦いの跡だというのは理解できるが......」


「......まあいいだろ」


 クロウドはそう言って解説を始めた。


「結構単純な話で結論から言うと人間とクイーンスパイダーの大きな戦いがあったんだ。昔ギルドの猛者を集めて連合を作り、ダンジョンを攻略しようって話が出てな。腕っぷしがそれなりの数、100近くは集まったんだ。

 それで七層までは十数人の被害者は出たが辿り着くことはできた。だがそんな集団で7層を渡ろうと思えば目立つからクイーンスパイダーが見逃してくれるわけがない。当然戦いになった」


「その跡がこれというわけだな」


「それでどうなったんですか?まあクイーンスパイダーが生きてる時点で予想できるけど......」


「そうだな。人間達ギルド連合は数十人の死者、それと同じだけのリビングデッド(マジックデッド)変異者を出して敗走した。それ以来大人数でのダンジョン攻略、特に7層へ行くのは御法度になった」


「ふん、ここは人間の敗北の歴史というわけだな」


 クロウドはせっかく教えてやったのに生意気なイバンに対して大きな舌打ちをした。


「まあいい。それでさっきの話と繋がるんだがその連合の人間達はリビングデッド化の特効薬を持って来てたはずなんだ」


「あ、だからここに落ちたままになってるかもことですね!」


「ああ。というか確実にあるはずだ。数年前程度の話だからな。全て無くなってるなんてことはあり得ない」


 そう、連合の人間の殆どが特効薬を自前で所持していた。そんな人間達がここで何十人も死んだということは地上へ持って帰られなかった特効薬も一緒に転がっているはずなのである。


「つまりは死体漁りで特効薬を探すということか」


「そうなるな。だが実際に死体を見つけたらオレに言ってくれればいい。オレが自分で漁る。まあ大体は白骨化しているだろうが服とか装備は残っているはずだ」


 無論これはルナを気遣ってのものである。クロウドとしては仲間、といえども年端もいかぬ少女に死体を漁らせるわけにはいかなかった。その点クロウド自身であれば常に死と隣り合わせの冒険を体験してきた。死体を漁ったことだってある。そもそもこれは自分の問題だ。なのでそういった部分は自分が背負おうという考えだった。


「それがいいがあのモンスター共はどうするのだ」


「そうだよ。彼ら叫んで仲間呼ぶでしょ?それでクイーンスパイダー呼ばれたらヤバいんじゃないの?」


「それは大丈夫だ。ここにいるのはマジックデッドでヤツらは叫ばない。ただその分危険性は高いからドラゴンには常に魔力感知で警戒しててもらいたい」


「......まあいいだろう。ただし常には無理だ。大体30秒に1回ぐらいのペースかの」


「それで十分だ。これで作戦の概要は分かったな。ドラゴンの警戒で出来る限りマジックデッドとの戦闘は避けつつ特効薬を探す。もしもクイーンスパイダーが気づいて近づいて来ているようならすぐさま撤退して身を隠す」


「了解!」

「......うむ」

「じゃあ行くぞ!」


 そう言ってクロウドが筆頭に崩壊地帯へ足を踏み出した。

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