43話 和解
ルナとクロウド、そしてイバンは近くの家へ身を隠しお互いの状況を報告しあっていた。
「そんなことがあったんだな......」
クロウドは驚愕していた。散開していた仲間が合流したらモンスターと協力していたのだ。モンスターと協力するなど自分の常識とはあまりにかけ離れていた。いや、そもそも常識と言うならばモンスターが人語を話すこと自体が常識外れだ。
「お前は何のモンスターなんだ。喋れるモンスターなんて見たことも聞いたこともない」
クロウドはイバンに聞く。それに対しイバンは不機嫌そうにふてぶてしく答えた。
「ふん、我のことを知らぬどころか龍も知らぬのかお主?ここには常識のない奴しかおらんの」
「言っとくがお前のことも龍もオレは知らんし知ってるってやつも見たことねえよ」
クロウドとイバンが睨み合う。それを見たルナは少しオドオドとしながら止めに入る。
「ちょっと二人ともやめなよ!協力した方が絶対いいよ」
ルナが二人の間に割って入り仲裁した。
「しかし小娘。初対面でいきなり殺しに来た奴を信用などできんぞ」
「ちゃんと寸前でやめただろ」
「小娘に無理矢理止められただけで止められなければ我のことを殺していたであろうが!信用できるわけがない」
「それ言ったらオレだってモンスターなんぞ信用ならんわ!いつ背中刺されるか分かったもんじゃねえからな」
「なにをぅ⁉︎」
「ああ?」
「ふ、二人とも!」
ルナの仲裁も虚しくクロウドとイバンは取っ組み合いの喧嘩を始めた。ルナはそれを何度も止めようと声をかけるがその声は二人の耳に届くことはない。まさに一触即発、というか既に即発している。お互いあわよくば殺すつもりで喧嘩をしているのだ。何度言っても止まらない二人にルナの堪忍袋の尾が切れた。
「二人ともやめてってば!」
そうしてルナは二人の頭をゲンコツで殴った。
二人が同時に吹っ飛ぶ。
「やば......ちょっと強すぎたかも」
ルナはその「力」がある故に力加減が下手だ。それこそ加減を間違えば仲間であろうともうっかり殺してしまうくらいには。ルナは真っ先に二人の死を心配して駆け寄る。幸い二人の息はあり、頭をさすりながら立ち上がった。
「や、やったな小娘......」
「死んだかと思ったぞ」
二人ともそれなりのダメージを負っておる。その証拠に頭にアニメのような大きなコブが浮かんでいた。
「だって喧嘩やめないんだもん!」
ルナはあくまで自身の正当性を主張する。力加減は少し間違えたが喧嘩は止まったので結果オーライだ。
「だからってなあ。大体このドラゴンが......」
クロウドはイバンの方を睨む。
「文句あるのか小僧。あまりに侮辱するなら本気で......」
イバンはクロウドに向かって牙を剥いた。
(これはまずい......)
ルナは二人の間に流れる不穏な空気を即座に感じ取った。今度こそ一触即発だ。今度こそ本気で殺し合う。そんな雰囲気を醸し出していた。
(話を逸らさないと!)
「それよりもクロウド君の薬探しに行かないと行けないんだよね」
ルナは必死に話題を変える。このまま再び喧嘩させたらまずいことは誰の目にも明らかだった。
「......そうだな。このまま魔術を使えないままだと6層を突破できない。悪いが探すのに協力してもらうぞ」
「全然いいよ!仲間、なんでしょ?」
ルナはそう言ってニッと笑った。クロウドにはその笑顔が頼もしく見えた。
「いや待て、我は協力せんぞ。同盟の範囲外だ」
「え」
イバンが空気をぶち壊しながら言う。確かにイバンがルナに協力するのはクロウドを見つけることだった。なので薬探しにまで付き合う必要はない。ちなみにクロウドは今魔力がないのでイバンの魔力感知には引っかからなかった。
「そんなこと言わないでよ!お願い!」
ルナが駄々っ子のようにイバンに縋り付く。
「......我は誰とも群れる気はないが義理はある。借りもあることだし小娘に協力したい気持ちはあるのだが」
「なら......!」
「そこの小僧がダメだ。貴様は隙あらば我のことを殺すつもりだろう」
「......お前はきな臭すぎるんだよ。話聞いてみると以前は地上に居たって言うがそれならオレの耳に入るほどには話題になっているはずだ。お前の言ってることはオレの知ってる地上の常識と噛み合わないんだ」
そしてそもそもモンスターが信用ならない。クロウドは最後にこうつけ加えた。そして再び不穏な空気が流れる。
(結局こうなるの〜?)
ルナは頭を抱えた。彼らの衝突は避けられないのだろうか。二人ともいい人、いいドラゴンなのに。そう言った考えがルナの頭を回る。
(いや、そうだ二人がいいヤツなら......それを利用すれば!一回協力できればきっと仲良くなれるはずだし......!)
「分かった。聞いて二人とも」
「なんだ」
「どうした」
「私は今から自分の腕を折ります」
「!?!???!」
ルナの唐突な自傷宣言に二人はついていけず唖然とする。そうしている間にもルナは自分の左手を右手で握り折る準備を始めた。
「ちょ、ちょっと待て!なに考えてるんだ!」
「うむ、小娘貴様血迷ったか......!」
二人はそう言ってルナの自傷を止めに入る。だがルナはそれから逃げながら腕を握り続ける。
「二人が和解すれば折らない。和解しなければこのまま左腕折って足も折る」
「なにゆえそうなる!」
「交換条件になってないぞ!」
それを聞いてルナはわざとらしくため息をついた。
「なってるよ。だって私が戦えなくなると二人とも困るでしょ?」
「な......!」
確かにその通り。クロウドもイバンも現状はルナを大きな戦力として頼っている状況。ルナが腕を折ってしまえば大幅に戦力ダウン。二人はどちらもその状況は避けたい。
「は、ハッタリであろう。自ら腕を折るなどそんな......」
「じゃあ折ります」
ルナは力を強める。小さくビシビシと音がしてルナの顔が苦痛に歪む。
「わー!待て待て分かった。協力しよう!するからやめろ!」
「ほんと⁉︎」
それを聞いたルナはパッと明るくなった。完全に思惑通りにいったからだ。
「仕方あるまい。お主もそれでいいな。小僧......」
「......分かった」
こうしてルナの策略により和解することにした二人だが意外とあっさり和解したのには他に理由がある。
実際クロウドとイバンの和解は互いの利益になる。イバンの魔力感知はクロウドにとってあれば便利なんてもんじゃない。一方イバンからしてもクロウドの道案内がなければこのダンジョンから出られない。そのことは二人共理解していた。なのでルナの交換条件は二人にとって互いに利用しあう口実になったのだ。
「やったー!じゃあ二人とも和解の握手ね!」
ルナが二人の手を引っ張る(イバンは手というよりも前足だけど)そうして無理矢理力づくで互いに握らせた。
「小娘に免じて協力してやるが......我は小僧、お主を特に信用せぬ。妙な真似をしてみろ。即刻焼き殺してやる」
「それはこっちのセリフだなぁ。モンスター風情が、ルナに感謝するんだな」
ビキビキっ。二人の拳から音が漏れる。互いに相手の拳を潰さんばかりに全力で握りしめあっていた。
それに気づかないルナはそれを見て
(これならすぐに仲良くなれそう!)
なんて思っていた。
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