42話 約束
マジックデッドの首を発炎刀が貫き、血が噴き出す。その後マジックデッドは絶命した。発炎刀を引き抜き、マジックデッドの死体が地面に倒れる。
「ふう......」
これで一安心だ。周りにモンスターはいない。本来リビングデッドは人間と遭遇すれば即座に叫んで仲間を呼ぶ習性があるのだがマジックデッドはそれよりも魔術を使うことを優先するので仲間を呼ぶことがない。
正直今回はその習性に助けられた。今集団で襲われたらひとたまりもなかったからな。
「さてと、」
倒れたマジックデッドを見下ろす。綺麗な女性で黒い髪が印象的だった。ルナと同じだな珍しい。
胸元にはさびた金色の冒険者バッジがついている。やはり元は冒険者だったのだろう。当然冒険者をしていればこういう末路もある。なので戦い抜いたこの女性に同情を持つことはない。それは侮辱になりえるからだ。しかし、それならばせめて時は違えど同じ場所で戦うものとして、安らかな眠りを祈りたい。オレはマジックデッドの瞼を下ろした。
やはりこの層は嫌いだ。通常モンスター倒せば多少なりとも高揚感や達成感があるものだが、リビングデッドやマジックデッドは倒しても胸糞悪いだけだ。こんなところ早くルナと合流して抜け出そう。
見てみた感じ特効薬は持っていなさそうだ。一応マジックデッドの服を探ってみる。相手は女性だし死体を漁るのは倫理的にどうなのと思ったが生き抜くためには多少の常識を外すのも仕方がない。
うん、やはり持っていなかった。ならばさっさと移動することにしよう。その前にせめてこの死体を近くの家の中に寝かせておくことにする。勝手に漁った詫びだ。せめて少しでも平穏な場所で眠ってくれ。
そうしてオレはその場を後にした。
それから36時間経った。休憩の時間もあるのでずっと移動していたわけではないがかなり6層の階段に近づいてきた。あと一息と言ったところだろう。途中でスカイアリゲターと戦闘になったが特に苦戦はせずに倒すことができた。マジックデッドの時もそうだったが魔術が使えなくても、体術だけで案外戦えるものだな。まあそもそもオレがあまり魔術を当てにした戦闘スタイルでは無いというのもあるだろうが。
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あれから結構歩いて相当の距離を移動した。だけど一回も戦闘になっていない。イバンの魔力感知でモンスターの居場所が分かるのがかなり助かる。地図を読んでいるイバンによると6層の階段まであと少しらしい。もう一踏ん張り、がんばろう!
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しかしずっと発炎刀を握りっぱなしというのも疲れるな。精神力は冒険者になる前の修行で結構鍛えられているのと思うのだが......修行のことを思い出すのはやめておこう。わざわざ自分から嫌な気分になることもない。
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しかしずっとダンジョンで冒険してるから体が汚れてしまって仕方ない。お風呂入りたいなー。ていうか待てよ?私何日お風呂入ってないんだ......?これはまずい!
「ねえイバンの!もしかして私くさい⁉︎」
イバンが少し悩んでから返事をする。
「そうだな、結構臭うぞ」
「嘘......⁉︎」
かなり本気でショックだ。泣きそう。
「冗談だ」
イバンはそう言ってニヤけた。
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ふう、そろそろ休もうかな。いや、早くルナと合流したいしもう少し進んでから休もう。あそこの曲がり角まで行けば6層まで大体2kmぐらい。そこのタイミングで休憩を取ることにしよう。
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「小娘、あそこの曲がり角を曲がればあとは一直線だ」
「おっけー!」
いよいよラストスパートだな。先に階段についてたらクロウド君ビックリするかな。それとも先に着いてるかな。きっと先に着いてるか。少し浮き足立つ。
よし、ここの曲がり角を通って休憩だ......
よし、曲がり角までついたし、こっからまっすぐ行けば......!
ドン
クロウドとルナは曲がり角でぶつかり、違いに尻餅をついた。
「いてて......何が......」
「敵か......!」
ルナは尻をさすりながら立ち上がり、クロウドは考えるよりも早く臨戦態勢に移る。そこで二人は互いの存在を認識した。
「クロウド君!」
「ルナ!」
ルナが途端に抱きつき、クロウドはそれを赤面しながらも受け入れる。感動の再会なのに照れで拒絶することは出来なかったのだ。
そうして二人は無言で約束の再会を喜んだ。しかしそれも束の間、クロウドは再び臨戦態勢に移行した。彼の目にモンスターが写ったからだ。
「おい小娘、何かあったのか?そこには何もいない筈だが......」
「ルナ、敵だ!」
曲がり角からルナに遅れて出てきた小さな龍、イバンを目にしたクロウドは脊髄反射でイバンを敵認定する。即座にルナを引き剥がし、発炎刀を抜いた。
「な、なんだ貴様!」
イバンがそう言う間に、クロウドの発炎刀がイバンの命を一直線に狩りにいった。
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