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40話 新たな作戦

 クイーンスパイダーの針は刺さると瞬時に体に魔力を流し込み他の魔力に伝染してリビングデッドに変えるという特性がある。感染してから変異まで猶予があるリビングデッドの攻撃と違い瞬時に変異してしまうというのがこの針攻撃の恐ろしいところだ。


 そういうわけだからその針が背中に刺さってしまったクロウドは変異するまで秒読みの状態なのだ。


 針に刺されたクロウドはまず背中に手を伸ばし針を抜く。それでも既に魔力を注入されてしまっているのであまり意味はない。その後、勢いを失い屋根から転げ落ちた。屋根から地面まで6メートル。クロウドはそこから真っ直ぐ落ちて背中を強打した。幸い「ライジン」を使っていたことによる身体能力上昇の影響で体の強度が上がっていたので怪我はなかった。クロウドの頭の近くに瓦礫が積まれているのがクロウドの目に入った。


 だが急に止まったことと、針の魔力を注入されたことにより「ライジン」の反動が既にきていた。もはやクロウドは立ち上がることすらできない。だが腕は案外しっかりと動かせる。クロウドは必死に腰の発炎刀を握った。


 クイーンスパイダーはその様を見つめる。針を刺したことでクロウドはもうじきリビングデッドになる。クイーンスパイダーもこのことを理解しているのでもはやクロウドに攻撃する気はない。


 だがクイーンスパイダーは再び攻撃を開始した。対象はクロウドではない。クイーンスパイダーはこの光景を覗き見る透明なソイツに動物的な本能に根付く圧倒的直感によって気がついたのだ。クイーンスパイダーは目星をつけて周囲に針を飛ばした。


「おうおう危ねえな。なんで気づけるんだよ」


 男の声が響く。だが姿は見えない。


「流石に場所までは分かってねえよーだな」


 男が続けて喋る。クイーンスパイダーは周囲を無造作に攻撃している。クロウドはこの光景に困惑していた。


 (誰の声だ......?姿は見えない。光学魔術の類だろうか。クイーンスパイダーはどうして気がつけた?まさか見えているのか?)


 否、クイーンスパイダーにも見えてはいない。場所も分かっていない。前述した通り直感で存在に気がついただけである。


「せっかく送ったドラゴンが見当たらねえと思ったら、お前が殺っちまったのか。流石に仲良くは出来ねえよな。まあもったいないがそれでいい。お前は近寄る外敵を見境なく食い散らかせばいいんだ」


 (送った?あんなドラゴンは元々この層にいなかった。そもそもドラゴン自体が未確認の存在だ。あの時塔の上で見た光......スカイアリゲター達が出てくる時も同じ光があった。ドラゴンはあの光と一緒にこの層に来たのだろうか。そうだとしたら口振りからしてあの男が光を使って文字通りこの層に「送った」ということか?)


 クロウドは自身の見てきた断片的な情報を元に考察を組み立てていく。このクロウドの考察は的を得ていてあのドラゴン(イバン)はクロウドとルナが塔の上で見た光によって送られてきたものである。


 まあそれはいいとして、クロウドは一旦冷静になって考察を中断した。


 (なんだか分かんないが折角クイーンスパイダーの注意があの声だけ男に向いているんだ。ぶら下がってきたチャンスは掴んでもぎ取るのが一流の冒険者というもの。この隙にさっき思いついたにわか仕込みの新たな作戦を実行だ!)


 クロウドは決心し地面を這いずる。「ライジン」が針をくらったことによって早めに止まった。その分反動が弱くなったのでこうして這って動くことくらいは出来るのだ。これは不幸中の幸いだったと言えよう。


「しかしこの蜘蛛。確か地上人達はクイーンスパイダーと言っていたか。実物を見てみると圧倒的じゃねえか。これならわざわざ他のモンスター送り込むこともねえな。むしろモンスター同士の争いになるだけっつーことか」


 透明男はクイーンスパイダーを眺めながら喋り続ける。さっきからペラペラと喋ってはいるがクロウドに気がついていて話しかけているわけではない。あくまで独り言を呟いているだけである。


「うおおっ!さっきの危なかったな!」


 クイーンスパイダーの針が男のかなり近くに突き刺さった。あと数センチ程度である。


「お前なんか俺の場所察知してきてねえか?声じゃ場所は特定出来ないようにしてあるはずなんだがな」


 そう言って男は走り始めた。背中はクイーンスパイダーの方へ向けている。


「まあ殺されたら冗談じゃすまねえしここいらで退散しとくか。蜘蛛の視察はこの辺でいいだろ」


 そして男は透明なままクイーンスパイダーの元を走り去った。クイーンスパイダーもそのことを察し攻撃を中断した。


「そういやさっき人間がいた気がするが......まあいい。わざわざゴキブリがいたか確認することねえだろ」


 男は透明化を解除する。姿が現れ、その額には小さなツノが生えていた。

 

 

 クイーンスパイダーは男が去ったのを察し攻撃を中断すると、再びクロウドの方を見た。そこには既にクロウドの姿はない。逃げたのだろうか。クイーンスパイダーはどこへ逃げようが針は刺してあるのだからすぐに変異する。そう感じ取りその場をすぐに後にした。


 そしてしばらくたち、後ろに積まれていた瓦礫が崩れ、中からクロウドが現れた。


 クロウドはクイーンスパイダーがここを去ったのを目で確かめ作戦の成功を確信し、ガッツポーズをした。

読んでいただきありがとうございます。もしよければブックマークしていただけると嬉しいです

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