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38話 龍の話−3

 龍は、イバンは過去を思い返す。孤独な半生は、友がいればまた違うものになっていたのだろうかと。

 

 家族の元を追い出され龍のコミュニティに属していたイバンだったが、ある日異変が起こる。明らかに他の龍の数が減っていたのだ。


 イバン達はある山の頂上付近に住んでいて、夜になればその山は龍でいっぱいになるのだが、最近は明らかに数が少ない。


 龍達のリーダーは言った。これは人間の攻撃によるものであると。龍達が食料の調達に出向いたところを狙われて殺されているというのだ。リーダーはその人間達の行いを卑劣だと罵った。


 しかしイバンには人間が卑劣には思えなかった。そもそも龍達が人間を襲撃して略奪していたのだから自分達が攻撃されても文句は言えない。それがイバンの考え方だった。そんな考え間違っても口に出すことは出来なかったが。


 そんなこんなでリーダーの命令で食料の調達に行く際は常に2匹で行動するようになった。龍はコミュニティに属してもなんだかんだ単独行動を好む者が多かったがやはり皆、自分の命は惜しいので大人しく命令に従った。


 そしてイバンももちろん死にたくないので命令に従う。多くの者は仲のいい龍と組んだがイバンはボッチだったので同じく余った青い龍と組むことになった。


 そうなると当然2匹で行動することが多くなるのだがイバンと青龍との間に会話はない。イバンも青龍も会話するつもりがなかったので当たり前と言えば当たり前である。


 2匹無言で空をとび、無言で食料を見つけ、無言で帰還する。そんな日常が暫く続いた。2匹で食料調達に行くという作戦は功をきし龍の数が減ることは無くなった。この作戦はいつのまにか龍達の間の常識になり1匹で食料調達に行く者は居なくなった。イバンと青龍もそれに従った。


 その日は普段通り食料調達をしていた。森の巨大なキノコ「マリキノコ」が生えているのをイバンが見つけたので青龍と採りにきたのだ。そうしていつも通りイバンは無言でいると突然青龍が口を開いた。


「キノコというのはどうやって食べるのだ」


 どうやらキノコの食い方を質問しているようだ。イバンは会話する気は無かったがわざわざ無視する理由もなかったので自分の知る知識を伝えた。


「簡単なのはそのまま焼いて食べることだが人間は煮たりも刻んだりすることもあるらしいな」


 その言葉を聞いて青龍はボソリと


「そうか」


 と呟いた。教えてやったのだから礼くらい言えよとイバンは思わなくもなかったが、まあどうでもいいかとキノコの採取を続けた。


 それからも2匹で食料調達の日々を送るのだが2匹の間に言葉が交わされるようになった。ただ二、三の文章で終わる会話というのもおこがましいものだったがイバンも青龍も互いにこれが唯一の他者とのコミュニュケーションだった。もしかするとこの拙いコミュニュケーションが無意識に楽しかったのかも知れない。


 そうして二つの季節が通り過ぎた。コミュニティの龍の数は段々と増え、相変わらずイバンと青龍は食料調達係だった。


 イバンと青龍は食料調達の合間に魔術の練習を始めた。共に始めたわけではない。青龍が始めたのを勝手にイバンが真似し始めただけだ。それに伴い喋る数も少し増えた。文の数が二、三から四、五に増えたのだ。ギリ会話と言えるかも知れない。


 要領の良い青龍はあっという間に魔術を覚え、不器用なイバンはなかなか出来る様にならない。それと食料の確保。その繰り返しが続く。


 そうして青龍が6個の魔術を使えるようになり、イバンが3個の魔術を使えるようになった頃、青龍が言った。


「近々拠点に人間達が攻めてくるらしい」


 イバンは耳を疑った。人間がそんなことを出来るのか。何故お前はそのことを知っているのかと。


「情報収集班が掴んだ。それを影でリーダーと会話してるのを聞いた。なんでも龍狩り専門の魔術師を何十人も引き連れて来るらしい」


「では何故リーダーはそのことを言わないのだ」


「俺達が逃げ出さないように攻めてくるギリギリで伝えるつもりなのだろう」


 もちろんその話に確証はない。青龍が言っているだけだ。ただイバンにはその話が真実のように聞こえて仕方がなかった。


「それで逃げるのか」

「逃げない。人間共に怯えて逃げるのは悔しい」


「他の者には伝えないのか」

「伝えない。やはり他の者達に逃げられると困る」


 では何故自分にだけは教えたのかとイバンは最後に聞いた。


「お前は弱いから居ても居なくても変わらない」


 青龍はそう言った後少し黙って、


「せっかく魔術を覚えている最中なのに死んでしまってはもったいないと思った」

 と続けた。


 その夜、イバンはコミュニティを発った。本来なら勝手に抜ければ追われるが、人間が攻めてくる今であればわざわざ戦力にならない自分を追うのに時間を割かないだろうと考慮しての行動だった。


 イバンは発つ直前、青龍に声をかけておこうか迷ったが、青龍は言っても言わなくても何も思わないだろうと思い声をかけずに発った。


 イバンが思った通りコミュニティを発ってから何日経っても追っては来なかった。


 後日、龍のコミュニティが人間によって崩壊したとのニュースをイバンは聞いた。


 1匹捕獲。何匹かを討伐成功。他の龍達は逃げてコミュニティは完全に崩壊したという話だ。捕獲されたのがリーダーで討伐されたのは戦闘員何匹かだ。イバンはその中に青龍の存在がないことに気がついて結局逃げたのではないかと少し笑い、ホッとしている自分にいることに気がついた。ただその時はその安心をイバンは無視した。

 



 イバンは回想を終え考える。もしかしたらあの青龍は友だったのかも知れないと。もしあの時共に逃げていれば最強となった後、暇を持て余すこともなかったのかも知れないと。もっと違う生を送れたのではないかと。


 だがどんなにifを考えようが結局今の龍生に満足しているイバンだった。


 ただ一つだけ、もしあの青龍が友だったのだとしたら、近々2匹目の友が出来るのかもなとイバンは冗談混じりに考えて、自虐的に苦笑した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 これはルナが眠りにつきイバンが回想を始めるよりも前の話。

 クイーンスパイダーの巨大な影に覆われる。周囲から建物の崩壊する音が聞こえる。魔術の反動で身動きが取れない。

 クロウドは完全にクイーンスパイダーに追い込まれてしまっていた。

読んでいただきありがとうございます。もしよければブックマークしていただけると嬉しいです

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