33話 人違い
「出口に向かうには、右を曲がるぞ」
イバンが地図を見ながら歩く。私が持っておきたかったのだけど見方が全然わかんなくてちんぷんかんぷんで、それを見かねたイバンに奪い取られてしまったのだ。
「うむ、順調にいけば出口までそんなにかかりそうにないな」
「それはいいけどちゃんとクロウド君のこと探してくれてる?」
「失敬な。度々魔力感知をして探しておるわ。それのおかげで魔物共を避けて進めておるのだぞ」
「ふーん」
どうやら魔力感知という魔術で探しているらしいがわたしにはそれが本当かどうか分からない。このまま地図を見るだけ見られていますトンズラされたら最悪だ。しかしモンスターに遭遇してないのも確かだ。
「じゃあ今一回やってみてよ」
「......あまり何度も使いたくないのだがな(魔力節約のため)仕方あるまい」
イバンは一瞬目を閉じて押し黙る。「魔力感知」というやつを使っているということだろうか。
「むっ!この反応は!」
「見つかった⁉︎」
期待に胸を膨らませて聞く。
「いや......これは確かに人間の魔力に近いが......底の質が違いすぎるな」
イバンが怪訝な顔をして呟く。
「え、何それどういうこと」
私はイバンの首元を掴んで揺らしながら聞く。
「お、落ち着け!近くに人間の魔力を持ったものがいるがクロウドとやらではない」
「......どうして分かるの?」
「質が違うのだ。クロウドという男の魔力は一度感知したから覚えておるが奴のものとは違う。少なくともそこにいるのはクロウドではないだろう」
「じゃあ別の冒険者ってことか!」
「他の人間か......それも違うかもしれん」
私は予想外の言葉に惑う。人間の魔力を持っているなら人間ではないのか。私はそう問いただした。
「それが何とも奇妙なのだ。確かに人間の魔力ではあるが微妙に別物、魔物の魔力が混じっておる」
「じゃあモンスターってこと?」
「そうとも言い切れん。大部分は人間の魔力だからの。ただ確かなのは味方だとは限らないということだ。まあ会いに行くかはお主が決めろ」
むう、と私は眉を潜める。もしそこにいるのが冒険者なら転送石を持っているだろうからあとはクロウド君と合流すれば帰ることができる。だけど気掛かりなのはモンスターの魔力が混じっているってこと。人間に化けたモンスターの可能性だってあるわけだ。
つまり会いに行くにはそれなりのリスクを背負わなければいけないわけだ。この層に来たばっかりの時もこんなことあった気がする。
いや!もし冒険者なら移動するんだから迷っている暇はない。ただでさえ厳しい冒険なんだから多少のリスクは取ってでも希望は掴まなきゃ!
「行こう!モンスターだったら逃げればいいだけなんだから!」
「そうか。では我は隠れながら着いて行く故、モンスターだったら一人で対処するのだぞ」
「うわっ感じ悪」
もしモンスターだったらなんとかコイツ囮にして逃げよう。
そうしてその反応の元にイバンの案内のもと走って、意外にすぐ着いた。
「そこで止まれ!角の先におるぞ」
キッと急ブレーキをかけるように足を止め、角の影から様子を伺う。そこに確かに魔力の主であろうソイツはいた。
背中が見える。私もクロウド君もゆうに超える高い背丈。赤くて長い肩まである髪。服は結構良さそうな白いコート。足が2本あって腕も2本。そして当然二足歩行。
「これは人間だー!」
やっぱり別の冒険者が偶々ここに来てたんだ!これでクロウド君と脱出することが出来る!私は角を飛び出してその人間に駆け寄る。
「な、バカ!早まるな!」
イバンの制止が後ろから聞こえる。もはや何を慎重になる必要があろうか。どう見てもあれが人間だ!
「おーい。そこの人ー!貴方冒険者ですよね!」
手を振りながら走る。長身の男(多分)に美少女(当社比)が手を振りながら駆け寄る光景。はたから見るとロマンティックかもしれない。
「私ー実は遭難しちゃってー!助けてほしいんですけど!」
私がそういうのと同時に彼はこちらを振り向いた。唐突に現れた救世主!どんなお顔をしているのだろうか!
振り向いた彼の顔が視界に入る。キリッとした鋭い目つきに、角張った頬には傷跡がある。少しコワモテだけどワイルドな感じでイイ!そして額には二つのツノが......え?見間違いかな?目を擦ってみて......あ、やっぱり生えてる。ツノ。
「なんだてめえ......」
ツノを生やした彼はシワがよりまくった鬼のような形相でこちらを睨んだ。
「ひ、人違いでした!」
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