3話 発見
恐る恐る建物の方へ近づいてみる。周りを見ると空洞の壁に何やら描かれた札が貼られていた。
これは見たことがある。結界魔術の道具だ。結界魔術とは札をいくつか貼り、魔力をこめることでその内側に結界を張る魔術だ。効果は貼る札によって変わるのだが...。札に近づいて調べてみる。
「魔除けの結界か」
結界魔術の中で最もポピュラーなものだ。ダンジョンの入り口や一層のそこらに貼られているので結界魔術には疎いオレでも知っている。
ただこの札...状態から察するにかなり昔に貼られただろう。触れて魔力を探ってみるも殆ど感じない。すでに効力を失っているとみてよさそうだ。
建物の方へ振り返ると光を放つ虫が飛んでいるのが目に入った。ダイオードホタルだ。こいつは通常のホタルよりも何十倍も強力な光を出す。この虫が何匹か飛んでいるからこんなに明るかったか。
芝の生えた柔らかい土の地面を歩き建物のドアの前へ立ち、ドアノブへ手をかけた。しかし、押しても引いてもギシギシといって開かない。
まあ100年以上は前の建物だろうからな。むしろドアが形だけでも残っているのが奇跡だろう。
仕方がないのでドアを蹴破る。それは脆く思ったよりも軽く破れたのでバランスを崩して前のめりにこけてしまった。
「いってー、ちくしょ〜」
顔を上げてドアの先を見る。そこは大きめな部屋になっていてところどころに石で作ったような不恰好な机や椅子などの家具が置いてあった。奥にはさらに扉がある。
...妙だな。
それが部屋を見た最初の感想だ。
まず前提としてダンジョンは昔、人が住んでいた場所だと考えられている。その理由は単純に人工物の多さからだ。家があったり教会があったり、層によっては城がある所もある。
だからここに建物があること自体は不思議じゃない。
問題はこの石の家具だ。
建物の構造やアーティファクトの存在からダンジョンに住んでいた人々の文明は非常に高かったものと、下手すれば現代の文明すらも超えていたかもしれないと推察されている。
それなのにこの石の家具はなんだ。そんなに高い文明を誇っていたダンジョンに住んでいた人々...めんどくさいからダンジョン人としよう。そんなダンジョン人がこんな家具で生活していたとでもいうのだろうか。
むしろこれは後から住み着いた人間が即興で用意したような...
いや、考えても仕方のないことを考えるのはやめよう。
それよりも寝床を見つけよう。ここで寝てもいいがもっと綺麗で寝やすい場所があるかもしれない。今いる部屋は壁や天井にヒビが入ってボロボロだった。
奥のドアを開ける。こちらは少し立て付けが悪くなっていたが割とすんなり開けられた。
...オレはその扉の先の光景に衝撃を受けた。
そこは先程の部屋よりも広かったが天井や壁がさらにボロボロになって崩壊しており、部屋の中央には大きく透明な水晶の塊があった。
オレの驚愕の理由はその中にあった。
なんと水晶の内部で1人の少女が眠っていたのだ。
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