2話 徘徊
所持していた水筒に水を汲み水質浄化の魔術を使う。近くに水場があったのは不幸中の幸いだった。本当は火で沸かしてから飲みたい所だが火を出す魔力が勿体無いしいつモンスターに襲われるかもわからないこんな場所でそんな悠長なことはしたくない。
「まあ、沸かさなくったって浄化はしてあるから死ぬことはないか」
水を飲みながら七層へ戻る道を辿る。
...少し状況を整理しよう。
まずここまで救助は来ない。なぜかと言うと六層はオレの魔術『水上歩行』なしで踏破することは不可能だからだ。
この『水上歩行』という魔術は使える冒険者が殆どいない。いたとしても初対面の人間をパーティに加えるのはとても危険だ。上手くいっていたパーティが新たに人を増やしたことでチームワーク不足で全滅なんて事例はいくらでもある。そんな危険な手段をリーダーである慎重なカナンがとるとは思えない。
なので、俺がやるべき事は六層を突破して五層まで戻ること。そこまで行けば確実にカナン達が救援に来てくれるしもしかしたら他のパーティがいるかもしれない。
しかし問題が二つある。
まず一つがその五層まで行くのがオレ一人ではあまりに難しいということ。そもそもダンジョンは一人で行動するような場所ではない。しかもダンジョンは深くなるほど危険性が増す。八層七層なんて一瞬の油断で命が消えるほど危険な場所だ。そこを戻るだけとはいえ一人で歩くなんて無謀にも程がある。
そしてもう一つ、食料がない。水は先程確保できて現在進行形で飲んでいるのだが食べ物がない。これは一刻も早く解決する必要がある。ふつうに餓死とか苦しそうだから嫌だ。まあ食糧のあてもない事はないのだが...できれば実行したくない。
...色々と問題はあるが取り敢えず休もう。少し悠長に思えるかもしれないがこういう時こそ落ち着くのが一流の冒険者だ。さっきのビッグモースから受けたダメージも残ってるしな。
周りにモンスターに見つからなそうな場所はないか。キョロキョロと見渡してみる。
すると、丁度人一人入れそうな洞穴を見つけた。その洞穴はツタがかかって少し隠れている。ここなら中にモンスターがいなければ休むのに良さそうだ。
簡易魔術『ライト』
魔術を使い手のひらから光を出し、モンスターを警戒しながら進む。洞穴は案外深く三分ほど歩いた。すると奥の方から明かりが見えた。
「なんだ?」
恐る恐るその明かりの方を覗いてみる。
「...!これは」
そこには明るく照らされたドーム状の空間があった。柔らかそうな土の地面からは木が茂り花が咲いている。天井からはツタや曲がりくねった木が生えている。
そして中央には黄色い石でできた四角い人の家のような建物が堂々と鎮座していた。
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