28話 龍の話
その龍は、空の王だった。
龍がひとたび飛び立てば、人々は家に籠り、鳥は蜘蛛の子を散らす勢いで逃げる。その龍に敵う生物は世界にいない。
空は龍のものだったのだ。
ここまで強くなるまでに沢山のことがあった。
家族に捨てられたり、龍同士のコミュニティに馴染めなかったり、人間に殺されかけたり。龍の生き様は波瀾万丈だった。
だが龍は強い意志で生き続けた。兄弟を、同族を殺し、人間を殺した。その龍にとって世界には敵しかいなかった。
だから、ブレスを鍛えて魔術を学んで策を弄してそれから、殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して穀して殺して殺した。
そうして生まれてから150年経って、世界で最も強い生物であった親を殺し、その龍が世界最強になった。
龍は最強になり、そして同時に孤高だった。仲間も友も家族もいない。だが龍は満足していた。いかに孤独であろうがこれが己の求めた景色なのだ。求めた地位に辿り着いた。自分の人生、いや龍生は幸福で誇れるものなのだと龍は考えていたのだ。
だがそんな龍にも一つ悩みがあった。それは......
(あまりに退屈......!)
龍は暇を持て余していたのだ。龍は考える。
(友も仲間もいらない。だがこの退屈は如何なものだろう。噛み砕いて言うと超暇というやつだ)
龍は目標を見失ってしまったのだ。全てを見返し生物の頂点に立った。それはいいのだが目指すものが無くなった龍は溢れる時間の使い方に悩んでいた。まだ自分が死ぬまで数百年あるのだ。人間の中には「人生は死ぬまでの暇つぶし」なんていう人間がいるが龍はまさに今この状態だ。
(どうしようか。他の龍や人間を襲ってやるか?でも弱いものいじめしてるみたいで気分がよくない。でもやることもないしな)
いつもこんなことを考えては結局その辺を飛び回ったり新しい魔術を試してみたりと適当な暇つぶしをして1日を終えるのだ。
そしてその時は訪れた。
その日は珍しく龍は浮かれていた。
(今日の祭りは楽しみだ。久々に退屈を感じずにすみそうだ)
海の向こうの国で盛大な祭りが催されるという話を龍は聞いたのだ。別に龍が参加できるというわけではないが遠くから見ているだけでも退屈な日々を送っている龍にとっては派手で趣向の凝らされた人間の祭りは楽しいものなのだ。
(近づきすぎたら我を恐れて勝手に中止してしまうから面倒くさいがな)
ガハハと一匹で笑う。ご機嫌だ。
しかしそこに水を差すかのように、その理不尽が龍を襲った。龍の全身が光に包まれ始めたのだ。
(なんだ......!奇襲か?)
龍は少しワクワクしながら魔力を全身に流し防御体勢を取る。
次に周囲の魔力を探る。まず周囲半径20km以内に他の生命体はいない。そして光は他に類を見ないほどの魔力量だった。
(超遠方からの攻撃で、この魔力の質は転送魔術のものだな。遠方からの攻撃でこの魔力量、かなりのやり手だな)
もしかすると魔術の技術に関しては自分を超えるやもしれない。龍は超久々の難敵に興奮を抑えられずにいたのだ。
龍は飛ぶ速度を上げる。大体時速700km程度の速さ。大抵の魔術ならその常識はずれのスピードで振り切れるがその光は龍にピッタリとくっついてきていた。
(振り切るのは不可能。かなりの精度だな。魔力で塞ぐことも光の魔力が強すぎて無理か。くくっ面白い。転送魔術なら直接的なダメージを負うことはない。乗ってやろう)
龍はニヤリと笑って光に飲み込まれる。
(祭りが終わるまでには帰えれるといいのだがな)
龍はそう考えてその姿を消した。
龍が光に飲まれ転送されたのは暗い地の底。ダンジョンの第7層だ。
ズシンとその街に降り立つ。周りの建物がその衝撃と龍の自重で崩れた。
(ふむ。どこだここは......。相手のホームか?)
龍はすかさず周囲の魔力を探る。
(かなりの数だな。人間に似たような魔力を持った......魔獣が数百。大体13km先に人間が1匹。いや、2匹か?もう一匹ははやけに魔力量が少ないな)
そして龍はその脅威を感知した。
(なんだ......異常なまでの、いや、異常なんて言葉では表せないほどの強力かつ凶悪な魔力は!)
龍は口端を歪ませて笑う。
(貴様か、我を呼んだのは......!)
ソイツは現時点では一向に動く気配がない。龍はそれを自分を待ち構えているのだと解釈した。
(となるとこのニンゲンモドキ共は貴様の眷属か。よく見たら魔力が混じっておるわ)
龍は魔力感知を続けるままその街を見渡す。
(ふん、奇妙な場所だ。天は岩で阻まれた地下空間。明らかに人間が作ったであろう街は魔獣で溢れ人間は2匹だけ)
考察を続けるのをやめ、龍は一旦の自身の行動を決める。この場所の正体は後回しだ。不可解な魔力は感じるが恐らく自分に関係はない。ならばまず敵の殲滅に尽力しよう。最初はニンゲンモドキ共を焼き尽くし、次に人間を捕まえ、最後にヤツと直接対決だ。
そう考えをまとめ、龍は咆哮をあげた。
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