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27話 迷子

 二手に別れてからだいぶ走った。流石に息が切れる。クイーンスパイダーは追ってきていなかった。


 ......私が追われていないということは、つまりはそういうことだ。胸がキュッと苦しくなる。


 いや、今は自分の無事を喜ぼう。彼はベテランの冒険者だ。きっと逃げ切れるはずだ。


「じゃあ、行っこか!」


 話しかける仲間はいないが不安を紛らわすのと景気付けで声に出して気合いを入れる。目指すは6層への階段!


「......さて、ここはどこだろう」


 とにかくモンスターがいない方に闇雲に走ってきたので自分の現在地も6層への道もわからない。


「そうだ!地図ももらってたんだ!」


 肩に下げたクロウド君にもらったカバンからこれまたクロウド君から貰った地図を取り出す。他にも食料や水なども入っている。


 私は早速取り出した地図を開く。


「ほうほう、なるほど......」


 なるほど。この地図は細かく丁寧に描かれていて所々に補足するような文字の書き込みがある。読めないけど。


 つまり、この地図によるとここから6層への階段まで行くには......


 衝撃的なことに気がついてしまった。


 ——現在地が分からないと地図があっても何も分からない!


「な、何か目印になるもの......!」


 キョロキョロと周囲を見回す。が、ない。広がるのは変わらない街並みだ。気が利かねえ街だ。


「......仕方ない」


 そう、悩んだって文句を言ったって仕方ない。目印がないなら目印を探せばいい。そうして自分の現在地を把握してから改めて6層を目指せばいいのだ。遠回りだが忙しが回れなんて言葉もあるのだ。地道に頑張ろー。


「えいえいおー!」


 自分に喝を入れ直し再び歩き始めた。まあ取り敢えず街並みに沿って歩けば何かしらあるだろう。

 



 って、思ってたんだけどなー。現実は思ってたより厳しい。あれから数時間歩いても目印になりそうなものは見つからない。


 というかワニのモンスターが結構いてしょっちゅう追いかけ回されているので自分がどこを通ったのかも分からなくなっている。


 一度地図をよく見たら現在地が分かるのだろうか。でもあの地図めちゃくちゃ細かいから逆に分かりづらいんだよな。


「はぁー一回休憩しようかな」


 走り詰め歩き詰めで足は棒になっていた。あんまり疲れた状態でモンスターに襲われても危ないだろう。


 周りの家に目をやる。左にある小さな煙突の生えている一軒家の外壁が他よりも綺麗だったので目についた。ここで少し休憩しよう。


「勝手にお邪魔しまーす」


 木製の扉を開ける。おお、中身も埃を被ってはいるけどそれなりに綺麗だ。


 いざ家に入ってみると足が完全に休憩モードに入ってガクガクと震え始めた。思ってたよりキてたみたいだ。このまま体を地面に預けたら眠ってしまいそうだ。


 休憩するって観点なら眠るのは別にいいんだけどその間にモンスターに襲撃されたら一発アウトだ。


「あ!あれなら......」


 壁際にあるタンスが目についた。綺麗に形を保っている。あの中なら......。


 入って扉を閉める。いい感じだ。扉がボロくて少し隙間があるのが気になるけどまあ見つかりはしないだろう。


 タンスの中で足を畳んで横になる。狭いし硬いしで寝心地は最悪だけどめちゃくちゃ疲れてる今なら問題なく眠れる。

 ほら、少し横になっただけでもうウトウトと......




 夢だろうか。私が見える。


 何やらヒラヒラした変な服を着ている。いや、むしろこの服の方が自然な感じが......思考がまとまらない。


 やたらと人が多い場所を歩いているな。ガヤガヤと声が五月蝿い。見えてる私も苦しそうだ。


 そして人混みを歩いた後は大きな建物に入っていく。そこは私と同じ服をした人がいっぱいでみんな中が良さそうだ。でも私は1人らしい。寂しそうだ。こちらまで寂しくなる。


 それから何やらずっと座ってたり運動をしたりしてその建物を出る。何がしたかったんだ。


 今度は魔術で動いているのだろうか。動く箱に乗って森のような場所まで移動した。八層を思い出す光景だ。


 彼女、私は森の中を歩く。足に枝が引っかかって傷が出来るが意にも介せず進む。痛そー。


 進み続けてしばらくした後、急にピタリと歩みを止めた。その瞳は目の前の木を見上げている。そして彼女は縄を取り出した。


 その瞬間、光が溢れ始める。眩しくて何も見えない。


 しばらくしてから、光が弱まり始めて、私と、もう1人誰か見えるような気がドカーン!


 なんだうるさいな!せっかく夢を見ていたのに。いい夢ではなかったけど。私は目が覚めて瞼を上げる。


 クローゼットの扉の隙間から埃が舞っているのが見える。なんだなんだ。私はその隙間に目をあて部屋の中の様子を観察し始めた。


 主に埃は備え付けられていた暖炉の中から出ている。煙突から何かが落ちてきたのか?

 

 私は観察を続ける。暖炉から何かが這いずり出てきた。ひっと出そうになった声を抑える。


 そいつは赤い皮膚で四足歩行。牙と尻尾が生えていて、翼も携えている。


 ドラゴンだ!


 しかし、そのドラゴンはかなりの小ささだった。私の肩に乗るくらいのサイズだ。その姿は前会ったドラゴンと似ていたけどこんな小さくはなかっただろう。


 ......どうしようか。ヤツは明らかにモンスターだ無駄な戦闘は避けるべきだけど、休息も十分とれたしあまり無駄な時間を使いたくない。それにヤツが騒いで他のモンスターが集まってきても困る。


 よし、奇襲して一撃で決めよう。あの小ささなら倒せるだろう。私は拳を強く握った。

 

 この拳で一発KOだ。ノロノロと歩く小さなドラゴンをロックオ

ンしてクローゼットの扉を蹴破った。そのまま飛び出してドラゴンに殴りかかる。


「うおおおおおお!」


 叫び声をあげる。


「わあああああちょっと待て人間!」


 え、喋るの⁉︎想定外すぎる。

 流石に喋る生き物を殺すのは抵抗がある。あ、でも止まれない。


 私は飛び出した勢いのままドラゴンにぶつかった。

 

読んでいただきありがとうございます。

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