23話 異界より
その階段は少し昇ると踊り場がある。そこを90度曲がってまた昇り始めて3分もすればあっという間に7層に辿り着いた。
周囲を見てみてモンスターはいなかったので階段を昇り切って7層の地へ足をつける。
「えっもう着いたの?ここって8層の真上にあるんですよね」
ルナがそう口にする。当然の疑問だ。8層は天井まで100mはあり、7層はその上にある。つまり本来7層に着くまでに100m以上昇る必要があるのだ。
しかし、オレ達が実際に昇ったのは精々20m程度。辻間妻が合わない。しかしそれは
「この階段のせいだ」
オレはそう言って階段の表面をなぞる。
「この階段自体に魔力が通ってる。いわばこれも一種のアーティファクトなんだよ」
「はえ〜どんな仕組み何ですかね」
「さあな。アーティファクトに関しては魔術が用いられた物であるということ以外一切の事は分かっていない」
「まあそれはいいとして、まずはあの塔へ向かおう」
オレはすぐそばにある高い塔を指差した。この層の構造は把握しているが上から見ればクイーンスパイダーがどこにいるかやリビングデッド達がどう分布しているかも把握出来るかもしれない。
「じゃあモンスター来ないうちに急ぎましょう」
「ここはほんとに街って感じですね。打って変わって」
周囲を警戒しながら古びた街の中を進む。もしリビングデッドに見つかって叫ばれたら厄介なことになるので常に大通りは歩かずに建物の隙間を縫う。
「まあな。ダンジョンって言ったらこういった層が多い。8層みたいな自然溢れる場所はむしろ異端だよ。さ、着いたぞ」
歩き始めてすぐに塔の麓まで辿り着いた。木製の扉を開ける。その古びた扉は開ける時にギイと音を立てるのが心臓に悪かった。
「昔からある割に綺麗ですね」
塔の内部。螺旋の階段を昇りながらルナはそう呟いた。
「ダンジョンの建物は魔術をかけられていてかなり丈夫なんだ。例外もあるがな」
ルナがいた建物なんかは例外だ。ああいった目立たない場所は魔術がかかっていない場合が多い。というかさっきから説明ばっかしてる気がする。ガイドの気分再びだ。
そうこう言ってる間に塔を登り終えた。
「昇り終わったー!」
ルナがせいせいした感じで言う。先程も階段を昇ったばかりだったので飽き飽きだったのだろう。
「ここからこの層全部とは言わないが周辺の景色が見れる。ルナも見とけよ」
オレはそう言いながら自身も下の景色に目を落とす。クイーンスパイダーは見えない。リビングデッド達が周囲に散らばっているが右から回り込めば会敵せずに住みそうだ。
「広いですねー」
ルナはお気楽そうに呟いた。
ただ広いのはその通りだ。8層は木が茂っていて分かりづらかったが本来ダンジョンはどの層もかなりの広さを誇る。それこそ地上の街、都市に匹敵する程の広さだ。
「じゃあ確認は終わったから降りるか」
そうして降りようと階段に足をかけようとした時強烈な光が右側から放たれた。光は一瞬で収まり、続いてズシンという音が響く。そして極め付けにgyaaooooという恐らくはモンスターのものであろう声が、鼓膜をつん裂くほどの音量で鳴り渡った。音の方向を向くと土煙が上がっていた。
「な、何が起きてるの⁉︎」
ルナが困惑している。いや、ルナだけではなくオレも困惑している。冒険者をそれなりにやっているがこんなことは初めてだ。
頭の中であらゆる可能性を検証する。さっきの光は魔術によるものか?音は何かの衝撃によるものか?声はクイーンスパイダーのものか?しかしクイーンスパイダーが鳴くなんて、聞いたことも聴いたこともない。
ならば他のモンスターによるものか。だがこのそうにいるモンスターは「死神」ことクイーンスパイダーとリビングデッド(オレはこの存在をモンスターと思っていないが)だけだ。
じゃああの声はリビングデッドのもの?リビングデッドがあれほどの声量出すことがあるのか?そうだとしたらあの土埃は?光は?他の層のモンスターが降りてきた?いやしかしそんなことできるモンスターなんて検討が......。
悩んでいるとルナが一言喋った。
「あれって他の冒険者じゃないですか⁉︎」
虚を突かれた思いだった。あの光や音は魔術によるもので声は召喚獣のもの。どれも魔術を使えば実現可能。そう考えれば納得がいく。
冒険者がやった。その可能性はカナン達がここまで辿り着いてるわけないし他の冒険者もここまでくる物好きはそうそういないから無意識のうちに選択肢から外していたのだ。
そして、あれが他の冒険者によるものだったら......
「合流できれば一緒に帰還出来る......!」
「それなら......!」
そう。それが可能ならば生還がかなり現実的なものになる。正直2人だけで7層突破は厳しかった。
しかし問題がある。
「だがあまりにも危険すぎる!」
あんな派手に魔術を使えばリビングデッド達は当然クイーンスパイダーだって寄っていくだろう。だが合流するにはそこに向かうしかない。ハイリスクハイリターンというわけだ。
ルナは力はあるかもしれないが記憶を失っている以上判断能力などは素人同然だ。そんなルナがそこに向かうのはあまりにも危険......!
「......オレ達は無視して6層の入り口に、」
いや!言いかけて止める。
もしオレが1人で行動していたならば迷わずに現地に向かっていただろう。何故ならオレは自分を信じているからだ。カナン達がいたとしても同様だ。仲間を信じているからだ。
だが今オレはルナを信じていない選択をしようとしていたのだ......!仲間だと言ったのに、戦友だと言ったのにだ。仲間を信じない奴は屑だ。それが冒険者をやる上でのオレの矜持だ。
「いや、あそこに行こう......!危険だが問題ないな?チームメイト」
「うん!」
足手纏いじゃなくて仲間だもんな。
オレ達は決心し階段を駆け降りた。
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