21話 閑話−2
クロウドが8層に取り残されてから一夜が過ぎ、カナン達はダンジョンの入り口に来ていた。
「ダンジョンへの入場ですね。冒険者ライセンスの提示、また6層以降へ行かれるならランクがゴールド以上であることを証明出来るものの提出もお願いいたします」
「はいはい」
カナンはバッジとギルドで発行されたプラチナランクであることの示すランク証を受付にまとめて出す。ダルトとユークもそれに続く。
「確認しました。こちらは帰還時に返却致します。また帰還時には手荷物のチェックと魔力の検査をさせていただきますのでよろしくお願いします」
ダンジョンに続く門が開き、白く深い階段が姿を現した。その階段は第一層に続いている。
「二ヶ月帰還せずに消息が絶たれた場合は無帰還冒険者として扱わせていただきます。それではお気をつけて」
カナン達3人はその欲望渦巻く修羅へと続く階段へ踏み込んだ。
長い階段を踏む音だけが響く。カナン達はやや早足で進む。
「6層までは1週間で辿り着く。行けるわよね」
「愚問だね」
「ああ」
この階段は初めからあったものではなくダンジョンが発見されてから後天的に作られたものだ。その上定期的に補修もされているのでこれがあの死と隣り合わせのダンジョンに続いているとは思えないほど綺麗だ。
そんな階段を3人が降りていると前から他のパーティが下から登ってきていた。
「あ?カナンじゃねーか」
「......奇遇ね」
それはカナンとクロウドの兄弟子(姉弟子?)であるサンディだった。彼女は常にその小柄な体とは正反対に強気な姿勢で喧嘩っ早くカナンとはお世辞にも仲が良いとは言えなかった。
「お前らまだ攻略組やってんのか。そんなの命が幾つあっても足んねーぞ」
「あなたならそうでしょーね」
2人の間にピリピリとした空気が流れる。この2人は兄弟子弟弟子の関係というだけで別段因縁がある訳ではない。ただ何となく馬が合わなかったのだ。
「喧嘩しとる場合じゃないやろ」
ダルトがカナンを制止する。サンディの方も仲間に宥められていた。それで2人は冷静さを取り戻す。カナンはダルトの言う通り喧嘩してる場合ではないのだ。
「じゃ、私達急いでるから」
そう言ってカナンが先を急ごうとした時だった。
「......まあ攻略組すんなら急げよ」
「何の話?」
「近々よその国や地域から有力な魔術者や戦士を集めて大規模な攻略隊が組まれるらしい」
「な......同じ失敗を繰り返すつもり⁉︎」
カナンは数年前の事件を思い出していた。ギルドが有力な冒険者で大規模なチームを組みダンジョンの攻略を始め、結果半数が帰らぬ人となった事件を。
「......あんときは集めた奴らは強者と言ってもギルド内での話だ。今回は強さのレベルが違う。なんせ世界レベルで有数の猛者達を何百と集めるんだ。本気でダンジョンを踏破しちまうかもって話だぜ」
「......」
「そうなったら攻略組のお前らとしちゃ面白くないだろ。だから手柄横取りされたく無けりゃ精々必死こけよってことだ」
「そう、教えてくれてどうもありがと!でもそんな奴らに遅れは取らないから!」
カナンは悪態をつきながら礼を言う。サンディは仲が悪くとも世間一般で言う「イイ先輩」なのだ。もっともカナンはそう思っても口には出さないが。
「そういやクロウドはどうしたんだ。遂に死んだか?」
今度はサンディが悪態をつく。彼女はクロウドが死んだなど微塵も思っていない。
「ちょっとはぐれただけよ。これから迎えに行くの!何も問題なし!」
「はぐれたって......ダンジョンの中で?大ピンチじゃねーか」
サンディは困惑した。ダンジョンではぐれて置いてきてしまったということだろうか、流石にクロウド死んだか。などという考えがチラリと彼女の脳裏をよぎる。しかし、すぐにその考えを払拭するかのようにフッとつまらなさそうに鼻を鳴らし
「まあお前らならなんだかんだどうにかなるだろうよ」
そう言って彼女率いるパーティは階段を昇っていった。
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