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19話 カナリヤ地下迷宮第7層に関しての資料 1/2

 これはカナリヤ地下迷宮、通称「ダンジョン」が発見されてから3年が経過したころ。当時のある冒険者パーティの一団の生き残りが残した地下第7層に関しての記録である。

 

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 ギルドに所属する冒険者である私、グラウスはまもなく死に至るだろう。仲間達は全滅し唯一生き残った私も死んでしまう。これでは7層に関する情報を持つ者がいなくなってしまう。

 

 なので私が体験した全ての記録をここに残す。尚、この記録を書いている際の私は完全に外界との隔離を経っている状態である。

 

 第6層を人類で初めて突破した我々はこれまた人類に初めて第7層へ足を踏み入れることとなった。(6層を突破した方法に関しては別途の資料をギルドに提出済みなのでこれを確認してほしい)


 7層は人の家のような建築物が並ぶ街のような場所だった。その様相は同じく建築物で溢れる第1層と通ずるものがある。

 

 もっともこの7層の建物は1層の城や教会などの個性あふれるものではなく普通の民家などの平凡な物が殆どだったが。


 その7層へ踏み込み周囲にモンスターの姿が見えない事を確認した我々はまず8層への入り口を探すがてらこの層のマップを作成することにした。(このマップは途中までは記録していたが持ち帰ることは出来なかった)


 そう決めてからしばらく探索していたのだが私はある違和感に気がついた。この層はあまりにも静かだ。今までであれば歩いているとモンスターのうめき声や鳴き声がそこかしこから聞こえていたのだがこの層ではそれが全くなかったのだ。

 

 私はこの事実に気がついた時、恐怖と不安、そして冷や汗が出るようなある種の予感を覚えた。今にして思えばこれらの感覚に素直に従い帰還してれば良かったのだろう。しかしこの時の私にとってこれらの不安材料よりも新天地に対する探究心が大きく上回っていたのだ。私はこの感情を無視して探索を続行した。


 そうして探索を始めて3時間ほどが経過しようとしていた時、ソレと遭遇した。


 ソレを発見した時、ソレは私達に気がついていなかった。ただソレは何をするのでもなくただ立っていた。そのあまりに無骨な仕草は生き物のものとは思えなかった。


 私達はソレを見てしばらく動けなくなってしまった。魔術などではない。その姿の衝撃に動揺してしまったのだ。


 ソレは、腐ったような緑色で、皮膚が爛れていて、人間の姿をしていた。


 あれは人間なのか、モンスターなのか。


 人間の姿をしたモンスターなど聞いたことがない。そのあまりにも常識とかけ離れた異形に対して我々は、一度引くことを決めた。


 パーティのメンバー4人で身長に音を立てないように後ずさる。万が一にも対峙したくない。それほどの不気味さをソレは孕んでいのだ。


 そうして慎重に撤退しているとパーティの一員である学者が道の窪みにつまづいて派手に転んだ。ドンっという音が響く。転んだ学者も、私含む他のメンバーも、恐る恐るソレの方を振り向く。ソレはこちらを見ていた。

 

 学者は立ち上がり、私達は走り出した。後ろからは低い唸り声の

ような叫び声の様な音が聞こえる。

 

 そしてその声が消えた瞬間、その声に反応したのだろう。建物の中や脇から多種多様な人間の姿をしたソレが大量に出現したのだ。その数は十や二十では済まなかったろう。


 叫ぶ余裕さえなかった。ただ一心不乱にソレらがいない方へ仲間と走る。こんな量に勝てるはずがない。ただ恐怖に駆られて走った。


 ふと後ろを見ると、学者がソレに群がられているのが目に入った。学者と目があう。心臓が一瞬縮まって、脈打つのが早くなった。

 ......私は再び前を向いて、走った。

 


 走って走って走って。私達は名についた建物に飛び込んだ。そこは窓がなく扉さえ壊されなければソレは入ってこれない。


 私達は扉に物質強化の魔術をかけてへたり込んだ。しかしそこに学者の姿はない。扉はドンドンと叩かれ続け軋んでいる。


 この扉は5分は持つ。その隙に転送石で帰ろう。私はそう提案した。すると同じくパーティの一員である魔法使いから仲間である学者を置いていくのかという批判を浴びせられた。当然の意見であり批判だろう。仲間を見捨てるなど屑のすることだ。


 だが私は屑になってでも生きて帰りたかった。それに学者はもう死んでいるだろうというあまり冷たい考えもあった。


 私は熱弁した。学者は冒険者として生きる以上こうなることは覚悟していたはずだ。私達にはこの7層の情報を地上に伝える義務がある。これで私達が死んでしまうのは学者の本意ではない。私は一見筋が通っているような形だけのスピーチをした。こんなこと思ってもいない。ただの保身のためだけの弁論だ。

 

 その異形の姿に、目の前の死に、私は、完全に恐怖に屈してしまっていたのだ。


 こうした私のみっともなく情けない熱弁に納得したのか諦めたのか2人はこのまま帰ることを承諾した。私は今仲間を1人失ったばかりだというのに安堵感で一杯だった。


 そしてもう1人の仲間である弓使いが転送石を取り出し魔力を込めたその時だった。

 唐突に天井が崩れた。否、斬れた。


 降ってきた天井の残骸に転送石が弓使いごと潰された。


 先程までの安堵感が一瞬にして吹き飛び、代わりに恐怖と困惑が訪れる。そんな私を巨大な影が覆った。


 上を見てみると斬れた天井の隙間から、死神が覗いていた。

 

読んでいただきありがとうございます

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