15話 釣りフィッシング 1/2
「よし、着いたぞ」
あれから少し歩いて、クロウド君の言っていた沼に辿り着いた。巨木に囲まれた、泥で濁った湖はいかにも沼って感じだ。
「ここに食べ物があるんですよね。ザリガニとか?」
正直こんなところにある食料ってザリガニくらいしか想像つかない。
「......いや、魚だよ」
「へえ、魚」
こんな濁った水に住んでるもんなんだ。いや、むしろ魚って濁ってる方が生きやすいか。
しかし、さっきから食べ物について聞いても即答してくれない。含みがある。テンション低い感じだよね。どうしたんだろうか。
「魚、どうやって獲るんですか?」
そう聞くとクロウド君はカバンをゴソゴソと漁り、丸い果物のようなものを取り出した。ていうかそれって......
「それさっきのモンスターのコアじゃないですか⁉︎」
「そうだ。こいつを使って釣りをする」
「えっ?」
クロウド君は手に持ったコアをナイフで両断した。その断面は薄いクリーム色でみずみずしい。林檎みたいで美味しそうだ。
「言っとくがこれは毒あるからな」
「あ、そうですよね」
え、心読まれた?いや、私がそれだけ物欲しそうな顔をしていたということだろうか。恥ずかしい。
そんな私を尻目にクロウド君は釣り竿を作り始めたようだ。近くの木から手頃な枝を切り取って、ツタを回収して、それを枝に巻きつけて、そのツタの先端に植物の鋭い棘のようなものをつけて。あっという間に釣り竿を2本完成させてしまった。仕事がはやい!
「後はこれに細かく切ったウッタクルのコアを刺して......ほらっ」
完成した釣り竿がこちらに投げられる。私はそれをキャッチして少し曲げてみる。それは結構な硬さでなかなか折れそうになかった。
「最初は自分の爪を餌に釣りしようと思ってたから、ウッタクルが出てきてくれて良かったかもな」
「怖っ」
地味に怖いこと言わないでほしい。モンスターが出てきてくれて本当に良かった。自分で爪剥いでそれで釣りする姿って軽くホラーだ。
まあこれで釣りをすればようやく食事が......待てよ?ある疑問が頭の中に去来する。
「これって釣りしてたらモンスターに襲われるんじゃないですか?」
釣りってのは短時間で終わるものじゃないことくらいわたしにも分かる。当然腰を据えてそれなりの時間を釣りに費やす必要があるだろう。そんな呑気なことをしていればモンスターに目をつけれてしまうのではないだろうか。
「あーそれは完全には解決出来ないんだけどな。やれることだけでもやるから」
そう言いながら彼はさっき余分に回収していた木の枝を沼のそばに何本か刺し始めた。
そうして等間隔に刺し終えると手をかざして何やらブツブツと呟き始めた。呪文だろうか。なんて言ってるかはよく聞こえない。そうして数秒ほどしてクロウド君は静かになり、地面が淡く光り始めた。その光に呼応する様に枝がぐんぐんと伸び、葉を広げ、あっという間に人が2人入れるほどの茂みが出来上がったのだ。
「この茂みの中からなら目立たずに釣りできるだろ」
もちろん見つかる時は見つかるだろうけどな。と、クロウド君は言って口端で笑った。
「すごい......」
魔術とはここまで便利なものなのか。記憶を失う前の自分は使えたのだろうか。気になる。
そうして2人で仲良く茂みの中に入りそこから釣りを始めることにしたのだ。
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