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14話 閑話−1

「ユークお前マジで言っとんのか......」

 

 ギルドの隣にある冒険者御用達の酒場、そこでダルトスは焼いた牛の肉を刺したフォークをポロリと机に落とした。その目は丸く開いている。


「うん、大マジだよ」


 ユークはそう言ってグラタンを口に運んだ。


「この方法なら今のパーティを崩さずに6層を踏破出来るはずだ」


「それは机上論や。上手くいくとは思えん......!」


「ほかに方法がないじゃないか。水上歩行持ちはいないし居たとしても安易にパーティに入れるのは危険なんてこと分かりきってるだろ」


 2人は食べることも忘れて口論をを始める。共に現状に焦っていたのだ。そんな2人を見てカナンはスープを掬うスプーンの動きを止め、口を開いた。


「その方法でいいよ。行きましょうよ」


「えっ」


 2人は喋るのをやめて一斉にカナンの顔を見る。


「お、おいおい、いいんか?結構危険な賭けやと思うけど......」


「うん、提案した僕が言うのもなんだけどもう少し慎重に決めた方が......」


 口論をやめ冷静さを取り戻した2人は即決したカナンをなだめる。彼らにはカナンは先程までの自分達と同じく酷く焦り冷静さを欠いているように見えていた。しかし、実際にはカナンはこの場の誰よりも冷静だった。


 長く連れ添った仲間の窮地。救助は難しい現状。厳しい現実にいつものカナンだったら動揺......!焦り倒していただろう。


 だが、カナンの心内にあるものはそんな動揺や焦りとは遠く離れたものだった。


「自分で言ってたじゃない。他に方法ないでしょ」


「それはそうだけど、」


「異論ないわね。あんま時間ないんだからさっさと食べていきましょ」


 カナンはそう言ってガツガツと一瞬でスープを飲み干し、隣に置いてあったパンと二口で頬張った。


「......」


 ユークとダルトスは共に顔を見合わせる。あまりのカナンの思い切りの良さに動揺していた。


「それに......」


「?」


「案外自分で五層辺りまで辿り着いてるかもしれないし。いや、クロウドならそのくらいやるわよ」


 食べ終わったカナンは急かすように立ち上がった。


「そもそもこんなことでつまづいてる場合じゃないでしょ。私たちは」


 そう言ってお会計の方へ歩き出す。それを見た2人は急いで料理を食べ始めた。


「......うん」


「そうだな!」


 カナンはこの迷宮都市に来た時のことを思い返す。初めてクロウド共にダンジョンに挑んでボロボロになって生還したこと。装備どころかその日の食料すら買えなくて2人で日雇いのアルバイトをしたこと。今となっては青くも大切な思い出だ。


 彼女の胸の内にあるものはただ単純な決意。


 絶対に助け出す。だって彼はこんなことで死んでいい人間じゃないのだ。


 カナンは胸の前で静かに拳を握った。

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