三章─第十節・第十一節 世界の歴史とその先にあるもの
第十節 技術発展の歴史
第十節では、『楽園のイミテリス』の世界に存在する主要な技術が、どのように生まれ、発展していったのかを整理します。
本作に登場する技術は、それぞれ独立して存在しているわけではありません。
人類が生き残るために生み出した技術が次の技術の基礎となり、その技術がさらに別の研究へ利用されていきます。
その積み重ねの先に、レプリカ、コア、イデア、機装、霊装、そして楽園計画が存在します。
ここでは、それらがどのような順序で発展していったのかを、1996年から7996年までの歴史に沿って見ていきます。
一 1996年――人類を救うための技術
1996年、人類はウイルスによる世界規模の危機に直面します。
当時の研究は、もともと人間を救うことを目的としていました。
オリジナルイヴも、生体情報と培養技術を利用した義肢の研究など、人間の身体を補うための技術を研究していました。
しかし、ウイルスによって世界の状況が急激に変化したことで、研究の目的そのものが変わっていきます。
失われた臓器や四肢を補うための技術は、人間の身体そのものを再現するための技術へと発展していきました。
これが、後のレプリカ技術へと繋がっていきます。
また、人間の脳から発生する大量の電気信号を利用する研究も進められていました。
この研究は、人間の意識や生体活動を機械へ接続するための技術へと発展し、後のコア技術の基礎となります。
つまり、後の世界を支える主要な技術の多くは、もともと人間を救うために始まった研究を起点としています。
二 1997年――人類の機械化とレプリカ
ウイルスによって人間の身体を維持することが困難になると、人類は生存方法そのものを変更する必要に迫られます。
その結果として、人間の脳をコアへ移し、機械の身体によって生存する方法が選択されました。
これが、人類の機械化です。
コアには、人間の脳が持つ電気信号を利用する技術が組み込まれています。
人間の意識や生体活動をコアへ移すことで、肉体を失っても人間としての活動を継続できるようになりました。
しかし、機械化された人間には新たな問題が生じます。
機械の身体では、人間が本来持っていた生物としての身体機能を維持できません。
そこで、人間の身体を再現するために研究されていた生体情報技術が利用され、レプリカが作られるようになります。
レプリカは、人間の身体を模した人工的な身体として、人類の生活を支えるために作られました。
人類が長期間のスリープへ移行する際には、レプリカが地上に残され、環境の維持や人類の生活基盤の管理を担うことになります。
三 1997年以降――監視者の誕生
人類がスリープへ移行した後、その管理を担うために12体の特殊なレプリカが作られました。
後に監視者と呼ばれる存在です。
監視者には通常のレプリカとは異なり、完全な記憶を保持するための仕組みが与えられていました。
また、寿命の問題を解決するため、個体ごとの製造時期をずらし、次の個体へ記憶を引き継ぐ仕組みが構築されました。
こうして監視者たちは、人類が眠り続ける長い時間の中で、研究施設と人類が残した技術を管理する存在となります。
当初の目的は、あくまで人類の帰還を支えることでした。
しかし、6000年近い時間の中で、監視者たち自身の存在にも変化が生じていきます。
四 人類の眠りと研究技術の継承
人類が眠りについている間、12の研究施設では、それぞれ異なる分野の研究が継続されました。
第1~第3研究所では、主にウイルスやコアに関する研究が行われました。
第4~第7研究所では、レプリカ、生体情報、楽園計画に関する研究が行われました。
第8~第12研究所では、既存技術を利用した研究開発が行われました。
それぞれの研究施設は完全に独立していたわけではありません。
演算装置や管理装置を通じて情報を共有し、それぞれの研究成果を別の研究分野へ利用していました。
そのため、後の技術は一つの研究から突然生まれたものではなく、複数の研究分野が長い時間をかけて結びつくことで成立していきます。
五 レプリカ技術の発展
レプリカ技術は、オリジナルイヴが研究していた生体情報と培養技術を基礎として発展していきました。
人間の身体を再現するための研究は、やがて人工的な身体そのものを製造する技術へと変化します。
しかし、レプリカには生体情報の欠損という問題が残されていました。
製造時点でDNAの一部が欠落しているため、通常のレプリカは長期間生存することができません。
この問題は、6000年にわたる研究を経ても完全には解決されませんでした。
一方で、人格や記憶を擬似的に構築する技術は発展していきます。
製造されたレプリカに生活情報や人間関係を与えることで、あたかも人間であるように生活するための環境を作り出すことが可能になりました。
こうしてレプリカは、人間の身体だけでなく、人間らしい生活そのものを再現する存在へと発展していきます。
六 コア技術の発展
コア技術は、人間の脳が発生させる電気信号を利用する研究から発展しました。
人間の脳と機械を接続するために生まれたコアは、やがて人間の機械化を成立させる中心的な技術となります。
さらに、コアに蓄積される電気信号は、単なる生命維持や意識の接続だけではなく、エネルギーとして利用できることが分かっていきます。
この性質が、後のコアエネルギー技術へと繋がります。
そしてコア技術は、人間の機械化だけで終わることなく、イデアの解析や兵器開発にも利用されるようになります。
七 イデア研究
人類が機械化した後、機械化された人類は地下の奥深くにて長期スリープ状態となりました。
長期間のスリープを経た彼らは、肉体を機械へ置き換えた人類として存続していましたが、長い時間の中で精神崩壊が生じ、後にイデアと呼ばれる存在となります。
イデアの研究では、人間のコアと機械化された肉体の構造が解析されました。
当初は第7研究所を中心に研究が行われ、その後、第四研究所へ研究が移されます。
イデアの捕獲と解体解析が繰り返されることで、コアエネルギーや機械化された肉体の構造についての理解が進んでいきました。
この研究成果は、やがて兵器開発へ利用されることになります。
八 機装の開発
イデア研究とコア技術が結びついたことで、イデアのコアと肉体の一部を利用した兵器の研究が始まりました。
イデアの肉体は、長期間のスリープに耐えるために高い耐久性を持っています。
その構造とコアエネルギーを兵器へ転用することで、通常の兵器では得られない出力を引き出すことが可能になりました。
こうして機装が開発されます。
機装の性能は、単純な兵器としての性能だけでは決まりません。
使用者と機装に含まれる生体情報の適合性が重要となり、それぞれの使用者によって引き出せる性能が変化します。
機装の形状にも、元となったイデアが持っていた才能や適性、強い執着などが反映されます。
機装は、イデアを兵器へ変換したものではなく、人間だった頃の性質まで含めて利用する技術として成立していきました。
7596年には、イデアのコアを利用した機装が開発されます。
九 霊装の開発
機装の研究が進む一方で、より特殊な兵器の開発も進められました。
それが霊装です。
霊装は、コア技術とイデア研究を基礎として生み出された特殊兵器であり、通常の機装とは異なる構造と高い出力を持っています。
その開発には初期のレプリカイヴも関わっており、その後、監視者たちによって技術が完成されました。
霊装には、過去のイヴのコアや肉体の一部が利用されており、次のイヴへ移植できるよう研究が進められました。
そのため、霊装は単なる兵器ではなく、過去のイヴの存在そのものを利用した技術でもあります。
7643年には霊装の開発が開始され、後のイヴ専用兵器へと発展していきます。
また、7基の霊装には、終末を告げる7つのラッパという聖書的な意匠が込められています。
十 ウイルス研究の停滞
一方で、すべての技術が同じように発展したわけではありません。
ウイルス研究は、第1~第3研究所を中心として継続されていました。
しかし、監視者たちは自分たちがレプリカであることから、ウイルスが自身に発症する可能性を低く考えていました。
そのため、ウイルス研究は次第に優先度を失い、十分な研究が行われなくなります。
オリジナルイヴが生前に察知していた、ウイルスが将来的に変異する可能性についても、監視者たちは把握していませんでした。
この判断は、後の世界に大きな影響を与えることになります。
ウイルスは完全に克服されたわけではなく、長い時間を経て再び世界へ影響を及ぼすことになります。
十一 楽園計画の発見
3029年、監視者たちは第四研究所に封じられていた楽園計画を発見します。
この計画には、人間へ至るための技術的な手法が残されていました。
監視者たちはその内容を解析し、3573年頃には「人間になりたい」という願望を強く持つようになります。
そして3576年、楽園計画の解析を基礎として、アダム計画とイヴ計画が作られます。
ここから、これまで別々に発展してきたレプリカ技術、生体情報技術、コア技術などが、一つの目的へ向けて組み合わされていきます。
十二 アダム計画・イヴ計画への接続
アダム計画では、大量の生体情報を利用して新たな人類の生体情報を作り出す研究が行われました。
イヴ計画では、その生体情報を受け入れ、安定させるための特殊なレプリカとしてイヴが作られました。
監視者たちは、これらを自分たちが人間になるための計画として研究していきます。
しかし、実際にはこれらの技術の基礎となる構造そのものが、オリジナルイヴによって残されていました。
監視者たちが長い時間をかけて発展させた技術の多くは、完全な新技術ではありません。
過去に残された技術を解析し、組み合わせ、発展させたものです。
その結果として、カインとイヴを繰り返し実験するための技術体系が形成されていきました。
十三 長期実験と研究施設の喪失
アダム計画とイヴ計画は、短期間で完成するものではありませんでした。
カインには大量の生体情報を蓄積する能力と、戦闘に耐えられる身体能力の両方が必要でした。
イヴにも、生体情報を受け入れる母体としての構造と、レプリカとしての安定性を両立させる必要がありました。
そのため、カインとイヴは何度も製造され、実験が繰り返されます。
同時期に、世界ではイデアとの対立が激化していきます。
人類側はイデアとの戦闘を続けながら研究を継続していましたが、各研究施設は次第に失われていきます。
7784年から7872年にかけて研究施設が失われ、最終的には第四研究所が人類側の主要な拠点として残されます。
第四研究所は後にアストランと呼ばれる防衛都市へと変化していきます。
十四 アストランと最後の研究拠点
アストランは、かつてオリジナルイヴが所属していた生体レプリカ第四研究所を基礎としています。
他の研究施設が失われたことで、第四研究所は楽園計画、レプリカ、生体情報、アダム計画、イヴ計画など、多くの研究を集約する場所となりました。
さらに、イデアとの戦闘に対応するための防衛機能も強化されていきます。
こうして第四研究所は、かつての研究施設という役割を越え、人類にとって最後の楽園としての性質を持つようになります。
物語序盤で描かれる「最後の楽園『アストラン』」は、この長い技術発展の終着点に位置しています。
十五 23回目の実験
7961年、23回目の楽園計画実験が行われます。
それまでの長い研究によって、カインとイヴは完成形へと近づいていました。
しかし、それでもまだ完全な人間には到達していませんでした。
繰り返された実験は、単純な失敗の繰り返しではありません。
それぞれの実験によって、生体情報の蓄積、身体の安定性、感情、関係性、戦闘能力などについてのデータが積み重ねられ、次の実験へ利用されていきました。
こうして、6000年にわたる技術の蓄積は、最終的な24回目の実験へと引き継がれていきます。
十六 7996年――技術の終着点
7996年、24回目の実験が開始されます。
この時点で、レプリカ技術、コア技術、イデア研究、機装、霊装、生体情報研究、アダム計画、イヴ計画など、これまで積み重ねられてきた技術が一つの計画へ集約されています。
カインとイヴは、それまでの実験によって完成へ近づいていました。
そして、セントラルでの最後の戦闘を経てアダム計画が完成し、楽園計画 TYPE EDEN が起動します。
イヴもまた、それまでに取り込んでいたオリジナルイヴの生体情報によって人間へ近づき、TYPE EDENによる最終段階へ進みます。
最終的に、クラス5となったオリジナルイヴが自身の記憶と生体情報をイヴへ与えることで、イヴは人間として完成します。
こうして、1996年に人間を救うために始まった技術は、6000年という時間を経て、カインとイヴを人間へ至らせるための技術として終着点へ到達します。
十七 6000年の技術史
『楽園のイミテリス』に登場する技術は、一つひとつを見るだけでは別々のものに見えます。
レプリカは人間の身体を再現するために生まれました。
コアは人間の意識と機械を接続するために生まれました。
機械化は人類がウイルスから生き残るために選択されました。
イデア研究は機械化された人類を理解するために行われ、その成果が機装や霊装へ利用されました。
そして、生体情報、レプリカ、コア、イデア研究など、長い時間をかけて蓄積された技術は、楽園計画の解析を通じてアダム計画とイヴ計画へ組み込まれていきます。
それぞれの技術には、それぞれの時代における目的がありました。
しかし、それらは完全に独立していたわけではありません。
過去の技術が次の技術の基礎となり、その技術がさらに別の研究へ利用される。
その積み重ねが6000年という時間を形作っています。
そして、その長い技術史の先に存在していたのが、カインとイヴでした。
1996年に人間を救うために始まった研究は、最後には二人を人間にするための技術へと繋がっていきます。
その意味で、6000年という時間は単なる経過時間ではありません。
人類が残した技術と、オリジナルイヴが残した願いが、時代を越えて積み重なった時間そのものだったのです。
第十一節 世界を構成する技術の関係
ここまでの節では、生体情報、コア、ウイルス、レプリカ、イデア、機装、霊装、研究施設、そしてアダム計画・イヴ計画について、それぞれの構造と歴史を説明してきました。
しかし、これらは別々に存在していた技術ではありません。
一つの技術から次の技術が生まれ、そこで得られた知識が別の研究へ利用され、その研究結果がさらに新しい技術へと繋がっています。
その関係を辿っていくと、『楽園のイミテリス』の世界を構成している技術は、一つの大きな繋がりとして見ることができます。
一 すべての始まり
最も根に近い場所にあるのは、人間です。
1996年、ウイルスによって人類の存続そのものが脅かされたことで、人間は自らの身体を維持するための技術を必要としました。
生体情報の研究、培養技術、義肢技術、脳と機械を接続する研究。
それぞれはもともと別々の目的を持っていましたが、人類が生き残るための必要性によって結びついていきます。
その結果として、レプリカとコアが生まれました。
レプリカは人間の身体を再現する技術として。
コアは人間の意識や生体活動を機械へ接続する技術として。
そして、その二つをさらに発展させることで、人間そのものを機械へ移すことが可能になります。
人類の機械化は、そこから生まれた技術です。
二 人間からレプリカへ
レプリカは、人間を再現するために生まれた存在です。
しかし、レプリカは完全な人間ではありません。
身体は人間に似ていても、生体情報には欠損があり、寿命にも限界があります。
人格や記憶も、人間と同じように生まれながら形成されたものではありません。
それでもレプリカは、人間に近づくための技術として発展していきました。
身体を作る技術。
記憶や人格を擬似的に構築する技術。
生体情報を扱う技術。
これらは後に、カインとイヴを人間へ近づけるための基礎として利用されることになります。
つまり、レプリカという存在そのものが、後の楽園計画へ繋がる技術の土台になっていました。
三 コアからイデアへ
コア技術は、人間の脳を機械の身体へ接続するために発展しました。
しかし、人間の機械化が進んだことで、コアは単なる生命維持装置ではなくなります。
コアには人間の意識や記憶、生体活動に関する情報が存在します。
その構造を調べることは、人間そのものを調べることとほぼ同じ意味を持っていました。
やがて機械化された人類であるイデアが研究対象となり、コアと機械化された肉体についての研究が進みます。
そこで得られた知識が、さらに別の技術へ利用されていきます。
四 イデアから機装へ
イデアの研究によって得られた知識は、兵器技術へ転用されました。
イデアのコアが持つエネルギー。
長期間の機械化に耐えた肉体。
そして、人間だった頃の生体情報。
それらを組み合わせることで、機装が成立します。
機装は、イデアを単純に兵器へ変えたものではありません。
使用者との生体情報の適合性や、元となった人間の才能、適性、執着などが、機装の性能や形状にまで影響します。
つまり機装には、コアだけではなく、かつてそこに存在していた人間の情報まで利用されています。
人間の身体を再現するために生まれた技術が、やがて人間だった存在を兵器として利用する技術へ変化していったのです。
五 機装から霊装へ
機装の研究が進むと、さらに特殊な兵器が必要とされるようになります。
そこで生まれたのが霊装です。
霊装には、過去のイヴのコアや肉体の一部が利用されています。
つまり霊装もまた、過去の人間やレプリカの生体情報を次の存在へ受け渡す技術の延長にあります。
ただし、霊装の場合は単純な生体情報だけではありません。
そこには、過去のイヴたちが残した意識や感情の痕跡が残されています。
そのため霊装は、過去の存在を完全に消費するのではなく、その残滓を次のイヴへ繋ぐ技術でもあります。
レプリカを作る技術。
コアを利用する技術。
イデアを解析する技術。
それらが積み重なった先に、霊装が存在しています。
六 すべての技術が生体情報へ集約される
ここまでの技術には、一つの共通点があります。
それは、生体情報を扱っていることです。
レプリカは、人間の生体情報を利用して身体を作ります。
コアには、人間の脳に由来する情報が存在します。
イデアは、人間の生体情報を維持したまま機械化された存在です。
機装は、イデアのコアと肉体を利用します。
霊装は、過去のイヴのコアや肉体を利用します。
それぞれは異なる技術に見えますが、根本には「人間とは何かを生体情報から再現する」という共通した研究があります。
そして、その研究の行き着く先に存在するのが、楽園計画です。
七 楽園計画がすべてを結び直す
3029年、監視者が封じられていた楽園計画を発見したことで、それまで蓄積されていた技術が新しい方向へ結びついていきます。
監視者は、楽園計画に残されていた情報を解析しました。
そして、そこから「人間になりたい」という願いを抱きます。
その願いを実現するために作られたのが、アダム計画とイヴ計画です。
しかし、この二つの計画は、それまで存在していた技術から突然生まれたものではありません。
レプリカの身体。
生体情報の解析。
コアに蓄積された人間の情報。
イデアから得られた知識。
そして長い時間をかけて蓄積された研究成果。
それらすべてが、アダム計画とイヴ計画を成立させるための基礎になっています。
八 アダム計画とイヴ計画
監視者にとって、アダム計画とイヴ計画は新しい人類を生み出すための計画でした。
アダム計画によって新たな人間の生体情報を作り、イヴ計画によってそれを安定させる。
そして、その細胞から自分たちの記憶と意識を持った新しい身体を作る。
それが監視者たちの考えていた「人間になる」という方法でした。
しかし、その構造を作ったオリジナルイヴの目的は異なります。
オリジナルイヴが望んでいたのは、新しい人類ではありません。
カインとイヴの二人を人間にすることでした。
そのために、二人が必要になる構造そのものが作られました。
先に二人を人間にするための方法があり、その方法を成立させるためにアダム計画とイヴ計画が必要になるよう設計されていたのです。
監視者は、その構造を読み解きながら研究を続けました。
しかし、彼らが見ていたものと、オリジナルイヴが本当に望んでいたものは同じではありませんでした。
九 偽物から本物へ
ここで、世界を構成してきた技術の意味が一つに繋がります。
レプリカは、人間を再現した存在です。
イデアは、人間の身体を機械へ置き換えた存在です。
機装と霊装は、人間だった存在の生体情報を利用した兵器です。
監視者は、偽物である自分たちを本物に変えるため、新たな身体を作ろうとしました。
しかし、その方法もまた、別の偽物を作り出すものでした。
完全な人間を作ろうとするほど、そこには「本物とは何か」という問題が残ります。
生体情報が人間と同じなら、それは人間なのか。
記憶が同じなら、それは同じ人間なのか。
意識が同じなら、それは本物なのか。
この世界で積み重ねられてきた技術は、その問いに対して一つの答えを直接示すものではありません。
ただ、すべての存在が「欠けているもの」を抱え、その欠けた部分を埋めようとしてきました。
十 技術が繋いだもの
レプリカは完全ではありませんでした。
イデアもまた、人間としての身体を失っています。
監視者も、自分たちが偽物であることから逃れることができませんでした。
カインとイヴもまた、最初から完全な人間として存在していたわけではありません。
しかし、彼らが積み重ねてきたものは、単なる技術情報だけではありませんでした。
記憶。
経験。
関係。
感情。
そして、何度も繰り返された出会いと別れ。
それらは、生体情報だけでは説明できないものとして二人の中に積み重なっていきます。
その結果として、最後に二人が手にしたものは、単純な技術によって作られた「人間」という状態だけではありませんでした。
カインとイヴは、それまで自分たちを拘束していた計画や役割を越え、一人の人間として互いを選びました。
十一 世界の中心にあったもの
6000年という時間を振り返ると、世界には非常に多くの技術が存在していたことが分かります。
ウイルス。
生体情報。
レプリカ。
コア。
機械化。
イデア。
機装。
霊装。
研究施設。
監視者。
楽園計画。
アダム計画。
イヴ計画。
それぞれには異なる目的があり、異なる時代に生まれ、異なる人々によって利用されてきました。
しかし、それらを一つの流れとして辿っていくと、すべてが完全に独立していたわけではないことが分かります。
一つの研究が次の研究を生み、その成果が別の技術へ受け渡される。
失われた技術が後の時代に再発見され、過去の研究が新しい目的のために利用される。
そして、その積み重ねが最終的に一つの計画へ集約される。
それが楽園計画でした。
けれども、楽園計画そのものが最後に残したものは、新しい人類でも、完全なレプリカでもありません。
最後に残ったのは、カインとイヴという二人の人間でした。
世界を構成していた数え切れないほどの技術と、6000年にわたる歴史。
そのすべてを辿った先に存在していたのは、二人が互いを選び、二人だけの楽園へたどり着くという、最も小さな答えでした。
この世界に存在する技術は、それぞれが独立した枝ではありません。
一つの根から生まれたものが幹となり、そこから枝分かれし、別の枝と繋がりながら、長い時間をかけて一つの形を作っています。
そして、その先に最後の実が実りました。
それが、カインとイヴです。




