設定資料 三章─第六節〜第八節
第六節 機装
機装とは、イデアのコアと、その肉体の一部を利用して作られた兵器です。
人類が機械化した際に生まれたコアには、膨大な電気信号を利用するためのエネルギーが蓄積されています。
機装は、そのコアと肉体が持つ性質を兵器として利用することで、通常の兵器では得られない出力を引き出します。
機装の開発が本格的に始まったのは7596年です。
当時、人類はイデアとの戦闘を繰り返しており、イデアの持つコアエネルギーと機械化された肉体の性質を兵器へ転用する研究が進められていました。
その研究によって完成したのが、現在の機装です。
・適合率
機装には、それぞれ使用者との適合率が設定されています。
適合率とは、機装に使用されているコアや肉体に含まれる生体情報と、使用者の生体情報がどの程度適合しているかを示す数値です。
生体情報の類似性が高いほど、コアから引き出せるエネルギーを効率よく利用できます。
反対に、適合率が低い場合にはコアや肉体から拒絶反応が発生し、十分なエネルギーを引き出すことができません。
そのため、機装は単純に強力なコアを使用すれば性能が上がるわけではありません。
使用者と機装の相性そのものが、性能を左右します。
なお、機装には使用者への拒絶反応が直接伝わらないよう、安全機構が組み込まれています。
カインが初めて機装を使用した際の適合率は21%でした。
この数値は高いとは言えず、彼が機装を十分に扱えない原因の一つとなっています。
・機装の形状
機装は、使用されているイデアのコアや肉体を単純に兵器へ加工したものではありません。
その形状には、機装の基となったイデアが機械化する以前に持っていた才能や適性、あるいは強い執着などが反映されます。
剣や銃器など、機装ごとに異なる形状を持つのはそのためです。
元となった人間が特定の武器や技術に優れていた場合、その能力を最も効率よく発揮できる形状へと変化します。
また、本人が強く執着していたものが、機装の形状として残る場合もあります。
これは単なる外見上の特徴ではありません。
コアが持つエネルギーを効率よく引き出すためには、元となった生体情報に適した形状を維持する必要があります。
そのため、機装は使用されているコアや肉体だけでなく、そこに残された人間の性質そのものを兵器として利用しています。
機装の形状は、かつて人間だった存在が残した才能や執着の一部でもあります。
第七節 霊装
霊装は、機装を基礎として発展した特殊兵器です。
機装がイデアのコアと肉体を利用して作られるのに対し、霊装はより特殊な構造を持ち、通常の機装を大きく上回る出力と機能を備えています。
霊装の開発が始まったのは、イデアが目覚める約50年前です。
開発には監視者とレプリカイヴが関わっており、初期段階ではレプリカイヴも研究開発に参加していました。
当時のレプリカイヴは、まだ監視者たちに対して強い敵意を抱いておらず、霊装の基礎となる技術は両者の共同研究によって作られました。
しかし、初期段階で完成した霊装は、期待されたほどの性能を発揮しませんでした。
そこで監視者たちは、これまでの実験で廃棄されたイヴの存在に着目します。
過去のイヴは現在のイヴと非常に近い生体情報を持っているため、そこから作られたコアを使用することで、極めて高い適合率を実現できることが判明しました。
以降、霊装には過去の実験で廃棄されたイヴのコアと肉体の一部が使用されるようになります。
ただし、その事実は現在のイヴには知らされていません。
霊装に使用する際には、過去のイヴの記憶が取り出され、次のレプリカイヴへと移されます。
そのため、霊装にはかつてのイヴの意識や人格が完全な形で残っているわけではありません。
記憶を失った意識の残滓だけが残り、それは自分が何者なのかを認識することもできません。
霊装を使用した際にイヴへ流れ込む侵食は、この残された意識の残滓によるものです。
記憶を失った存在は、自分自身に向けて「殺人者」「死ね」などの憎悪を繰り返し続けます。
その声はイヴの意識へと流れ込み、激しい頭痛や精神的な負荷として現れます。
霊装は高い性能を持つ一方で、その力を使用するほどイヴ自身への負担も大きくなります。
また、霊装はイヴ以外の存在には使用できません。
通常のレプリカが使用した場合、その出力に耐えることができず、身体そのものが破壊されます。
霊装は全部で7基存在します。
霊装一覧
【モードA アクティナ・ガンマ】
アクティナ・ガンマは、6基の浮遊砲台を展開する霊装です。
砲台はイヴの思考と連動しており、対象を自動的に捕捉して攻撃します。
高い命中精度と静音性を持つため、潜入や複数のイデアを確実に排除する場面に適しています。
一方で、攻撃力や射程、連射性能には制限があります。
霊装の中では侵食も比較的軽く、使用時には頭痛などの症状が現れるものの、長時間の使用にもある程度耐えられます。
【モードB ネロ&ピュール】
ネロ&ピュールは、イヴの両腕を覆うように装着される2挺の銃器型霊装です。
攻撃力、連射性能、機動性のバランスに優れており、特定の用途に特化していない代わりに、幅広い状況へ対応できます。
イヴ自身が構えて使用するため、移動しながらの戦闘にも適しています。
大型のイデアに対する決定力には欠けますが、通常の戦闘では十分な性能を持っています。
イヴが最も頻繁に使用する霊装であり、出力を抑えることで侵食をほぼ発生させない状態にすることも可能です。
【モードC メテオロ・アクロモス】
メテオロ・アクロモスは、イヴの身長を大きく上回る巨大な狙撃銃型霊装です。
超長距離からの攻撃や、巨大なイデアを対象とした戦闘を想定しています。
霊装の中でも最大級の破壊力を持ち、射線上に存在する対象をまとめて消滅させるほどの威力を発揮します。
その一方で連射性能はほぼなく、基本的には一撃ごとに使用する兵器です。
極めて高い出力を持つ反面、侵食も霊装の中で最も大きく、使用時には激しい頭痛と大量の意識の声がイヴを襲います。
【モードD アサナシア】
アサナシアは、黒と白の2本の剣を展開する霊装です。
黒い剣には物理的な切断能力がありません。
その代わり、剣が通過した対象をイヴの管理下へ置く性質を持っています。
対象となるのは物質ではなく、電気信号や通信、痛覚、周波数、セキュリティなど、通常の武器では干渉できないものも含まれます。
白い剣は、黒い剣によって管理下に置かれたものを拡散、増幅、方向付けする役割を持ちます。
そのため、単純な攻撃兵器ではなく、他の霊装や周囲の環境を利用して戦況そのものを変化させることを得意とします。
物理的な攻撃力や防御力はほとんど持たず、主に補助や特殊な戦闘に使用されます。
侵食は比較的軽いものの、黒い剣によって管理する対象の範囲や数が増えるほど負担も増加します。
【モードE フォボス】
フォボスは、首から下を覆う白色の装甲型霊装です。
装着することで身体能力と防御力を大幅に向上させ、近接戦闘において高い耐久力を発揮します。
一方で遠距離攻撃の手段を持たないため、単独での戦闘には向いていません。
イヴはイデアが元人間であることを理解しているため、自らの手で直接破壊する感覚を強く嫌い、普段はこの霊装をあまり使用しません。
ただし、激しい戦闘によって身体が損傷した場合には、自身の身体を支えるために使用されます。
侵食そのものは軽いものの、長時間の使用や過剰な出力によって負担は増加します。
【モードF ティエラ】
ティエラは、巨大なガトリング砲型の霊装です。
一発ごとの威力よりも圧倒的な弾数と連射速度を重視しており、多数の敵を一度に制圧することに特化しています。
その火力によって単独で複数のイデアを足止めすることも可能です。
一方で反動が非常に大きく、使用中はその場から移動できません。
また、侵食も大きく、長時間の使用はイヴの精神と身体に大きな負担を与えます。
そのため、イヴは通常の戦闘ではネロ&ピュールを使用することが多く、ティエラは限定的な状況でのみ使用します。
【最終霊装 アストロ・カルディア】
アストロ・カルディアは、7基目にあたる最終霊装です。
正式な名称や形状は、本編では詳しく語られていません。
この霊装は、他の6基を一定の順序ですべて使用した後にのみ発動できます。
発動するとイヴの背後に3対の光の翼が展開され、頭上には光輪が現れます。
対象はその場で拘束され、上空には6つの巨大な光輪が出現します。
光輪が徐々に重なり、すべてが一つになった瞬間、巨大な光が対象へ降り注ぎます。
その光に触れた対象は完全に消滅します。
対象と範囲はイヴ自身が指定できるため、必要な対象だけを選択して攻撃することが可能です。
ただし、アストロ・カルディアを発動すると、それまで使用していた6基の霊装はほぼ機能しなくなります。
また、この霊装には通常の霊装のような侵食が存在しません。
むしろ、それまで蓄積していた侵食を抑制し、消失させるような性質を持っています。
アストロ・カルディアの使用は、イヴ計画における大きな転換点となります。
それまで積み重ねられてきた霊装という力を手放し、イヴ自身が人間へ近づいていくための段階へ移行することになるためです。
7基の霊装には、終末を告げる7つのラッパという聖書的な意匠が込められています。
第八節 研究施設と技術体系
1996年から1997年にかけて、人類は複数の研究施設を中心にウイルスや生体情報、機械化技術などの研究を行っていました。
その後、監視者たちは人類が残した研究設備とデータを引き継ぎ、6000年にわたって研究を継続していきます。
・12の研究施設
監視者たちが管理していた研究施設は、全部で12施設存在していました。
それぞれの研究所は独立して研究を行っていましたが、監視者たちと各研究所に設置された演算装置・管理装置を通して情報を共有していました。
研究分野は大きく分けると、以下のように分類されます。
第1~第3研究所
ウイルス研究、コア研究
第4~第7研究所
レプリカ研究、生体情報研究、楽園計画の解析研究
第8~第12研究所
既存技術の研究開発
この分類は完全に独立したものではなく、それぞれの研究所で得られた成果は共有され、別の研究分野へ利用されていました。
・第四研究所
12の研究施設の中でも、第四研究所は特に重要な施設でした。
第四研究所は、オリジナルイヴが所属していた生体レプリカ第四研究所です。
また、オリジナルイヴによって封じられた楽園計画も、この施設に残されていました。
監視者たちのレプリカデータも第四研究所に保管されていたため、第四研究所は他の研究施設よりも堅牢に建造されています。
所在地も意図的に人目につかない場所が選ばれており、隕石落下によって生じた巨大なクレーターの内部に密かに建造されていました。
座標を知らなければ発見することは困難であり、外部から施設の存在を確認することも容易ではありませんでした。
・監視者と研究体制
監視者は12人存在しました。
それぞれが別々の研究を担当していましたが、12人は知識そのものを共有しており、完全に別々の研究者というよりも、同一の存在に近い性質を持っています。
研究初期には、それぞれの監視者が各研究所を拠点として研究を進めていました。
しかし、第四研究所に封じられていた楽園計画を発見し、その解析が進むにつれて、監視者たちは「人間になりたい」という欲望を持つようになります。
以降、研究の中心は第四研究所へと移され、監視者たち自身も第四研究所へ集まりました。
それまで使用していた研究所には、一部のレプリカと管理装置を残し、研究施設の維持と管理を行わせていました。
レプリカの製造や管理も、各研究所に設置された演算装置・管理装置が担当していました。
ただし、第四研究所以外ではレプリカの生産数は少なく、他の研究所が放棄された後は、第四研究所のみが本格的な製造と管理を行うようになります。
・生体情報とレプリカ技術
レプリカに関する研究の原点は、オリジナルイヴが研究していた義肢技術にあります。
当時、オリジナルイヴは培養技術を利用し、人間の肉体から得られた生体情報をもとにした義肢の研究を行っていました。
この技術を人体そのものへ応用することで、レプリカ技術が生まれました。
当初は人間の身体を再現するための技術でしたが、ウイルスから逃れる必要が生じたことで、研究対象は人間そのものへと拡大していきます。
監視者たちは、残されていたオリジナルの生体情報を利用してレプリカの研究を継続し、目覚めた人類が使用するための新たな肉体を研究開発していきました。
・コア技術
コア技術の基礎となったのは、人間の脳が作用する現象を研究していた技術です。
人間の脳から発生する大量の電気信号に着目し、その信号を利用することで、人間の意識や生体活動を機械へ接続するための技術が発展しました。
その結果として、人間の脳を利用したコアが作られます。
コア技術は、その後の人間の機械化だけでなく、イデアの解析や機装・霊装の開発にも利用されることになります。
・人間の機械化
人間の機械化に利用された技術の基礎には、1996年当時に開発されていたロボット技術があります。
当時は宇宙進出を目的として、真空状態や極端な環境にも耐えられる機械が研究されていました。
その中でも、過酷な環境下で作業するために開発されていたロボットアームなどの技術が、人間の機械化へ応用されました。
ウイルスから逃れるために、人類はそれまで培ってきた機械技術とコア技術を組み合わせ、人間の身体を機械へ置き換える方法を完成させます。
この機械化技術そのものは、人類が眠りについた後には必要性を失いました。
そのため、6000年の間に研究対象から外れ、次第に失われていきます。
・イデア研究
イデアに関する研究は、人類が残した研究データと、監視者たちが実際に捕獲したイデアの解析をもとに進められました。
人類が機械化した際に残した研究報告やデータを参照しながら、捕獲したイデアを解体し、その構造を改めて解析することで、当時失われていた技術を再構築していきます。
イデア研究は当初、第7研究所を中心に行われていましたが、後に第四研究所へと移されました。
・機装と霊装
機装と霊装は、コア技術とイデア研究から発展した兵器です。
長期間のスリープ状態に耐えるために開発されたイデアの肉体は非常に高い耐久性を持っており、その構造は兵器開発においても重要な研究対象となりました。
イデアの捕獲と解体解析を繰り返しながら、コアが持つエネルギーと機械化された肉体を兵器として利用する研究が進められ、その結果として機装が開発されます。
さらに研究が進められたことで、特殊な構造と高い出力を持つ霊装が生み出されました。
霊装の開発には初期のレプリカイヴも関わっており、その後、監視者たちによって技術が完成させられています。
・ウイルス研究
ウイルスについては、第1~第3研究所を中心に研究が行われていました。
しかし、監視者たちは自分たちがレプリカであることから、ウイルスが自身に発症する可能性について強い危機感を持っていませんでした。
そのため、ウイルス研究は早い段階で優先度を失い、放棄されていきます。
オリジナルイヴが生前に察知していたウイルスの変異の可能性についても、監視者たちは把握していませんでした。
これは、自分たちはレプリカであるため、ウイルスに感染しても発症することはないという思い込みによるものでした。
この認識が、後の悲劇へと繋がることになります。
・楽園計画からアダム計画・イヴ計画へ
第四研究所に封じられていた楽園計画は、監視者たちによって長期間にわたって解析されました。
その内部には、人間へ至るための方法が記されており、アダム計画とイヴ計画は、その設計をもとにして作られています。
監視者たちは、完全に新しい技術を一から生み出したわけではありません。
楽園計画の内部に残されていた設計を読み解き、それを再現する形で研究を進めていきました。
疑似感情などの一部の技術は監視者たち自身によって組み込まれましたが、恋愛感情そのものを完全に再現することはできませんでした。
二人の生体情報を利用し、疑似的な愛情を与えることで必要な反応を引き起こせると監視者たちは考えていました。
しかし、その技術は完全には機能していませんでした。
それでも二人の生体情報を持つレプリカには、やがて互いに対する感情が生まれていきます。
この現象は、現在の科学や技術だけでは完全に説明することができません。
・磁場ドーム
磁場ドームは、イデアを解体・解析する過程で発見された技術をもとに開発されました。
アストランは、この技術によって全域を覆われています。
磁場を発生させる装置は、アストランを構成する4つの都市にそれぞれ配置されています。
この技術によって、アストランはイデアから身を守るための強固な防衛機能を獲得しました。
・第四研究所からアストランへ
イデアが目覚め、人類との戦闘が始まると、第四研究所以外の研究施設は順次放棄されました。
これは、イデアによってすべての研究施設が直接破壊されたというよりも、監視者たちが第四研究所へ防衛力を集中させるために、他の研究施設を意図的に放棄したことによるものです。
放棄された研究所にはレプリカと管理装置が残されていましたが、その後イデアによる襲撃を受け、多くが失われました。
第四研究所だけが最後まで残ったのは、楽園計画を保管していた重要施設として、他の研究所よりもはるかに堅牢に建造されていたこと、そしてその所在地が極めて秘匿されていたためです。
その後、他の研究施設がすべて失われたことで、第四研究所は「アストラン」と改称されます。
これは単なる名称変更ではありません。
「生体レプリカ第四研究所」という名称を捨てることで、現存するレプリカたちを過去の真実から遠ざける意味も持っていました。
特にカインに対しては、計画が完遂されるまで、自分が何者なのかを知らず、人類最後の楽園を守る兵士として生きる必要がありました。
アストランは、人類最後の砦であると同時に、アダム計画を継続するための舞台でもあります。
カインがイデアのコアを集め、その生体情報を蓄積するためには、追い詰められた人類と、それを守るために戦い続けるカインという環境が必要でした。
たとえイデアの正体が人類であると判明したとしても、アストランを守るための戦いが続くように世界は維持されていました。
こうして第四研究所は、6000年の研究と計画の中心から、人類最後の楽園「アストラン」へと姿を変えていきました。
・おわりに
ここまでで、『楽園のイミテリス』の世界を形作っている存在や技術について、一通り触れてきました。
生体情報、コア、ウイルス、レプリカ、イデア。
そして、それらを利用して作られた機装と霊装、研究施設。
一つ一つの設定だけを見れば、単なる技術や世界設定に見えるかもしれません。
しかし、これらはすべて、ある一つの計画へと繋がっています。
ここから先は、これまで説明してきた技術が、どのように一つの計画として組み合わされていったのか。
そして、カインとイヴが何のために存在していたのか。
物語のさらに深い部分へと踏み込んでいきます。




