第三章 ― 詳細設定・世界の仕組み 第一〜第五節
第一〜第五節
第三章では、第一章・第二章で触れた世界の構造をさらに掘り下げる。
生体情報、コア、ウイルス、レプリカ、イデア、コアエネルギー、兵器技術など、本編では詳細を語らなかった仕組みを中心に扱います。
第一節 生体情報とコア
人間の生体情報は、肉体そのものを構成する情報だけではなく、人格、記憶、意識など、人間としての個体を成立させる情報を含みます。
コアは、人間の脳に相当する機能を持つ中枢です。人間の脳に存在する人格、記憶、意識などの情報を抽出し、それを一つの構造として保持します。
人間を機械の肉体へ移行させる際には、脳を単純に摘出するのではなく、生体組織を生きた状態に近い形で処理し、本人の組織によって包み込む。
さらに皮膚、神経、骨などを用いて全体を構成し、機械の肉体内部へ移植します。
コアは機械の肉体の心臓に相当する位置へ配置されます。機械の頭部には、機械の身体を操作し、人間には存在しない感覚器官などを補助するための別の司令塔が設けられています。
そのため、頭部側の司令塔が破壊されても、コアが無事であれば必ずしも生命活動そのものが失われるわけではない。
コアそのものに生命活動が存在するためです。
コアは別の肉体へ移植することも技術上は可能ですが、生体組織を含むため通常は拒絶反応が発生し、最終的に死に至ります。
イヴはこの問題を回避することを目的として特殊に設計されました。
コアは単なる生体情報の記録媒体ではない。
人格、記憶、意識を保持し、精神状態の影響を受ける。
便宜上、魂に近いものとして扱うことはできるが、作中において魂という独立した存在が定義されているわけではありません。
第二節 ウイルス
1996年、人類を襲ったウイルスは、当初の感染者に対して直ちに致命的な作用を示すものではなかった。
しかし、感染者が別の人間へ感染させた時点で、ウイルスはオリジナルとレプリカへ分離します。
オリジナルは宿主から宿主へ移動し、感染を拡大させます。
一方、レプリカは感染した宿主の内部に残留します。
このレプリカは、文字通り不完全な複製です。
複製された時点でDNA情報の一部が大きく欠落しており、自身の欠損を修復することができません。
レプリカウイルスは欠落した情報を補うため、宿主のDNAから必要な情報を取り込み続けます。
しかし、どれだけ情報を取り込んでも自身が完全な状態になることはなく、取り込んだ情報を消費しながらさらに不足を埋めようとします。
その結果、宿主のDNAは徐々に失われます。
細胞ではアポトーシスが進行し、内臓などの重要な器官から機能が失われ、一定の閾値を超えると全身が崩壊して死に至ります。
この性質は人為的に設計されたものではなく、ウイルス自身の自然な変異によって生じたものです。
人類にとっては、地球環境の過剰な負荷に対する自己浄化のようにも見える、制御不能な災厄となりました。
イデアに対しては、機械の肉体ではなくコアが感染対象となります。
進化したウイルスは、人間の細胞を持ち、なおかつ不完全な存在であることを主な活性化条件としている。
イデアではコアが侵食され、生体情報を保持する機能が失われます。
精神および生命維持機能が崩壊し、コアが破壊されることで機械の肉体との接続も失われ、全身が機能停止する。
一方、完全な人間に対しては進化後のウイルスは活性化しない。
6000年の間に完全な人間が存在しなくなったことを前提として、ウイルスは不完全な存在へと適応していったと考えられている。
カインとイヴもウイルスそのものを保有しているが、完全な人間となった後は活性化していない。
ただし、それが将来にわたって絶対的なものなのかについては明らかにしていません。
第三節 レプリカ
レプリカとは、人類の肉体および生体情報をもとに製造された人形です。
イデアが機械の肉体へ人間のコアを移した存在であるのに対し、レプリカは人間の肉体を模した外殻を用いて作られる。
両者はいずれも人間の生体情報を起源とするが、その構造は正反対に位置します。
レプリカの身体は基本的に人間に近い。
脳や人体に類似した器官も存在するが、通常の人間と同じように機能する内臓を持つわけではない。
身体の中心には機械的なコアが存在し、人体の細胞を培養して作られた欠陥品の心臓に近い役割を持ちます。
製造直後のレプリカには、人格や記憶は存在しません。
配置される前に擬似学習装置によって人格、記憶、人間関係などが与えられ、その個体に必要な生活情報が構築されます。
通常のレプリカの寿命は長くて1年です。
これは製造時点でDNAの一部が欠落しているためであり、製造直後から緩やかなアポトーシスが進行している。
欠損は技術的限界によるものであり、意図的に仕込まれた欠陥ではない。
寿命が近づいたレプリカは回収され、予備の個体が配置されます。
新しい個体には記憶の乖離を防ぐための仕組みが組み込まれており、本人も周囲も、前の個体が死亡した事実を違和感なく受け入れるよう設計されています。
身体の再構築や再生も可能だが、損壊が大きい場合には直前の記憶を引き継げないことがある。
通常のレプリカは、自らをレプリカだとは認識していない。
自分たちを人間だと疑うことなく生活することが前提とされています。
「自らが人間である」という感覚は、後に監視者たちによって与えられたものです。
一部には、自身がレプリカであることに気づく個体も存在します。
彼らは自らが信じていた世界から外れた存在となり、作中における「楽園を追われた者たち」へとつながっていく。
監視者はオリジナルイヴによって直接製造された特殊なレプリカであり、完全な記憶保持が可能です。
寿命は通常のレプリカと同じく1年だが、それぞれの製造時期を僅かにずらすことで、寿命が近づいた個体を他の監視者が新たに製造する仕組みが構築されています。
カインとイヴも特殊なレプリカです。
二人はオリジナルイヴが残した楽園計画の設計をもとに製造され、それぞれ異なる目的を持ちます。
カインは生体情報を取り込むための器として、イヴは完成した生体情報をもとに新たな人間を生み出す母体として設計されました。
レプリカは、完全な人間を作る技術が存在しなかったことによって生まれた不完全な存在です。
だからこそ、カインとイヴを本当の人間へ到達させるためには、通常のレプリカには存在しない多大な代償と長い時間が必要となりました。
第四節 イデア
イデアとは、人類がウイルスから逃れるために自身を機械化した結果として生まれた存在です。
レプリカウイルスは人間の肉体に作用するため、感染していない人類の一部は、生存のためにコアを機械の肉体へ移す方法を選択した。
感染した人間には機械化を行うための時間的な余裕がなかったため、イデアとなった人類は基本的にウイルスに感染していなかった人々です。
イデアの機械の肉体は、外部からエネルギーを取り込む特殊な構造を持ちます。
太陽光発電や風力発電に近く、外部から受けた刺激をエネルギーへ変換し、自身の活動に利用します。
イデアは増殖することはありません。
存在する個体は6000年前に機械化された人間を起源とするため、時間の経過とともにその数は減少していく。
イデアは数千年間、意識を保ったまま地下深くで生存し続けています。
その結果、精神的な崩壊が進行しています。
特に精神的に未成熟だったクラス1およびクラス2では、その傾向が強くなっています。
クラス3以降は意思が強かったため、精神崩壊の中でも僅かに意識を残している個体が存在します。
イデアは精神的に崩壊していても人格そのものを失っているわけではない。
イデアのクラス分類は、レプリカ側が捕獲した個体を解体・解析した結果として定められた。
分類は単純な戦闘力によるものではなく、機械化前の人間の属性を基準としている。
クラス1は15歳未満の子ども、クラス2は15歳から25歳の青年、クラス3は子を持つ母親、クラス4は子を持つ父親に分類されます。クラス5はオリジナルイヴです。
レプリカ側が特にクラス1を積極的に殺害してきたことは、イデア側に強い憎悪を生じさせる要因となりました。
両者は互いを異なる存在として認識していますが、その起源を辿れば、どちらも人類を起点としています。
第五節 コアエネルギーと兵器技術
コアが持つエネルギーは、人間の脳が全身を制御するために用いていた電気信号を基礎としている。
人間は本来、自身の脳から発生する電気信号によって肉体を自在に制御しています。
機械化によって肉体を捨て、頭部に機械の身体を操作するための別の司令塔を設けることで、本来肉体全体へ送られていた電気信号と、それに伴うエネルギーをコア側へ集中させることが可能となりました。
さらに機械の肉体そのものが外部からエネルギーを取り込み、そのエネルギーをコアの維持にも利用することで、長期間の活動が可能となっている。
このコアエネルギーは兵器にも転用されます。
使用者の肉体が持つ電気信号とコアの電気信号を組み合わせることで、通常の人間の身体能力を大きく超える出力を引き出すことができます。
機装は、イデアのコアと肉体の一部を利用して作られた兵器です。
イデアのコアと肉体が持つエネルギーを兵器として運用できる形に固定したものであり、構造上はイデアの一部を兵器化したものともいえます。
機装には使用者との適合率が設定されています。
適合率は、機装の基となったイデアのコアと、使用者の肉体が生体情報上どれだけ一致しているかを示す数値であり、血縁などの近さも関係します。
適合率が低い場合、機装に組み込まれたコアや肉体との間で拒絶反応が起こり、エネルギーを十分に使用できなくなります。
その場合、機装は通常の武器と大きく変わらない状態となります。
拒絶反応が使用者へ直接及ばないよう、機装には安全装置が設けられています。
適合率は基本的に変化しません。
カインが第1話で示した21%という数値も、技術的な意味だけによって定められたものではない。
霊装は、通常の機装とは異なる特殊兵装です。
霊装はイヴ専用として設計されており、表向きにはクラス4のコアを材料としているとされています。
しかし実際には、霊装の材料には、それまでの実験で破棄されたイヴたちが使用されています。
イヴ同士は生体情報上の一致率が極めて高いため、適合率は90%を超えます。
このため霊装は、単に高性能な機装なのではなく、過去の実験によって生み出されたイヴたちを兵器として転用した、イヴ専用の特殊兵装です。
第三章について
第三章は、膨大な情報量となり複数に分けて公開いたします。
今後、第六節以降にてさらに、用語、時系列、表記などを説明していきます。
全てを読み終わった時、きっとこの物語の本当の願い、想いが伝わると思います。




