52 精霊界? で、お茶会ですか?
人と同じ大きさになっているスラミーが、精霊王様方と私とレニーにお茶を入れてくれた。あと、ミルキア様が補充しておいてくれたお菓子も、惜しげもなく出していた。
精霊王様方は嬉しそうに焼き菓子を召し上がっていらっしゃる。
私もお茶を楽しんで一杯目を飲み干した。すぐにスラミーがお代わりを注いでくれた。……カップを持って精霊王様方を見つめる私に、視線に気がついた方から順に笑顔を返された。いい加減、しびれを切らした私は口を開くことにした。
「で、本当のところはどういうことなの?」
「ひどいなー、カミーラは。あれでわからなかったの?」
「わかるかい! 精霊王様方も、一体何を企んでいるんですか? さっき語ったことがすべてではないのでしょう」
私は精霊王様方のことを、じーっと見つめた。精霊王様方は困ったように微笑んでいる。
「カミーラ、そんな風に言わないで。私達は先ほどのことがカミーラのためになり、ひいてはこの世界のためになると思ったから、行動に移したのよ」
水の精霊女王様が、真顔で言いました。
「そうよ、カミーラ。私達精霊も、人と同じに間違うことがあるの。その時に最良の選択をしたつもりでも、あとから違う方法があったのではないかと、思うのよ」
「ええ。私たちも神からこの世界を任されたのだけど、未熟なのよ」
「そうでなければ、精霊がこんなにいるわけがないわ」
「そうよ。光の精霊王様と闇の精霊王様だけに、この世界を委ねなかったのが、神様の御意思だと思っているの」
「だからね、あまり責めないでくださいね」
「精霊女王様方……」
水の精霊女王様のあとに続いた言葉は、火、光、土、風、闇の精霊女王様方でした。それとともに空間が揺らぎ、私達はレニーの部屋から移動をしたのです。……移動というのとは、ちょっと違うかな。たしか……位相を少し変えて、この世界と違う世界にいるのよね。でも、もともとのレニーの部屋が、薄い膜を透したように……見えているのよ。
えーと、説明が難しいわ。……ああ、そうだ。前にミポルが言っていたのは、少し位相がズレたところに、精霊界があるんだったわ。だから、ここは精霊界……よね?
じゃなかった。精霊女王様方までいらっしゃったのだから、ちゃんと話をしないと! なのに……。
「まあ、これが噂の焼き菓子なのね」
「香ばしくておいしいわ」
「あら、こちらは果実のジャムが挟んであるのね」
「こちらはドライフルーツといったかしら? それがいっぱい入っているわ」
「どれもおいしいわ~」
心得たようにスラミーがお茶を入れ、どこからか出てきた椅子とテーブルに着いた精霊女王様方に給仕をしている。女王様方はキャッキャッとはしゃいで、焼き菓子をあれこれ見比べながら食べては、口々に感想を言っている。……まあ、普段こういうものは食べられないのですものね。
……と、思っていたのに。
「頬についているよ」
と、土の精霊女王様の頬にドライフルーツたっぷりのパウンドケーキの切れ端……がついているのを、指先で撫でるように取り去って自分の口の中に入れられる、土の精霊王様。
「そんなにあれもこれもと取るのは、感心しないぞ」
「あら、あなたが半分食べてくださるのよね」
……なんで火の精霊女王様を膝の上に抱き上げていらっしゃるんですか? 火の精霊王様!
「こちらの焼き菓子がおいしかったのだよ」
「まあ。先ほど見ていましたわ。本当に薄く焼いてありますのね」
えーと、光の精霊王様まで光の精霊女王様のお世話を、かいがいしくなさっていますのね。
「あなたはどれがお好みでしたの?」
「我は、このキイチゴのジャムが乗ったものが好みだな」
闇の精霊王様……まで。
いやいや。仲が良いことはいいことじゃない。……というか、精霊王様方って、こんなに愛情表現が露骨……じゃなくて、ストレート……でもなくて……。ああ、もう、いいわ。こんなに人間ぽかったかしら?
「カミーラ」
隣に座っているレニーに呼ばれたので、そちらを向いた。満面の笑みを浮かべたレニーが、手に持ったクッキーを私の口元に差し出している。……これって、まさか?
「はい、あ~ん♡」
やっぱりかい! ……じゃなくて。えーと、どうしようかな。別にレニーから食べさせてもらうのはいいのだけど、精霊王様、精霊女王様が……って。えっ? なんで目をキラキラさせて見ているのでしょうか?
「ねえ、もしかして」
「ええ。これは」
「噂に聞く」
女王様方の期待に満ちた視線に負けて、私は素直に口を開けてクッキーを食べました。それを見て、空気が揺れたように思いました。
そして……精霊王様方による精霊女王様へのあ~ん攻勢が始まり、そのあとお返しのあ~んが……。
レニーにまで、同じようにお返しのあ~んをしてと、おねだりされてしまいましたとさ。




