53 さて、いろいろ答え合わせといきましょうか
精霊王アンド精霊女王様方のイチャつきが、一通り終わると精霊王様方は取り澄ました顔をして、椅子に座り直しました。
「うふふっ、ごめんなさいね、カミーラ、レイニー。一度でいいから人間のようにイチャイチャしてみたかったのよ」
とは、光の精霊女王様のお言葉です。……どうやら他の精霊たちがいないところで、王様と女王様とでイチャつくことをしてみたかったようでした。……と、思ったのに。
「でも、ねえ」
「ええっ」
「どこがいいことなのか、わからないわ」
精霊女王様方の言葉に精霊王様方も頷いていました。……ノリノリでイチャついていたように見えたのだけど、やはりそこの感覚は人とは違うのでしょうか?
そんな私の考えを見透かしたように、風の精霊女王様が言いました。
「カミーラ、私達精霊は人間のように睦みあって子供を残したりしないのよ。愛情はあるのだけど、人間のように欲に結びつくようなものではないの」
「そうねえ、私は土の精霊王を尊敬しているし、並び立つものだと思っているけど、人間でいう『夫』とは思えないと、言えばわかるかしら」
土の精霊女王様の言葉を聞いて、改めて人間と精霊の違いを思い知らされた気分です。……それならなんで皆様はイチャついたのでしょうか?
「人間を理解するには、人間と同じことをすればわかるのかと思ったからよ」
水の精霊女王様が答えてくれたけど……私、口に出してないよね? 今の疑問は。
「カミーラは素直ですもの。その目を見ていれば、何を思ったのかわかるのよ」
闇の精霊女王様の言葉でした。
ガクッ
◇-◇
「それでは、先ほどのカミーラの問いに答えるとしようか」
光の精霊王様が代表するように口を開きました。
「カミーラも気がついたように、今回のことは我らにも我らなりの思惑があって行ったことだ。我らが神よりこの世界を任された時に、いくつか制約を受けている。それに触れぬようにバランスをとってこの世界を導いてきたつもりだ。だが、我らも何度か間違いを犯してきている」
『わかるか』と、視線で問いかけられたから、私も頷いてから答えたの。
「先ほど聞いた魔精霊のことでしょう。人との距離が近づきすぎてしまったから起こったことなのよね」
「そうだ。それで我らは人と距離を置くことにした。だがその距離が離れすぎたのか、此度のことが起こった。人にとって我ら精霊とは加護を与えるだけで、人の世のことに関わらないと思われていると知ったのだ」
私は隣に座るレニーのことをチラリと見た。レニーは私の視線に気がついて頷いてくれた。
「カミーラとレイニーを試金石としたことは謝ろう」
そう言って、精霊王様方と精霊女王様方は私達に頭を下げてきた。私とレニーは今度ははっきりと顔を見合わせてから、私が口を開いた。
「必要なことだったのでしょう。精霊王様方、精霊女王様方。それでしたら謝罪は必要ないです」
「ええ。それよりも僕には感謝しかないです。水の精霊王様、精霊女王様が、マグス村に僕を連れて行ってくれたから、僕はカミーラと会えたのですから」
そうレニーが言ったら、なぜか精霊王様方の表情が微妙に歪んだ。……えーと、悔恨? かしら。どうやらレニーをあの村に連れてきたのは、別の思惑によるものだったみたい。それが失敗していたら、目も当てられない惨事になっていたとか?
精霊王様方に直接訊いてもいいけど、その前に答えてくれそうな人に聞いてみましょう。
「ねえ、ミポル。もしかして思惑というのは、一つではなくて複数あったのかしら? それが複雑に絡み合い過ぎて……変なことになっているなんてことないよね」
「うん。カミーラが心配するようなことは起こってないよ~。たしかに思惑は一つじゃなかったけど~、逆に相乗効果で、良くなったからねえ~」
「へえ~、そうなんだ~」
ジトーとした視線をミポルに送ったら、ミポルは「あっ!」と呟いた。……うん。精霊は嘘がつけないものね。
ミポルは気まずそうな顔をして光の精霊王様のことを、窺うように見た。光の精霊王様は息を吐きだしてから、ミポルに頷いた。
「大丈夫だよ、風の王子。すべて二人に話すつもりでいたのだから。そうでなければ、ここに移動はしなかったのだよ」
ミポルから視線を私たちに移した光の精霊王様は、真剣な表情で私たちに語りだした。
「二人もなんとなくわかっていたと思うが、二人が育った『マグナ』は、我ら精霊の結界に守られた地だ。聡い二人なら何故そうしなければならなかったのかを、もう、わかっているのだろう」
「……たぶんですけど、あの地が最初に魔精霊を生み出した地なのではないですか。さっき人間たちに語った『魔精霊となった精霊を滅した』と言ったこと。……あれは正しい言葉では無くて、本当は『封じた』というのが正解なんじゃないでしょうか。多分、人間と精霊の認識の違い……えーと、自由に活動……行動できないことは『精霊にとっては滅した』行為にあたり、人間にとっては封じたことになる、と。あと、あの地に今まで人間の年配の人しかいなかったのも、神殿とかで修業した人でないと、あの地には入れないようにしたから……とかですかね?」
補足説明
カミーラの精霊王様方への言葉使いですが、学院に通うになって尊敬語などを習い、一時そういう言葉を使っていました。
それが精霊王方には不評で、尊敬語も謙譲語などで話すことを禁止されたのです。
精霊たちにとって、急に遜った態度をカミーラに取られて、離れていくようで寂しく感じたからでした。




