47 精霊の大好物!
ミポルはまだ言い足りないと、言葉を続けた。
「お前はボクらの一番の楽しみを奪ったんだよ。気がついていないだろうけどな」
……えーと、精霊たちの一番の楽しみ? なんだろう?
ミルキア様がそっと視線で訊ねてきたけど、心当たりがないからゆるく首を振っておく。
「ボクらはなー、努力して上に上がろうとする人間の姿が好きなんだー! それに恋情が絡むともっとよし! 恋い慕う女性のために、努力するなんて、最高じゃないかー!」
……えーと?
私以外の人達も目が点状態ですよー、ミポル。でも、精霊王様方も真面目な顔で頷いていらっしゃるから、どうやら本当のことみたい。
「フェリシアと彼女の騎士の話なんて、最高じゃないかー! 王女に相応しい相手となるために努力を重ねたんだぞ。そして国王からも認められて、彼女との婚約を許された。誰からも認められた、幸せな結婚式が見られると思っていたんだぞー。それをこんなことのために台無しにしやがってー!」
ミポルの言葉に、精霊王様方はすごい勢いで頷いていらっしゃる。水の精霊女王様とスラミーはキラキラした目を、フェリシア様に向けていらっしゃるし。……って、マジ?
「泣く泣くフェリシアとの結婚を諦めた騎士はなー、それでもフェリシアを守るために、この国についてくることを決めたんだー。ただ一つ、フェリシアの幸せを願ってなんだぞー。自身の顔に傷をつけてまで、それを成し遂げようとしたんだー。そうしたら、誰だって力を貸したくなるだろうー」
ミポルの瞳が潤んでいる。今にも涙がこぼれ落ちそうだ。……そういえば、シランがミポルに糾弾をされていた時に、一瞬、視線を向けた人がいた。その人はいつも静かにフェリシア様とオリバー様を守る位置にいらっしゃる人……で!
「土の精霊が命をかけて姿替えの魔法を施したんだ。普通の人間では気がつくことはないだろう。そうまでしてでも、フェリシアのそばに居たいと思う気持ちを~、バカ兄であるお前は~、踏みにじったんだ~。残念だったな。これで、加護を解いたら、お前やその子供たちには加護がつくことはないからな」
フン、と鼻息荒くミポルは言い切りました。そして一度大きく息を吸うと、また声を出したの。
「さあ、精霊たちよ。王家への加護を外すがいい。そして、必要だと思う者へと、加護を与えるがいい」
ミポルの言葉と共に、フェリシア様、ウィルキン新国王、クラルス宰相、ジョシュの周りに光が舞った。それはすぐに治まった。そしてフェリシア様の前に土の精霊が現れた。
「フェリシア、あなたにはもう加護は必要がないくらいに、安定をしているわ。でも、これからのために、私の加護を改めて贈らせてもらうわね」
土の精霊はそういうと、フェリシア様の額に口づけをした。
ウィルキン新国王とジョシュの前には光の精霊王が移動してきた。
「我の愛しい者の血を引く者たちよ。お前たちの今までのことを、ずっと見ていたぞ。こののちの困難に立ち向かうことを決めた其方らに、我の加護を与えよう」
光の精霊王は左手をあげると、ウィルキン新国王とジョシュの額にそっと触れたのでした。
その様子を目を細めて見つめていたクラルス宰相は、一度目を閉じてから目を開けて、踵を返した。そこで、動きが止まった。……たぶん部屋を出て行こうとしたんじゃないのかな。
「えっと」
と、言葉にならない宰相様に、彼の動きを止めたものはニッコリと笑った。
「エリク、君は王族の血を引くけど王族ではないよね。だから精霊王様からではなくて、私からの加護を受け取ってもらうよ。君のこれまでの苦労が、これからの人生の幸とならんことを願って」
光の精霊はそういうと宰相様の額に口づけをしたの。
他の方たちは言葉もなく、その光景を見つめていました。私も厳かといえる、加護の与えられ方に、見入っていたのよ。
「さて、これで、今回の騒動は終わりにしようかな。それぞれの国の罪人たちも、近日中には流刑地に移動をしてもらうからね~」
ミポルが締めくくるように言ったのよ。……って、まだ全世界に向けて話していたのね。これで終わりというから、本当に終わったのだと思ったのよ。なのにね――。
「あー、そうそう。これは別に言わなくていいことだと思うんだけどさ、一応お知らせしておくね~。君たちは~、……えーと、特に今回のことを好機と捉えて~、この国に戦を仕掛けようとした人達~。君たちはさ~、ボクらが国同士のことに口を出さないからって~、戦支度をしているんだよね~。でもね~、この国には~、ボクらの大切なカミーラがいるんだよ~。そしてカミーラは~、この国のことを~、愛しているんだよ~。そんな国に戦を仕掛けようと考えただけで~、ボクら精霊を怒らせたって~、わかるよね~。精霊はね~、加護持ちに甘いからね~。ましてそれが~、精霊王様の加護を持つ人物だと~、尚更甘くなるんだよ~。彼らからの報復を~、覚悟しておくんだね」
そう言って、ミポルは手を振るようにして、世界につないでいた力を解いたのでした。




