46 精霊の好意……って……
ハルスメキア男爵……改め、ウィルキン新国王の言葉に、部屋にいた人たちは立ち上がると、部屋を出て行こうとしました。そこにミポルの、のんびりとした声がかかりました。
「ちょっと~、待ってくれないかな~」
動きかけた人たちは訝し気な顔で立ち止まりました。
「えーと~、ボクらがね~、起こしたことで~、君たちに~、多大な迷惑をかけているじゃない~。だからね~、こんなんで~、手助けには~、ならないかもしれないけど~、これを~、用意させて~、もらったんだ~」
ミポルはかなりの量の紙の山を皆様の前へと移動させた。それから……これはこの国の地図かしら。
「えーとね~、その地図には~、元々どこが誰の領地で~、どれぐらいの広さがあるかを~、書いてあるのね~。次の地図は~、南の地に送られたことにより~、領主がいなくなったところに×をつけておいたから~。それで~、最後のこの地図は~、何も書いてないから~、好きに使ってね~」
皆様はフワフワと机の上に着地した地図を、食い入るように見ています。
「それで~、こっちのは~、南の地に送られた人たちの~、領地の特産品や~、私財のリストだよ~。こっちの束に~、それぞれが南の地に持っていったものが~、書かれているから~、両方をみれば~、残されたものが~、わかると思うんだ~」
皆様は別の机の上に置かれた紙の束を見て無言で仕分けに入りました。そのうちに、南に送られた人の分を別にしたのか、南の地に持っていったものリストと合わせ始めたようです。この間に、何かの紙を携えた人たちが何人も部屋へと入ってきました。どうやら貴族の館に落ち着いた国民の名前のリストのようです。
ざっと確認を済ませた皆様は、ほっと息を吐き出しました。
「ありがとうございます、精霊様方。ここまでしていただいて、お礼の申しようがございません」
ウィルキン新国王がミポル達に頭を下げました。
「うう~ん。こちらがね~、迷惑を~、かけているんだよ~。これくらいじゃ~、割りに合わないじゃない~。だからさ~、もう少~し、力にならせてね~」
ミポルの言葉に皆様は目を瞬かせていた。
「えーと、それは?」
「この国が安定するまで~、国境の守りは~、任せてね~。どんな悪だくみも~、この国には~、持ち込ませないからね~」
ニコニコと言うミポルに、言葉を失くす皆様。……というか、矛盾してない? 加護は魔力を安定させるために贈るもので、国を守護するものではないと言ったよね。
皆様も、そこが聞きたいようだけど、聞けないみたいだ。それなら、私が聞くしかないよね。
「ねえ、ミポル。それっておかしくない? 加護は国にはないんでしょう」
「うん、そうだよ~。これは~、加護じゃないもの~」
「加護じゃないのなら何になるの?」
「え~と、ボクらの好意? かな~」
ミポルは腕を組んで考えながら答えてくれた。……ということは!
「あー! だからなのね。この国が光の精霊の加護を持つ王族が王位を追われて、そのあといろいろ不具合が出てきたのって」
「う~ん、そう、なるかな~。……うん、そうだね。加護を与えられた人間には、他の精霊たちもよくしようとするものね~。ましてさ~、国を興そうなんて~、そんな面倒なことを~、頑張ろうとする人間に~、好意を抱かない方がおかしいよ~。人間が~、それをどうとっていたのかは~、知らないけど~、そっちがいらないとしたものを~、いつまでも好意を向けるわけないじゃ~ん」
そういうとミポルはニヤ~と笑った。ついでに私にウインクをしてきた。
「あー、そうだった~。全世界の人間に~、お知らせが~、あったんだよ~。今回のことで~、ボクらの加護の与え方に~、問題があったと判ったからね~。加護の与え方を~、考えることにしたんだ~」
ニコニコと邪気がない感じに言うミポル。部屋の中にいる人たちは、ただ静かにミポルのことを見つめている。
「王族の~、血筋に~、与えていた加護を~、撤廃することにしたよ~」
ミポルの言葉に空気が震えた気がした。全世界の人間に震撼が走ったことだろう。……ミポルはそんなことは知らないぞ、というように言葉を続けた。
「やっぱさ~、血筋に加護を与えるのは~、やり過ぎだったんだよね~。何代かは~、加護を与えるのに~、値する人もいたけど~、今は~、そんな人物は少ないんだよね~。だから~、一度~、王族の加護は~、撤廃することにして~、必要な人にのみ~、もう一度与えることにするからさ」
ミポルの顔から笑みが消えた。
「特にフェリシアの祖国の王。お前は相応しくないんだよ。兄妹の中で一番の努力家だと思っていたのに、結局は弟妹に嫉妬して、フェリシアの恋を邪魔したよね。なーにが『光の精霊の加護がある国との縁組はこれに勝るものがない』だよ。お前の父はお前の努力を認めていたから、王太子にして国を譲ったわけだろ。その前王の気持ちを踏みにじったわけだ。病床の父に代わって、お前がフェリシアの婚姻を推し進めたことはわかっているんだからな!」




