44 それでは王家はどうなるのか
宰相補佐が腰を下ろすと、ほぼ同時に会議室の扉が開いて、どやどやと人が入ってきました。えーと、人数にして三十人くらいかな。男性だけでなく、女性の方もいらっしゃいます。
皆様は部屋の中に入ると三列くらいに並び、精霊王様方に向かってお辞儀をしました。
「お呼びと伺い、参上いたしました」
一番前にいる男性が代表で声を出しました。
「うん。よく来てくれたね~。まあ、この国の一大事だもんね~。来ないわけはないか~」
あっけらかんと言うけど、ミポル、それは皆様に失礼じゃない?
今、集まってきた方々は、……えーと、南の地に追いやられた王様にとって、よろしくない方々がほとんどでしたね。苦言をよく呈しているのを見かけたからね。
……というか、私やレイニーが魔法省に所属したことを知って、「子供になにやらすんじゃー」と、言ってくれた方々なのよ。だから私も顔を覚えていたのよね。
「とりあえず~、席についてよ~。みんなで~、話し合って~、難局を乗り越えるんだよ~」
なんかいいことを言っているっぽいけど……こうなったのは、ミポルのせいだと思うな。
……じゃなくて精霊王様方のせい?
……あっ、私のせいかも。これは藪蛇になりそうね。気がつかなったことにしておこう、っと。
◇-◇
さて、私がそんなことを考えている間に、来た皆様は席に座られました。
「精霊王様方、ここからは私共で話し合ってもよろしいでしょうか」
先ほどの男性が口を開きました。精霊王様方は頷いています。
「君たちが~、困ったら~、口を出させてもらうね~」
と、ミポルも静観することにしたようです。
「では、僭越ながら私、ヨナカマーニ侯爵が議長をさせていただく」
フムフム。あの方はヨナカマーニ侯爵様だったのね。
「まずは一番に決めねばならぬことを。それは、王の選出である」
部屋にいる人々は一様に頷いた。そして、視線はチラチラとオリバー様とクラルス宰相へと向かう。
「申し訳ございませんが。オリバー様にはこの国の王家の血……いえ、この国の血筋ではないので、王位にはついていただくことは出来ません」
きっぱりと言い切ったヨナカマーニ侯爵に、オリバー様は然りと頷いた。
「もちろんです。私は王位を望みません」
「ありがとうございます。そうなりますと、公侯爵家から選出するのが筋というものだと思われます」
ヨナカマーニ侯爵の言葉に頷く一同。
「では、私から推薦したい人物がおります。それはエリク・クラルス侯爵です。皆様もご存じのように宰相として、国政を守ってくださった方です」
「異議なし!」
「我も、異議なし!」
ヨナカマーニ侯爵の言葉に部屋の中にいる人たちが、口々に「異議なし」と言いました。そのまま満場一致で決まりそうになった時に、当の宰相様が手をあげて発言したいと意思表示をなさったのです。ヨナカマーニ侯爵は訝しみながらも、宰相様に発言の許可を出しました。
「皆様、今まで黙っておりましたが、この場に私よりも国王になるのにふさわしいものがおります。その者は、暗殺にあった当時の王太子の子供です」
宰相様の言葉に、皆様はざわざわと騒めきました。隣の人と「知っていたか」「いや」などという、やり取りをしている方もいます。
「当時の王太子様は弟である第三王子の変化に気がついていました。そこで、もしもの時のために、子供を安全なところに預け、育てることにしたのです」
宰相様の説明に皆様は半信半疑で部屋の中を見渡しました。
「彼のものは、その事実を知りません。ですが、今日まで、私が教え導いて参りました。昨今では私よりもその者のほうの名を、聞く機会も増えていることと思います」
心当たりがついた皆様はある方へと視線を向けました。
「ウィルキン・ハルスメキア男爵。君が正当な後継者だよ」
クラルス宰相は隣に座る宰相補佐の、ジョシュの父親に向かってそういいました。ハルスメキア宰相補佐は信じられないと目を見開いています。
「わ、わたしが? ま、まさか」
「本当のことじゃよ。ハルスメキア男爵が正当な後継者であると、わしが証言しよう」
あとから来た皆様の中で、後ろのほうに座っていた老人が、おもむろに立ち上がると、杖をコツコツと突いて歩いてきます。そのそばをミルキア様によく似た、黒髪の女性が付き添うように歩いています。
「クレメンス元公爵」
宰相様が呟くように言われました。どうやらミルキア様のおじい様のようですね。……と、いうことは南の地に送られたクレメンス公爵の父親なのでしょう。
元公爵は宰相様方のそばに来ると、頭を下げました。
「ウィルキン・ハルスメキア様、エリク・クラルス様。お二人にはいらぬ苦労を掛けさせてしまいました。本当にわしらの目が眩んでいたばかりに、申し訳ない事を致しました」
このあと、元公爵が語られたのは、この国の公侯爵家の罪についてです。ミポルが語ったように、この国の高位貴族が国王と王太子の暗殺に加担したそうです。クレメンス公爵家は加担はしていなかったけど、ことが起こるのを見過ごしてしまったそうでした。第三王子が王位についてだんだんと国の様子がおかしくなることに気がついた元公爵。でも、いまさらどうしようもないと沈黙を守っていたそうです。




