43 王宮の使用人たちは……
精霊王様方も出されたナッツの乗った薄い焼き菓子に、興味津々な様子です。ハーブの香りが良いお茶が出されて、ついまったりとしてしまいそうになりました。
「ふむ、これが皆が言っていた焼き菓子か」
「おお~、サクッとしてホロリと溶けるではないか」
「木の実をこのように薄く切るとはなかなかの腕の持ち主が作ったのだろう」
「この木の実はヒカタの森で取れたものではないですか」
「そうです。うちの子たちがカミーラに食べてもらおうと集めて届けたと言っていました」
「それをこのように薄く香ばしい焼き菓子にするとは。ここの料理人は素晴らしいようだな」
精霊王様方がサクサクと食べながら、感想を口々に言っています。
同じようにお菓子とお茶で気持ちを休めていた宰相様が、その言葉を聞いてハッとしたような顔をなさいました。
「あの、精霊王様方。王宮で働いていた者の姿が見えないのですけど。まさか、彼らも一緒に南の地へ送られたのですか」
この言葉に正妃様もハッとした顔をなさいました。……あっ、もう、正妃様だとおかしいですね。えーと、確かお名前がフェリシア様とおっしゃったはず。ということは第一王子様のことも、オリバー様とお呼びした方がいいのかしら。
「王宮に勤めていた者すべてに罪があったとは思えません。その者達まで南の地に送られるのは、どうかと思います」
フェリシア様は精霊王様方のことを伺いながらも、きっぱりとおっしゃられました。……フェリシア様の言葉を聞いて、土の精霊王様の口元に笑みが浮かびました。
「あ~、それは~、大丈夫だよ~。みんなには~、三時間だけ~、向こうに~、行ってもらった~、だけだから~」
ナッツ入り焼き菓子を食べて、少し元気が出た様子のミポルが答えたの。フェリシア様は精霊王様ではないことに、少し安心したようにまた問いかけています。
「先ほども三時間と言っていらっしゃいましたが、それはどういったことでございましょうか」
フェリシア様の言葉に、ミポルは顔をしかめた。フェリシア様は何か失礼なことをしてしまったと思い、アワアワとしている。……えーと、一応正妃様をやっていた方なので、感情をあまり表に出されないけど、目が泳いでますよねー。それと、別にミポルは失礼なことをされたとは思ってないと思うな。むしろ――。
「えーとさ、フェリシアの~、気持ちは嬉しんだけど~、もう少しくだけた言い方を~、してくれないかな~。そんなに~、畏まらなくて~、いいからさ~」
「えっ。あの、はい。努力いたします」
フェリシア様は目を瞬いて、困惑気味にお答えになりました。……ほらね。でもさ、ミポル。フェリシア様はこれが普通だと思うから、あまり言うのは、かえって酷な気がするな。
「それで~、質問の答えだけど~、ボクが言った~、条件って~、覚えてる?」
「条件ですか。一つ目が、南の地に住むこと。二つ目が、南の地から出ることが出来ない。三つ目が、自分たちのことは自分ですること。四つ目が」
「ストップ~。その三つ目だよ~」
そう言われて目を瞬かせる皆様。それがどうしたのだろうという顔をしていらっしゃいますね。……私はなんとなくわかったかな~。
「あのね~、今まで~、使用人に~、何でもかんでも~、やってもらっていた人が~、いきなり~、全てを~、自分でやれと言われても~、出来ないよね~。そのまま~、放りだしてもよかったけど~、少しくらいは~、教えておかないと~、後々困るじゃん」
ニッコリと笑顔を見せるミポル。……だけど、どことなくいたずらっぽく見えるんだけど。
「だからね~、王宮に勤めていた人には~、三時間だけ~、先生をするように~、頼んだんだよ~。ただねえ~、そのことに~、彼らが~、気がつくかどうかは~、別問題じゃん~。いちおう~、ヒントは~、出したんだよ~。本来は~、そこまでしなくても~、いいかな~、とは思ったんだけどねえ~」
ニコニコと言葉を続けるミポル。……確かに言ったよ。言っていたけど、頭の中がお花畑の住人のあの人たちが、気がつくとは思えないんだけど。
ミポルの言葉になにかを感づいたのか、学園長が口を開いた。
「精霊殿。王宮の人間が三時間でこちらに戻るということは、南の地の国民はどうなっているのですか?」
「ん~? 彼らはね~、今は~、空いた貴族の邸に~、村単位で~、入ってもらっているよ~。そこの~、使用人たちに~、お世話を~、頼んでいるから~」
その言葉を聞いて、宰相補佐が慌てて立ち上がりました。
「それは大変です。すぐに人をやって、どこの村から来たのかを、把握しないと」
そのまま部屋を出て行きかねない宰相補佐に、ミポルはのんびりと声を掛けた。
「あのね~、大丈夫だから~、慌てなくて~、いいんだよ~」
「ですが」
「主がいない~、邸に~、残る人達は~、不安だらけだったようだけど~、彼らのお世話や~、村人たちの把握をするという~、仕事を与えたから~、落ち着いているんだよ~。ちゃんと~、王宮に~、届けに来るから~、それまでは~、彼らを~、信用してあげてね~」
ミポルの言葉に宰相補佐は不承不承に頷いたのでした。




