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39 ……えーと、これって怒っていいのよね?

 いつの間にか紙の束になったもの(たぶん不正の証拠の正式に交わした売買契約書)を、手に持っていたミポルは、それを宰相補佐へと渡したの。宰相補佐は、これまたいつの間にか用意されていた特殊インクを調べる機械へと、その紙を差し込んでいった。三枚まで通したところで「どれも本物です」と言ってそれを宰相様へと手渡し、残りの書類も機械に通していったの。


 宰相様と正妃様はその数字を見て顔色を変えていた。第一王子が見た後……えーと、確か財務大臣だったかしら? その人へと書類は渡された。書類を見た財務大臣は顔を真っ赤に染めていった。


「お前らはこの四年、不正をし続けたわけだな」


 財務大臣の口から、唸り声のような低い声が漏れてでた。魔法省に勤める人たちは体を竦めて、小さくなった。……数字は見てないけど、怒る気持ちはわかります。


 というか、待って。それって私とレイニーの血と汗の結晶じゃない!(ちょっと言い過ぎかしら?) 


「財務大臣。気持ちはわかるけど、もう、こいつらは南の地に送られることは決定済みだからさ。不正に取得していたお金は、ちゃんと回収できるようにするよ~。それでいいにしてくれないかな~」


 ミポルの言葉に、不正をした奴らを睨みつけていた財務大臣は、前に向きなおった。


「えー、はい。精霊殿のおっしゃる通りです。精霊殿の決定に、意義は唱えませんから」

「うん。この国が立ち行かなくなったら、カミーラが困るもんね。ボクも、君らが困らないように助力するからね~」


 と、話はまとまりかけたのに、ま~だ別のやつ(魔法省に勤める人)が口を開いた。


「ですが、フェンダルとユンテスは魔法省に籍を置いています。二人が技師として働くのは当たり前のことです。ちゃんと給料も出ていたはずです」


 真面目な顔で言った男は、魔法省の中でもうるさ型で知られている奴だ。


 ……ん? こいつは融通が利かないところがあるやつで、不正に携わるようなやつではないと思うんだけど。座っている位置からすると、南の地に送られるのよね。


 だけど、この言葉の何かがミポルの逆鱗に触れたみたいで、ミポルの態度が急変したのよ。冷たい視線どころか、漂い出る雰囲気のせいで、室温が下がったような錯覚を起こしたもの。


「それをお前が言う? そもそもお前らはなんの権限があって、カミーラとレイニーを魔法省に入れたわけ?」


 口調はまだ変わっていないけど、冷たい物言いに震え上がる人、多数。それでも魔法省長官が、口を開いた。


「お二人を、ほ、保護するためです」

「保護ねえ。有益な技術を他の国に取られたくない気持ちはわかるけど、なんで技師として働かせたのさ?」


 さっきより一段ミポルの声が低くなった。


「そ、それは、技術の腕を、に、鈍らせない、た、ために」


 震えて歯の根が合わないながらも、何とか言葉を返す魔法省長官。


「鈍らせない? さっきのことがあるのに、まだ、そんなことが言えるんだな。お前らがオレを怒らせているってわかってないのか?」


 怒気を言葉に乗せて発したミポル。悲鳴でさえ出せずに、罪人たちは身を竦ませている。……う~ん、私もちゃんと理解していなかったけど、本当に、本気で怒っていたんだね、ミポルは。とうとう「ボク」ではなくて「オレ」になっちゃったもの。


「この国の決まりで魔力持ちは学院に通わなければならないのはいい。カミーラたちも学院に通うことを楽しみにしていたから。カミーラが言った五年で村に帰るというから、我慢することにしたんだ。それなのにお前らは二人を絡め捉えるように、魔法省に入れただろう。保護だっていうのなら、名前を登録して籍を置くだけでよかっただろう。それをこき使いやがって。もう、我慢ならん。今すぐ、二人を連れて帰る!」


 ミポルの宣言に、宰相様の後ろの席に座った男性が飛び上がるように立ち上がった。


「ま、待ってください。そ、それは困ります。が、学院に通ったものは卒業後、に、二年間は国の機関に勤める決まりとなっているのです」

「お前は?」


 男性に鋭い眼光を向けて、ミポルが問うた。


「わ、私は王宮の、じ、人事を、担当しております。学院には、国から、多大な支援をしているのです。学院生は卒業後に、王宮に勤めることでその支援に報いることになっています」


 人事担当の男性が、顔色を青ざめながらも言い切った。ミポルは「ムウ」と言って黙ってしまった。


 精霊は約束という言葉に弱い。約束をとても大事にしているので、『国の決まり事』も約束として考えている。だから私とレイニーが学院に行くことを快く思わなかったけど、反対はしなかった。それどころか、心配してついてきてくれたのよ。……それだから今言われた卒業後のことを、認めたくないけど「約束」だからと何とか納得させているようだ。


「少しお待ちください。そのことについては確認したいことがございます」


 そう言って宰相補佐が立ち上がった。


「学院長殿、学院に入る時の条件を教えていただけますか」

「条件ですか……そうですね、まずは理念から話しましょうか。この学院が創立されたのは、魔力の扱いに困る人たちに、魔法を正しく教えることでした。ですから学院に入れる者は魔力持ちが条件になります。そういっても、平民に至るまですべての人間が魔力は持っているので、より多くの魔力持ちを対象とすることにしました」


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