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38 ここにきて不正が発覚するのって……

 宰相様とラキアの父子愛を感動しながら見守っていたのに、無粋な声が割り込んできた。


「あの~、少々お聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「ん~? なにかな~」


 ミポルののんびりとした返事に、声をあげた男は少し肩の力を抜いた。


「ここにいる者がすべて南の地に送られるということは、この国の上層部がすべていなくなるということです。そうなると国を運営していく上でも、多大な損失が起こると思われます」

「うん、だから?」


 勢い込んで話し始めた男は、ミポルの合いの手に言葉を詰まらせた。


「まさかさ~、それを理由に自分は南の地へ送らないでくれとでも、言いたいわけ?」

「ま、まさか。違います。えーとですね、我が国の特産品である、眼鏡とコンタクトレンズは、予約待ちの方々が多数いる状態です。それを担当するものが、ここにすべているのです。全員がいなくなっては、出来上がった製品を送る手筈などに、滞りが生じるのではないかと……ひっ」


 汗を浮かべながら言った男は、言い途中で悲鳴をあげた。ミポルとスラミーから怒気が立ち上っているのがわかり、怯えたのだろう。


「そう! それなんだよね!」


 ミポルはその男を中心に何人かを睨みつけた。その人たちは圧を込めた視線に顔色を青ざめさせて竦み上がった。……この中に魔法省の長官と魔道具担当教師もいることも、一応言っておこうかな。


「いくらカミーラとレイニーが眼鏡とコンタクトレンズにカイナンの鱗を使う方法を見つけたといっても、技術を秘匿したわけじゃないし、他の子にも教えていたから技師はいるわけだろう。なのにさ、なんでまだ学生のカミーラとレイニーが駆り出されているわけ?」

「そ、それは……お二人が作られた製品が、一番良くて……」


 汗をだらだらと流しながら、魔法省長官が答えた。


「それはそうでしょ。カミーラとレイニーは丁寧に作っているんだもの。他よりいいものを作るに決まってんじゃん」


 ……ん~と、推測すると、もしかして数多くの注文が殺到しているから、私とレイニー以外はノルマに苦しめられている……とか? ノルマを達成するためには、少しくらい不備があっても、そのまま出荷をしている……とか?


「ボクは~、知っているって言っているじゃん。お前らがカミーラとレイニーが作った製品を、他よりも高性能と(うた)って高額で売っていることを。さっきはさ~、魔法省の長官と魔道具制作担当教師だけが、不当に技術料を搾取したみたいに言ったけど~、魔法省に勤めている奴らは、カミーラとレイニーの製品と他の製品との差額を、着服したんだよね~。国には全部均一の値段で販売している風を装ってさ~。そんなことをしている奴らが、そのまま残れるわけないよね~」


 ミポルの言葉に、部屋の中の人の視線が魔法省に勤める人たちに突き刺さった。


「もちろん、この分も、返してもらうよ~」

「そ、そんなことをしていたという、証拠でもあるんですか。言いがかりをつけないでください!」


 さっきの男とは違う、魔法省に勤める人らしい男が言い返した。……けど、ばかよね~。精霊にはお見通しだって、何度も言っているじゃない。みんなには見えてないけど、この部屋にはたくさんの精霊が集まっているのよ。それに窓の外にもね。どこで見られていたっておかしくないのにね。


 ……それにどうやらミポル達……ではなくて、精霊たちは私とレイニーが学院に来てから、いろいろなところに出入りしていたようね。私達のためになるようにと、目を光らせてくれていたと思うのよ。だから、証拠なんてお手の物よ。破棄したとしても、見たものをそのまま転写できるんだから。


「証拠ねえ~。お前は不正の書類を破棄したと安心しているようだけどさ、ボクらは見ていた(・・・・)と、言っているじゃん。そんなにいうのならさ、破棄した書類を出してあげようか」


 ミポルがそう言うと紙が一枚宙に浮かび、そこにぶわっと文字が浮かびあがってきた。それは眼鏡の売買契約書だった。日付から取引内容、担当者のサイン、それから公認印。この公認印は特別製で、複製はしにくいように作られている。それと、インク。これもある特別な物質が入っているから、それを確認すれば正式に交わされたものであるとわかるもの。


 ほ~ら、やっぱりね。ちゃんと見ていた精霊がいたんじゃない。


 と、思ったけど、その男はしつこかった。


「精霊様、複写されたものをだされても、困りますよ。それでは真偽は(はか)れないじゃないですか。正式なものを使っていなければ、これは我らを貶めるための、偽造書類ということになりますね」


 なーにを言っているのかしら、この男は。精霊が偽造書類なんか作るわけないでしょう!


 と、言ってやりたいけど、男のいうことには一理あるわね。複写では特殊インクの特徴は出ないはずだもの。そこまで見越しての発言だったのね。……と、悔しく思いながらも、私は感心もしたのよ。


「ボクらが偽造書類なんか作るわけないだろう。確かめてくれればわかるけど、これは本物さ。君たちが破棄した物のほうが、転写で作った偽物だったの。だからさ、いっただろう。君たちが破棄した(・・・・)つもりの書類を(・・・)出して(・・・)あげようか(・・・・・)、って」


 ……うん。心配することはなかったわ。ミポル達が、そんなに甘いわけないものね。本物を複製して入れ替えるなんて、お手の物よね。


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