30 神様公認の罰!
ミポルは憐れみを込めた視線を、まだ騎士団長に向けていた。
「君も、ある意味被害者なんだよね~。でもね~、それでも、やっていいことと悪いことがあるって~、わかるよね。君はカミーラが~、王宮に出入りするようになってから、カミーラに絡んだじゃない。そんなことをしなければ、ボクらももう少~し、気がつくのが遅れたと思うんだ。そういう意味では君に感謝しているけど、ボクらの通達を無視してカミーラとレイニーのことを害そうとしたことはわかっているからさ。罰はうけてもらうからね」
蒼白い顔のまま何も答えない騎士団長から、ミポルは視線を逸らすと部屋の中をゆっくりと見渡した。
「それじゃあ、もういいね。君たちの罪状は、ボクらから『精霊の加護を与えられた者』が学院に行くから、配慮した対応をするように言われたのに、真逆のことをしたことだよ。カミーラやレイニーが望んで王家に入るんだったら文句はなかったんだけど、選択肢を与えないどころか、一番ボクらを怒らせる手を使おうとしただろう。最近はこの世界の人間すべてが、ボクらに対して侮った態度をしているからねえ。神様も驕り高ぶった人間に嫌気がさして、この世界から人間を滅ぼそうかと言っているくらいだよ」
ミポルの言葉に、部屋の中の人間たちは息を飲んだ。窓の外からは、悲鳴が聞こえてきた。……って、もしかしてこれって、全世界の人間にも伝わっているの? えっ? マジなの!
私の困惑をよそに、ミポルは目を細めて部屋の中の人たちを見渡した。
「だけどね、ボクらも君らに加護のことを誤解させていたところもあったから、人間だけが悪いわけじゃないとも思っているんだ。だから、まだ、神様ももう少し人間たちのことを見守ることにしてくれたんだよ」
この言葉に少し安堵したような雰囲気が、部屋の中に流れた。
「けどねえ、やはり神様の怒りは収まらなくてねえ~。仮にも神様が決めた代理人であるボクらを、蔑ろにしたわけじゃない。というわけで、君たちだけでなく、全世界の人間で、ボクらのことを蔑ろにした人間には、罰を受けてもらうことになったんだよ」
ニコッとミポルはかわいらしく笑った。安堵しかけた人たちはまた顔色を悪くしていった。
「大丈夫だよ。命までは取らないからね」
ニコニコというミポルに、みんなは疑いの目を向けている。国王も顔を覆うのをやめて、不安そうな視線をむけた。
「君たちにはこの国から出て行ってもらうことになるけど……う~んと、封地? え~と、なんと言ったっけ? ……まあ、この国を出て暮らしてもらうだけだよ」
ミポルが適当な言葉を思いだせないようで、曖昧に言った。
「そんなー。身一つで追い出されたら、私は生きていけません!」
貴族の……えーと侯爵だったと思うけど……四十代後半くらいの男性が悲鳴をあげた。……まあ、そうだよねえ。この国を追い出されて他の国に行くにしても、身バレしたら袋叩きに遭うかもしれないものね。というか、貴族だった人たちが市井におりて生きていけるのかしら?
ミポルは「んー」と、まだ、言葉を探しているようだった。代わりにスラミーが話すことにしたようで、ミポルに合図を送っていた。
「そこは大丈夫よ。あなた達にはこの国の南に住んでもらうことになるから」
その言葉に、罰を受けることになる人たちは目を輝かせた。……この国の南の地方は、いわゆる穀倉地帯で、えーと、国の動脈? なのよ。つまり、その地にいる限りは食べるものに困らない……はずなのね。……たださ、そんなに甘いことを、精霊王様方がするわけないのよね。裏を考えてみたほうがいい気がするんだけど。……まあ、私には関係ないし、精霊王様方の思惑を、わざわざ教えてなんてあげる義務も義理もないものね。
「罰だから、いくつか条件はあるわよ。一つ目がその地に住むこと。二つ目はその地から他所の地にはいけない事。他には自分たちのことは自分ですることとかあるけど、これは当たり前のことよね。一応貿易は出来るから、そこで出来たものは販売することは出来るのよ。暮らしていくのに困りはしないと思うけど」
スラミーの言葉に目を輝かせる人達。ミポルもスラミーの言葉に間違いがないかと、頷きながら考えている。
「えーと、補足としては、罰を受けるのは一応個人だけど、その家族に及ぶ場合もあるから。それはその家族の行為が目に余るものがあったということだよ。ん~、このあと、誰を南の地に送るか伝えるから、家族はどうするか決めてね~。言われなかった人でも、夫と共に行くのならついていっていいし、子供たちも連れて行っていいよ」
ニコニコと言葉を続けるミポル。
「あ~、そうだ。これも言っておかないと。向こうに行って何もないと困るでしょう。だからね、使い慣れたものが側にあった方がいいと思うんだ。そう云うことで持っていきたいものがあったら、教えてね~。一緒に送ってあげるよ~」
ミポルの言葉に、貴族の誰かが恐る恐るという感じに口を開いた。
「あの、それでは、邸の私の部屋のものを、そっくりそのまま持っていくことは出来ますか」
「うん。もちろんいいよ」
ミポルの気安い返事に、部屋の中に喜色の表情をする人が溢れたのでした。




