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29 悪だくみをしても精霊様にはお見通し……だったみたい

「お前は……お前が……お前たちが、(たばか)ったのかー!」


 国王は立ち上がり、指をラザクレア騎士団長へと突きつけた。


「謀ったとは酷いですな。私は父の言いつけを守っただけですよ。それにこれは国王のためであり、ひいては王国のためになったでしょう」

「何が、私のためだ。父親の言いつけを守っただと。それがなんだ。お前のしたことは、私への裏切りだ!」


 騎士団長の言葉に国王は怒り狂って答えた。目は血走り、悪鬼のような形相へと変わっていた。


「やれやれ、本当に父が言った通りの方ですね、兄上(・・)。やはりこれまで国王としてやってこれたのは、宰相のおかげだったのですな。愚鈍なら何もしないでいてくれれば、この国で安泰に暮らせたというのに。あなたが愚かにも息子(・・)に命じてくれたおかげで、すべて駄目になってしまいましたよ」


 騎士団長は国王へと侮蔑の目を向けながら言った。国王はその騎士団長の態度になおさら激昂したようだ。


「誰が兄上だ! 私はお前の兄などではないぞ!」

「知らないということは幸せなのですな。昔は並べば周りに分かってしまうのではないかと、気を使って離れるようにしていたのに。今は……並んだところで、髪色くらいしか似ていると思われなくなったとは」


 国王の無駄に肉がついた体をじろじろと眺めながら、忌々しそうな顔をする騎士団長。


「それが王に対する態度か!」

「本当に愚かな人だ。そんなだから父にも見限られたのですよ。父が亡くなる時に言われたことをお忘れですか。それをよく、思いだしてください。判断に迷った時には、私に必ず相談するようにと言ったでしょう。ねえ、兄上(・・)

「それが何だと……。ああー! ま、まさかー!」


 やっと思い至った事実に、目を見開いた国王。騎士団長から離れるように一歩後退をした。その姿に片頬をあげて騎士団長は、笑った。


「愚鈍なら愚鈍らしく、傀儡の王でいればいいものを。父は素晴らしい方だった。だけど、お前の資質をちゃんと見抜いていたのだよ。大体お前の母と婚姻したのも、公爵家の後ろ盾が欲しかったからだ。お前の母もお前と同じように、ただ従順なだけの面白みのない女だった。父はお前が生まれてすぐに、お前には資質がないと気づかれて、失望したそうだ。だから父は私の母を選び、私が育つのを楽しみにしていたのだ」


 国王は項垂れて、力なく椅子に座りこんだ。


「わ、私は、聞いていないぞ。……なぜ父上は、弟がいると話してくれなかったのだ」

「いうわけがなかろう。お前に話して、私を殺されては困るのだからな」


 騎士団長の言葉に、国王は机に肘をついて、顔を覆ったのだった。


 ◇-◇


「さ~てと、そっちの話はついたのかな~。そんじゃあ、もういいよね~。そろそろ、罪を自覚してくれたと思うから~、罰について話したいと思うんだ~」


 場違いなくらいに、のんびりとミポルは言った。……まあ、所詮は他人事だものね。


 でも、それが不服であるというように、騎士団長が口を開いた。


「まだ話はついていないと思うのですがね。精霊にとっては我々のことなど、どうでもいいということですか」

「もちろんだとも。簒奪者の息子たちの、どうでもいい(・・・・・・)事情なんか、ボクたちには関係ないもんね~」


 ミポルがあっけらかんと答えたら、騎士団長の眉がピクリと動いた。


「そう言って本当によろしいのですか? 兄のことはどうでもいいことですが、私を放置した場合、困ることになっても知りませんよ」

「だからさ、ボクらを見くびり過ぎでしょ。大体さ、普段滅多に揃わない精霊王たちが、なんで揃ったと思っているのさ。もちろんカミーラのことは大事だけど、それだけでここに揃う必要はないんだからさ。ボクらは終わらせる(・・・・・)ために、集まったんだよ」

「まさか……あの方の計画に気がついていたのか」


 ミポルの言葉に、ここまで奇妙な余裕を見せていた騎士団長に、焦りが現れたのが見て取れた。それを憐れむようにミポルは見つめている。


「残念だけどね。あの子(・・・)には原初に帰ってもらったよ」

「そんな、馬鹿な。あの方からの力は、まだ私の中にあるというのに」

「あ~、それね~、あの子(・・・)が~、な~んか企んでいるのはわかっていたからさ~、わざと残しておいたのさ。まあ、でも~、もうあの子(・・・)も居なくなったことだし~、いらないよね~」


 ミポルは指をパチンと鳴らした。何かが動く気配がしたけど、それ以上は何も起こらなかった。……ではなくて、騎士団長の顔色は蒼白になっているわね。


「わ、私の力がー」


 ……どうやら貸し与えられた力というものが、無くなってしまったのだろう。右手を振って何かをしようとしているけど、全然何かが起こるような気配がしないもの。


 ……というか、それよりも、もっと問題があると思うんだけど、気がついてなさそうね。


 えーとね、ミポルが指を鳴らして何かの力が動く気配がした後、容姿が変わった人が何人かいるのよね。そのことに気がついた人たちは、キョロキョロと部屋の中を見回しているわ。


 ……というか、これをどう収拾付けるのよ、ミポル!


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