28 謀るも何も……
「プッ アハハハ~」
「やだ~。キャハハハ~」
国王の言葉を聞いたミポルとスラミーが、思いっきり笑い出した。お腹を押さえて大笑いをしている。精霊王様方を見ると、口の端をあげておかしそうにしていた。
「やだ~、本当に気がついてないの~」
「気がついていたら、こんな呑気にしてないだろう」
スラミーとミポルは皮肉気に国王のことを見つめた。
「何がおかしいのだ。精霊であっても、笑っていいことではないだろう。私はそこのフェリシアに不貞を働かれて、ずっと私の子ではないものを第一王子としていたのだぞ。フェリシアは国を欺く悪女ではないか」
国王が言い返しているけど……えーとさ、もともと国王は王位につける立場の者ではないじゃない。それに比べて正妃様は、ちゃんと他国とはいえ王女様だったのよ。れっきとした王族よ。国を欺いてきたのは国王であって、正妃様は国王のことを欺いただけでしょ(この論法で言えばだけど)。どちらのほうに罪があるのかしらね?
……だけど、ミポルとスラミーは国王の言葉に尚更笑い転げていた。
「あ~、くるしい~。本当にバカだ馬鹿だと思っていたけど、ま~だそんなこと言っているの? 大体さ、お前は正妃であるフェリシアのことを、初夜の時だけ抱いて、その後見向きもしなかったじゃないか。それにさ、ボクらは知っているって言っただろう。お前は初夜の床でフェリシアが処女だったのを知って残念がっていただろう。きっとさ、お前のことだから、フェリシアが処女じゃなかったら、難癖つけて国へと送り返す気だったくせにさ。な~にが、『この側妃のガリシアを正妃にできないのは、フェリシアのせいだ!』だよ。あれだけお前の父親が説明したのに、結局は理解してないじゃないか~」
ミポルが嘲笑うように言った。それからことさら、意地の悪い笑みを口元に浮かべた。
「お前はさ、フェリシアが嫁いでくる前から、ガリシアと関係を持っていただろう。それでガリシアが先に妊娠すれば、フェリシアとの話が無くなると思っていたんだよねえ。だけどさあ、おかしいと思わなかったのかな~。あれだけ励んでいたのに、ガリシアは全然、まったく、これっぽっちも、妊娠する兆候も見えなかったじゃないか。それなのに、フェリシアが妊娠したあとに、ガリシアも妊娠しただろう。おかしいって思わなかったのかな~」
言われた国王は『言われたことがわかっていない』と書いてある表情をしていた。
「それは、婚姻前に妊娠するのはまずいと思って、出来ないようにしていたのだ」
そのままの台詞を口にした。国王の言葉に「ハッ」と、ミポルは声を出した。……ミポル、嘲笑したい気持ちはわかるけど、さっきからかっこよさが半減して……怖さが増しているよ。……ねえ、ミポルをこんな風に変える国王のことを、憎んでもいいかな?
私を抱きしめているから私の様子が分かったのか、水の精霊女王様が囁いてきた。
「カミーラ、悲しまないでいいのよ。風の王子は変わってしまったわけではないの。むしろ逆なのよ。この五年、ずっと気持ちを押さえていたから、それを開放できることを喜んでいるのね」
言葉を一度切った後、いたずらっぽく続けたの。
「ウフフッ。風の精霊はね、本来は何物にも縛られなくて、自由奔放なのよ。それをカミーラのためにずっと抑え込んでいたの。あの外に出された人たちだって、あの程度で済んでいるのは、奇跡に近いのよ。嵐を起こさないだけマシなのよ」
水の精霊女王様が怖いことをさらりと、笑顔で告げた。……えーと、ミポル。今までいろいろ我慢させてしまってごめんね。……で、いいのかしら?
◇-◇
と、水の精霊女王様がミポルに聞こえないように、そっとガードを展開して話している間に、話は進んでいた。嘲笑した笑い声をあげたミポルが、ある事実を国王へと告げていたのよ。
「そんなわけないよね~。暇を見つけては、場所を考えずに盛りまくっていたじゃないか~。それでも子供が出来る気配がなかったのは、お前が種無しだったからさ」
「はっ?」
国王は間の抜けた顔をした。それから、顔を赤くして言った。
「精霊といえど、言っていいことと悪いことがあるだろう。フェリシアは不貞だったとしても、ガリシアがそんなことをするわけがない。ゲイルは私とガリシアの子だ。髪の色だって同じだ!」
怒りで真っ赤な顔をした国王。……だけどな~、気がついてないのかな~。
「なんで、そうおめでたいのかな~。同じような髪の色をしている奴なら、すぐそばにもう一人いるじゃん。自分の子でないと言われたら、そいつと側妃の浮気を疑うべきだろう」
ミポルが呆れ顔で指摘をしてやった。国王はゆっくりと首を動かして、その人物のことを見つめた。……国王だけでなくて、部屋にいる人は全員、件の人物である、ラザクレア騎士団長へと視線を向けた。
注目をされたラザクレア騎士団長は狼狽えることなく、奇妙な笑みを口元へと浮かべていた。
それに対し、側妃のガリシアは血の気の無い白い顔を、みんなへと晒していたのだった。




