23 この国の王家に起こった本当のこと!
その様子を眺めていたクレメンス公爵は、一度国王へと視線を向けてからまた手をあげて発言の許可を求めてきた。ミポルは精霊王たちに視線を向け、許可を受けると頷いて「どうぞ」と言った。
「精霊王方、カミーラ・ユンテスとレイニー・フェンダルに対する、我々の対応が皆様方を怒らせたのはわかります。そのことはいかようにも謝罪いたします。ですが、国のことは別です。精霊王であろうと、人の世界の国のことに、口出しは無用のはずです」
きっぱりと言い切るクレメンス公爵に、少し見直したという感じに精霊王たちは見つめていた。
「そうだね。本来なら人の世界のことなんて、ボクたちには関わりはない事だから、放っておくさ」
「でしたら」
ミポルは頷きながら答えた。その言葉に我が意を得たりという顔で、クレメンス公爵が言葉を続けかけた。
「でもさ~、先に君たちが、この国の王族を殺したじゃん。光の精霊の加護を持つものを殺して、加護のない者を王位につけているってどうなのさ」
ミポルの言葉に部屋の中にいる人たちが動きを止めた。視線は自然と国王へと集まっていった。国王は青い顔で机から顔をあげてミポルのことを見た。
「それは、どういったことでしょうか? 私に王家の血が流れていないというのですか」
……まるで、その事実を初めて知ったというような顔をして、国王が訊ねている。他の人たちも事実かどうかを、固唾を飲んで見守っていた。
……あまいわ~。ミポル達が何も知らないわけがないのに。国王たちの様子を、呆れをもって見ているもの。……あれ? 待って。それじゃあ、本当は事を起こしたのは今の国王の父親の第三王子だったというの? んん~? 第三王子は当時の正妃様の第二子だったよね?
私の疑問はすぐに解消されたのよ。ミポルは嘲笑の笑みを浮かべて、王たちに言ったの。
「本当に我らを馬鹿にするのはやめてくれないかな。お前たちがどんな謀を秘密裏にしようと、空間の記憶は我らにみることは簡単なことなんだぞ。だが、所詮人がすることだもの。加護がいらないというのであれば、それまでのことと、放っておくつもりでいたんだけどね~。そこの正妃を騙して連れてきただけじゃなく、ボクら四大精霊王が愛するカミーラを手に入れようとするんだもの。いい加減この国に嫌気がさしてきたからさ」
「それは、どういうことでございましょうか」
ミポルの言葉に正妃様が震える声で訊ねた。ミポルは正妃様を憐れむように見てから、この国に起こったことを語りだした。
◇-◇
今の国王の父親で、王様と王太子が暗殺された時の第三王子。当時の正妃様の子供ということにされていたけど、本当は違ったそうなの。生みの親は、元旅芸人の踊り子だったそうよ。祝賀会で踊りを披露して、それが王様の目に留まり、一夜の伽を申し付けられたとか。それで、えらく気に入った王様が側女にした、と。すぐに妊娠が判り、大切にされて王子を出産したけど、産後の肥立ちが悪く亡くなってしまったのですって。
第三王子は本来なら身分的にも、蔑ろにされてもおかしくなかったのに、正妃様が哀れに思って引き取って我が子と同様に育てたそうなの。第三王子も小さい時にその事実を知ったそうだけど、第一王子と正妃様のことを慕って健やかに育ったの。
暗雲がさしたのは、第三王子が隣国に留学した時。そこである男に声を掛けられた。その人物は第三王子の父親は、自分だと言ったそう。最初は信じなかった王子も、男から告げられたことを調べるうちに、それが事実であると確信してしまった。
苦悩する王子に父親だと告げた男は、王家を謀ったものと事実を告げられたくなければ、自分のことを優遇するように言った。そして、この国についてきて、ある伯爵家に取り入って婿として入りこんでしまったの。王子は夜会などで顔を合わす度に、馴れ馴れしくしてくる男が鬱陶しくてたまらなかった。それにいつ真実を告げられてしまうのではないかと、気が気ではなかった。
そして、悲劇の幕が上がった。ある日、第三王子が避暑のために訪れていた離宮に、男がやってきた。そのうちに言い争いになってしまい、男を振り払ったら、場所が悪くて男は頭を岩に打ち付けて亡くなってしまったのだ。
慄くばかりの第三王子の元に、様子がおかしいと心配をしていた第一王子が現れた。第三王子は何があったのかをすべて話してしまった。第一王子は不幸な事故としてこの事を片づけた。
第一王子と正妃は第三王子が王の子供ではないことを知っても、変わらずに接していた。変わったのは第三王子のほうだった。いつ王家から追い出されるか、罪人としてとらえられるのではないかと、怯えた日々を送っていったのだ。
結婚して子供が産まれても心が安らぐことはなかった。怯える日々に疲れた第三王子は考えた。愁いを無くす方法を。そして辿り着いたのは、王家の人間を殺すことだった。
そして第三王子は密かに味方を作っていった。清廉潔白な王と王太子のことを、疎んでいた高位貴族たちが、第三王子が描く新しい国の形に賛同して協力を申し出たのだった。




