21 ここまでは前座でした こちらの要求が本命です
ミポルの宣言と共に、魔道具制作担当教師と魔法省の長官の体が持ち上がって、前に連れてこられた。
「ねえ~、君たちは、自分たちが何をしたのかわかっているんだよね~。それじゃあさ~、自分の口で言えたのなら~、彼らのように外に出すのは~、やめてあげるよ。さあ~、どうする?」
体の向きをみんなのほうへと変えられた二人。でも、なかなか口を開こうとしなかった。
「ふ~ん。自分の口から言えないんだ~。悪いことをしたらごめんなさいをしなさいって~、教わらなかったんだね~。じゃあ、もういいよ~。ボクが話すから~」
「言います。私は」
ミポルの宣言に慌てて口を開いた魔道具制作担当教師だったけど、言葉が途切れた。……ミポルがくれたチャンスを逃したんだもの。言葉を聞こえなくされるのは当たり前よね。
「はい、時間切れだよ。君たちはそこで黙って聞いてな。この二人は結託して、カミーラとレイニーが受け取るはずの報酬を自分たちの懐に収めているんだ。あの眼鏡とコンタクトレンズに、カイナンの鱗を加工する技術は二人が開発したものだろう。特許とか言ったっけ。それの技術料の十分の一しかカミーラとレイニーに渡さないで、残りは二人で山分けしていたんだ。二人が何も知らないと思ってね。確かに二人は知らないことだったから、十分の一でも自分たちの収入になると喜んでいたけどさ。あとさ、他国に売れるからって、まだ学生である二人をこき使っているだろう。カミーラたちの労働時間がどれくらいか知ってるか? お前らの周りで最近ちょいちょい不都合なことが起きているだろう。あれはな、ボクたち以外の精霊が怒って、お前らに嫌がらせしてんだよ。お前らは少し不運なことだと思っていたのかもしれないけど、そんなわけないんだよ。お前らが不当に手に入れたお金は、ちゃんと返してもらうからな」
「そんなお金はありません」
ミポルの宣言に、魔法省の長官が悲鳴のような声をあげた。隣にいる教師もコクコクと頷いている。
「もちろん、知っているさ。夜な夜な豪遊していたもんな~。でもな、お前らが自分でしたことだろ。家屋敷から領地、着ている服に至るまですべて売り払って、返してもらうからな。それでも足りなかったら、奴隷商に売るから。ああ、そうだ。お前たちの妻子も同等に扱わせてもらおうか。娘たちはそれなりの器量だから、娼館で稼いでもらうのもいいかもしれないよな。うん。そうしよう」
「やめてくれー。娘は関係ないんだー」
「お前らの子供に生まれた不運を嘆いてもらうしかないな」
ミポルの脅しに、長官は悲痛な叫び声をあげた。それにミポルは興味がなさそうな顔をして言い放ち、二人をバルコニーの外へと移動をさせた。
他の人たちは身を竦ませて、視線を手元へと落としている。次は誰が言われるのかと、戦々恐々としているように見受けられた。
その様子をつまらなさそうに見た後、ミポルは視線を左右へと向けた。それから一つ頷くとまた口を開いた。
「とりあえず~、個人の罪状はこんなもんかな~」
その言葉にホッとした雰囲気が流れた。……かと思ったら、第一王子様と正妃様たち、心正しい者たちの間には、緊張感が高まっていた。さすが分かっていらっしゃる。ミポルは『個人の』と言ったのよ。ということはこの後、国の上層部の悪事を暴くのね。……あら? それって私とレニーに関係あるのかしら?
◇-◇
そんなことを私が考えている間に、ミポルの雰囲気が変わった。今まではどこか楽しんでいる感じだったのに、キリッと真面目な顔をしている。
「それでは、次に行くぞ。私達精霊は、この国の国王を、速やかに変更することを、希望する」
ミポルの宣言に集められた人々は動きを止めた。何を言われたのか、判っていないような顔をしていた。
その時、手をあげた男性がいた。ミポルが軽く手を向けて、どうぞと合図を送った。
「精霊殿、先ほどまでのことは『精霊の加護を与えられた者』が関わっていたことだから、致し方ないことであった。だが、国に関することは、精霊殿には関わりがない事であろう」
立ち上がって発言をしたのは、クレメンス公爵だった。……結局公爵も、そっち側だったんじゃん。まあ、おおバカが婚約破棄をしようとした時に、ミルキア様のことを責めた人だ。当たり前だったか。
「関係ないわけないだろう。我らが庇護のもとにある人物を、手に入れようと画策していたのだぞ」
「ですが、逆の考え方もできましょう。精霊様が加護を与えるということは、庇護しなければならないわけで、それならば王家に入り我らが守ることにいたせば」
「何をいうかー! カミーラには運命の相手がいると伝えてあるはずだぞ。それを無視して、無理やり手籠めにして王家に取り込もうと考えた輩が、さもカミーラのことを考えているようなふりをするなー!」
クレメンス公爵の言葉を遮って、言葉を発したのは、ミポルによく似た淡い金髪の男性だった。不機嫌なことを隠すことなしに、公爵のことを睨みつけている。ミポルは「アチャー」と、小さな声で言っていた。
急に現れた人物の姿に、集まっていた人々は驚きを隠せなかった。……が、第一王子達は誰なのかを推測出来たようで、頭を垂れて恭順の意を示した。
……急に正妃達が頭を下げたので、王を含む他の人々は唖然とした顔を正妃達に向けた。けど、すぐに嘲笑するような笑いを口元に浮かべだした。
クレメンス公爵はさすがに誰なのかわかったようで、額に汗を浮かべて「詮無いことを申し上げました」と、頭を下げたのでした。




