15 迎えに来た人達は……やはり失礼な人達だった
ミルキア様とジョシュの話をレニーも難しい顔で聞いていた。私も話の内容が分からないわけではないけど、自分には関係ない話だと思っているので、大変だな~、くらいにしか思っていなかった。
「ジョシュ~、ミルキア~、心配しなくても大丈夫だよ~。そのことも含めて~、このあと~、きっちりと~、話し合いをするからね~」
姿が見えなかったミポルが、フワフワと飛んでそばに来た。ニシシッと笑い声が漏れてくるから、このあとの段取りは出来たようだ。
「それよりも~、ねえ~、ミルキア~。さっきから~、いい匂いがするんだけど~」
クンと鼻を鳴らすように匂いを嗅ぐ仕草をするミポルと、何か期待を込めて視線をミルキア様に向けるスラミーの様子に、ミルキア様は思いだしたというようにミニキッチンのところに置いたバスケットのところに行った。
「そうでしたわ。最近二人は忙しかったでしょう。ですから、甘いお菓子と果物を持ってきましたの。すぐに皮を剥きますわね」
ミルキア様はバスケットの中から魔法のように、いろいろなお菓子や果物を取り出した。そばに寄ったミポルとスラミーは嬉しそうに見つめている。
「果物を洗うのは~、まかせて~」
ミポルが風で(食べたい)果物を浮かべて、スラミーが水の膜で覆い汚れを落とす。
「それじゃあ~、ボクが切り分けるね~」
そういうとミポルは風を操り、皮を剥いて食べやすい大きさに切り分けてしまった。ミルキア様が用意したお皿に、リンゴとイチゴ、オレンジが綺麗に並べられた。
「さすが、お見事でございますわ。私の出番は無くなってしまいましたわね」
ミルキア様が、苦笑を浮かべながらお皿をテーブルへと運んだ。ミポルとスラミーは嬉しそうにイチゴを手に持つと食べ始めた。
妖精である二人は、加熱されたものをあまり好まない。本当は妖精には食事は必要ないらしいけど、私達と一緒に暮らすうちにミポル達は、ナッツがいっぱい乗ったクッキーなどを食べるようになった。これは他の妖精たちにも伝わり、焼き菓子が妖精の好物となりつつあるらしい。
焼き菓子も別のお皿に並べて、ミルキア様が席に着いた。喜びいっぱいに次々とお菓子や果物を食べる妖精たちを、お茶を飲みながら私達は微笑ましく見つめていたのでした。
◇-◇
一時間が……経ったところで研究棟の入口に迎えの者達が来た。私を守るようにレニーとジョシュが先に出てくれた。私達の姿に、迎えに来た者達の間に動揺が走ったように見えた。
迎えに来たのは騎士達だった。その中でも、一番位……階級かしら?(軍のことは知らないのよ、私は)この中で一番偉い人かな……らしい人が、一歩進み出ると口を開いた。
「妖精ミポル殿、カミーラ・ユンテス殿。お迎えに上がりました」
「ご苦労様~。ちゃんとさっき言ったように~、揃っているんだよね~」
ミポルが笑顔で威嚇をするように言った。
「はい。皆様、会議室でお待ちです」
「ふ~ん。会議室に~、したんだ~。まあ~、謁見の間を~、使うことにしなかったことは~、褒めてもいいかな~」
偉そうなミポルの言い方に、騎士の一人がピクリと反応をした。でも、拳を握って堪えているようだ。
「では、ご案内いたします」
隊長が促すように手を動かした。レニーとジョシュが先に歩きだし、私はその後を追うようにミルキア様と一緒に歩きだそうとした。
「ちょっと待て。お前たちは関係ないであろう」
レニーとジョシュに向かって先ほど拳を握った騎士が、邪魔するように立ちふさがった。他にも三人、この騎士に同調するように近づいてきた。
「妖精殿とユンテス殿の邪魔だ。さっさとどけ」
そう言うとその騎士は、ジョシュの肩を強く押した。ジョシュはよろけて、後ろにいたミルキア様にぶつかりそうになった。レニーにも同じことをしようと、手を伸ばした騎士が動きを止めた。
「ガッ……ゴホッ」
その騎士の顔の周りに、水が集まっていた。呼吸を奪われた騎士が、泡を吐きだしながら、水を振り払おうともがいている。
「その汚い手で、私達のレイニーに触らないでちょうだい」
スラミーが冷ややか視線を騎士に向けながら言った。……でもね、スラミー。騎士は呼吸が出来なくて、スラミーの言葉が聞こえてないと思うな。
「スラミー、やり過ぎだよ。人は呼吸ができないと、簡単に死んでしまうんだよ」
レニーに言われて「あら、そうだったわね~」と、スラミーは騎士に纏わりつく水を、顔から離れさせた。そのまま水は下へと落ち、騎士の服へと吸われていった。
「うわー!」
悲鳴が聞こえてきて声の主を探すと、ジョシュの肩を押した騎士が二階の高さ位まで、持ち上げられていた。
「君たちは~、ま~だ、分かってないようだね~。これ以上、ボクを不快にさせないでくれないかな」
ミポルは表情を消した顔で、迎えの騎士たちを見つめた。そして顔を青ざめさせるだけでなく、明らかに挙動がおかしい者たちを、次々に宙に浮かべだした。迎えに来た二十名ほどの半分が宙に浮かんだ。
「お待ちください。この者たちをどうするつもりですか」
隊長がミポルに問いかけた。ミポルは冷ややかな視線を隊長に向けた。
「ねえ~、こいつらって、いるやつらなの?」
「……はっ?」
問いかけの返事ではなく逆に問いかけられて、隊長は間の抜けた声を出した。
「う~ん、まあ、いいっか。ボクが許していることに、気づかないお馬鹿さんたちなんて、いらないよね~。スラミー、噴水のところに、特大の水柱をよろしく~」
「は~い、わかったわ~」
ミポルは浮かべた人たちを、庭園の中心の噴水へと移動をさせたようだ。この後すぐに、天から大量の水が、噴水の辺りへと降り注いだ。この研究棟からも、まるで柱のような水の塊が見えたのでした。




