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14 甘い雰囲気になると……邪魔が入るのはお約束よね

今回は前半が甘い……かしら?

 レイニーはソファーから降りて私の前に跪いた。


「カミーラ。学院に来て五年。君以外の女の子を何人も見たけど、君以上にそばに居たいと思う人はいなかった。僕には君しかいないんだ。愛している、カミーラ。これから先もずっと、僕の隣にいて欲しいんだ。結婚してくれないか?」


 私はレイニーが差し出した手を握ると、立ち上がりながら彼のことを引っ張った。レイニーはつられたように立ち上がり、私のことを戸惑った瞳で見つめてきた。


「私も、レイニーのことを愛しています。だから、レイニーのお嫁さんにしてください」


 レイニーがみんな(・・・)との約束通りに、私以外の女の子達を見てから、ちゃんと私を選んでくれた。それが判ったから、私は『はい』だけではない言葉で、答えようと思ったの。


 レイニーはしばらく動かなかった。……ううん、動けなかったのね。じっと私のことを見つめた後、ゆっくりと両腕を広げて包み込むように抱きしめてきた。抱きしめられて、その体が震えているのが判った。


「ありがとう、カミーラ」


 絞り出すような声が耳元で聞こえた。


 ああ、そうか。レイニーはずっと不安だったんだ。お互いしかいない世界から外に出て、私が他の人に目を向けることが。そして自分以外の人を選ぶかもしれないということに、不安を感じていたのね。


 馬鹿ね。私はレイニーと出会ってから、レイニーしか目に入らなかったというのに。レイニー以外の人に目がいくわけはないのに。


 学院に行くために村を出る前日、『小さな世界しか知らない』と言われたことが、レイニーの心にどれだけの影を落としたのかしら。


 あとでみんな(・・・)をとっちめようと私は心に決めて、レイニーの背中に手を回してレイニーのことを抱きしめ返したの。


 パチパチパチパチ


 突然拍手の音が聞こえてきて、ハッとなった私とレニーは抱擁を解いた。それだけでなくレニーは私を庇うように、背に隠すようにしてから、拍手をしている人物のほうを向いた。


 緊張感を溢れさせて振り向いたレニーは、すぐに肩の力を抜いた。私もレニーの肩越しに見えた人物に、力が抜けて座り込みそうになった。


「ジョシュ、来ていたのなら……いや、その前にどうやってこの部屋に入ったんだ」

「ひどいな~、呼ばれたから来たのに。もちろんスラミーが入れてくれたんだよ」


 ジョシュは手に持った包みを見せながらそう言った。その横には、ミルキア様も微笑んでいる。……いつから見られていたのだろうと、恥ずかしさに頬が赤くなったのがわかった。


「スラミー、なんで声を掛けてくれなかったんだい」

「あら~、大事なお話の~、真っ最中だったでしょう~。邪魔は出来ないわ~」


 大事な話という言葉に、また私はハッとした。慌ててミルキア様とジョシュの顔を見たけど、二人の顔には動揺などは現れていない。どうやらあの部分は聞かれていなかったようね。


「それにしてもだよ。……ミポルとスラミーの話は終わったの」

「ええっ。あとは~、ミポルが~、みんな(・・・)の前で~、言うのですって~。それよりも~、時間が無くなるから~、早く食べちゃってね~」


 スラミーに促されて、レニーはジョシュから包みを受け取ると、ソファーに座り直した。包みを開けて、すぐにサンドイッチをぱくつき始めた。


 私はミニキッチンへといって、紅茶を入れ直した。ミルキア様も運ぶのを手伝ってくれて、四人でテーブルを囲んで座ったの。それから、ミルキア様とジョシュにも何があったのか聞かれたので、レニーに説明したのと同じことを話して聞かせたわ。


 簡単な説明だったのに、訊き終わったミルキア様とジョシュは、二人して難しい顔をしていた。


「本当に、バカだ、バカだと思っていましたけど、まさかミポル様がいらっしゃるのに、カミーラさんに手をだそうとしただなんて」

「いや、それよりも問題なのはラザクレア騎士団長だよ。ミポル様に対しての態度が悪すぎる。普通に考えればミポル様が、ただの妖精ではないとわかりそうなのに。……いや、待てよ。有り得るかもしれない」


 なにやらジョシュも、思いあたることがあるみたいだ。レニーに視線を送った後、ミルキア様のことを伺うように見た。


「ええ、私もまさかと思いましたけど、騎士団長のことを調べましたところ、怪しいことが判りましたの。もしかしたら国家の一大事かもしれませんわ」


 ミルキア様も何やら調べていたようで、騎士団長に対する何かを見つけてしまったみたいだ。顔色を悪くしているもの。


「でも、困りましたわ。この事を上の方々に申し上げたとしても、聞いてくださる方がいらっしゃるかどうかですもの。宰相様でしたらお調べくださいますでしょうけど、それを陛下が正しく判断してくださるとは限りませんものね」

「宰相補佐をしている父が言っていましたが、国事のほとんどを宰相様に押し付けて、陛下は娯楽に興じていらっしゃるそうです。いくらご先祖様が精霊様から加護を受けたといっても、これでは精霊様に申し訳が立たないと、宰相府に勤めるものは案じているそうです。それに宰相様は激務過ぎて、いつお倒れになられてもおかしくないとも言っていました。父達部下には、ちゃんと休めと休日を割り振っていらっしゃるけど、ご自身は全然休もうとなさらないんだそうです」


 ジョシュも顔色を悪くしながら、国の実情について話したのでした。


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