サイタマネイティブとサイタマトライ
いつものように17時となり、タイゾーは表に出て店の暖簾のれんをかけた。
その時、今まで聞いたこともないような低い爆発音が響いた。
タイゾーは地面に伏せた。
ドゥオッッッカアーーーーン!!!!
爆弾⁈
鉄の破片が飛び散り、3軒先の老舗マチ中華の店が跡形もなく吹っ飛んだ。
アーミー服を着た連中が小銃を片手に行き交う。
なにやら大きな声で、言い合いをするのが聞こえる。
「タイゾーさん、戻って! 」
カズトの大声がどこからともなく響く。
タイゾーは「はっ」として、振り返った。
慌てて地面に手を着き、力まかせに起き上がる。
――全身に力が漲みなぎる。
膝が少し痛いが、ケガはしていなさそうだ。
暖簾を再び手に取り、店内に戻った。
近くにいた悠斗が駆け寄ってきた。
「タイゾー大丈夫か?ケガはないか?」
「大丈夫だ。それよりいまのは何だ」
タイゾーは暖簾を杖のように立てて唸った。
4輪がフルスロットルになり、
カズトも、タイゾーのもとに近寄ってきた。
「最新の情報をキャッチしました!
どうやら、サイタマトライビトの一部が暴徒化し爆弾を投下したようです」
「爆弾を投下?
日本でそんな内乱みたいなことが起きるの? 」
あおいも近くに来た。
心配そうに、タイゾーの様子を見ている。
「信じられませんが、現実です。テレビを投影します」
そういうと、カズトの額あたりからレンズがせり出し、光が放たれる。
客席奥の白壁を狙って、画像が投影された。
三軒先の、ご近所映像がテレビ画面に映っている。
瓦礫のように崩れた建物。
立ち昇る白煙。
血を流し、引きずられながら行き交う人々。
「……」
みな言葉を失った。
これはいつも見ている、店前の光景だ。
「この店に居て大丈夫なの? 」
あおいが顔を蒼白にして言葉を発した。
「この店は2年前の改装で堅牢に作り変えられているので大丈夫です。
外に出るよりこの中にいた方がよっぽど安全です」
カズトが答えた。
「何でこんなことが……」
皆が沈黙していると、テレビ画面から緊急速報の警告音が鳴った。
「ただいま、サイタマ県知事が自衛隊に出動を要請したとの速報が入りました。」
ブルブルブルブルブルブルブル……
間も置かず、ヘリコプターが旋回する音が響く。
テレビに自衛隊のヘリが着陸した映像が映し出された。
「自衛隊がサイタマに投入された模様です」
定点カメラから映し出される映像を見て、キャスターが叫んだ。
突然、キャスターの目に動揺が走った。
ディレクターが白画用紙で、何か指示を出しているようだ。
「失礼しました。自衛隊が投入されたかもしれないという発言は、映像を見たわたしの主観でした。
裏取りをした情報ではないので一度訂正させていただきます」
――キャスターでさえ、焦っているようだ。
日本で内乱のような戦争行為が起こるなんて。
――誰もが信じられなかった。
すると、キャスターの目にまたしても動揺が走った。
緊迫した生放送で、ベテランキャスターも感情の起伏が全国にダダ漏れしてしまっているのを隠すことすらできない。
「ま、また、臨時速報です。首相官邸から山室さんお願いします」
「はい、山室です。首相は声明を発表しました。サイタマ県知事がこのたび、首相の許可を得ず自衛隊を発動させたことに対して抗議声明を発表したということです。また、自衛隊トップの統合幕僚長にも同じく抗議したということです」
行政が混乱している。
自分たちのごく近所から、日本を揺るがす重大事件が起こっている。
「今日はみなさん、店舗に泊っても大丈夫です。安全が確認できるまでここにいて下さい」
カズト店長から、従業員に気づかいのメッセージを発した。
もう、営業はできない。
お客様のいない店舗で、
――従業員は皆、まんじりともしない時間を過ごすしかなかった。




